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61話 初めての海釣り

 昨日の夜は男子部屋と女子部屋がきちんと分かれていたので、ひまりが部屋へ入ってくるということはなかった。


 いつもと同じように、早朝5時に目が覚めたので、コテージを出て海を眺める。

水平線から太陽が昇ってきていて、とても美しい風景だ。


 この島にはコテージと桟橋しかなく、本当の無人島だ。

雄太と武彦は、無人島探索がしたいと柴田さんに申し出たが却下される。

本物の無人島でため危険であると諭されて、無人島探索を諦めた。


 クルーザーで沖に出て、今日は釣りをすることになった。

釣竿をクル―ザーに設置して、少しだけスピードを上げて、魚を釣っていく方法だ。


 カツオやアジが面白いように釣れる。

女性陣は魚から釣り針を外せなくて、大騒ぎになっている。

光輝は女性陣を手伝って、釣り針を魚から外していく。


雄太と武彦は面白いように魚を釣り上げていく。

その顔は太陽に照らされて、とても眩しい。


 光輝にとっても初めての海釣りで、2人同様に大興奮だ。


 大量に釣れたが、アジとカツオが大半だった。



「今日はカツオのタタキだな」



 そう言って伊集院秀樹がニコニコと笑っている。

確かにカツオのタタキは日本酒や焼酎に合う。


 釣りを止めて、クルーザーを走らせていると、イルカの群れと遭遇した。


 イルカ達はクルーザーと競争を始める。

初めて見る野生のイルカに全員が興奮する。



「うわー……すごい……恰好いいし……可愛い……」



 イルカは数頭の群れを作って、クルーザーと並走する。

何とも神秘的な光景だ。

こんな景色は、今まで見たことがなかった。

一生の思い出に残るだろう。



 クルーザーは外海をぐるりと回って、無人島の桟橋に到着する。


 夕方になるまで自由行動だ。

渚と雄太は沖合まで泳いでいった。

武彦は若菜に昨日のことを謝り、2人で手つないで、浅瀬で遊んでいる。

ひまりは光輝に掴まって、少し足がつかない海で体を浮かせている。



「昨日も思ったけど……足がつかないのって、とても不安になるのね」


「はじめは俺も不安だった。でも体が浮かぶことを覚えてからは怖くなくなった。海では体は自然と浮くんだよ」



 ひまりの腕をもったまま、光輝は自分の体を海の上にプカリと浮かばせて見せる。


「すごい……光輝……気持ち良さそう……私も試していいかな?」


「俺が支えておくから、ひまりも試すといいよ……大丈夫……沈むことはないから……お腹を出す要領で体を浮かせるんだ」



 光輝の指示するように、ひまりは海へ浮いていく。



「とても気持ちいいけど……とても不安……光輝、絶対に握っている手を離さないでね」


「絶対に手を離さないから安心して……体を海に委ねるんだ。無駄な緊張を解いていくのがコツだよ」



 最初は緊張していたひまりだが、段々と緊張感が抜けていき、とても気持ちよい顔で浮かんでいる。

その横で手をつなぎながら、光輝も海に体を委ねて、体を浮かせる。


 2人で海に、ゆったりと漂う。



「なんだか変な気分……海と一体化しているような……気持ちいいけど……怖いような」


「はじめはそう感じるんだよ……そのうちに段々と気持ちよくなるから」



 夕陽が沈み始めたので、海辺にあがる。

沖で泳いでいた雄太と渚もきれいなクロールで戻ってくる。

若菜と武彦も仲直りしたようだ。


 砂浜に置いてあったバスタオルで身体を拭いて、コテージの中へ入っていく。

そして、部屋に戻り、自分達の私服に着替える。



「先にいただいてるよ」



 伊集院秀樹は、今日釣ってきたカツオをおかずにして、日本酒を飲んでいた。



「今日は料理長をはじめ、料理人達が腕をふるってくれる。おおいに料理を楽しんでくれ」



 光輝達の座ったテーブルには、刺身の船盛や、焼き魚、煮魚などが並んでいく。

テーブルの隅には冷えた麦茶のペットボトルが置かれている。


 皆で麦茶のペットボトルを飲み、箸で皿に移して、料理を少しずつ食べていく。どれも絶品に美味い。

料理はあっという間に無くなっていく。

すると料理長が合図をし、さらに新しい料理がテーブルに置かれていく。



「美味しいね……家だと、これだけの料理はできないよ」



 ひまりが光輝の耳元でヒソヒソと声を出す。

光輝もひまりを見て、黙って頷く。


 さすが伊集院秀樹の邸を取り仕切っている料理長と料理人達だ。

料理の腕は抜群だ。



「このヒラメの姿焼き……スゲー美味い」


「カツオも臭みがなくて、すごく美味しいわ」



 雄太と渚も箸を置く暇もなく、次々と料理を食べている。

小食な渚には珍しいことだ。


 コテージの食堂は間接照明が使われていて、とても幻想的な風景をかもしだす。

若菜はその風景を見て、うっとりと料理を食べている。

若菜もコテージでも料理が気に入ったようだ。


 伊集院秀樹が、光輝達の元へ歩いてくる。

そして少し、申し訳なさそうな顔をする。



「撮影の都合が早まった。明日の朝には帰ることになってしまった。皆だけコテージに残そうか、考えたのだが、保護者がいないのもマズイ。皆にはすまないが、明日、私と一緒に港へ戻ってもらうことになる」



 2日もリゾートで遊べたのだ。

それだけでも十分に楽しかったといえる。



「俺達はこれで十分です。本当にありがとうございます」



 光輝が挨拶すると、ひまり、渚、若菜、雄太、武彦の5名も伊集院秀樹に向かって礼をして、皆が笑顔を向ける。

全員が満足している証拠だろう。



「来年は、もっと長期間で来よう。その時は、もっと娯楽を用意しておく。皆も呼ぶから安心してくれたまえ」



 その言葉を聞いて、全員がハイタッチをして喜んだ。

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