34話 体育祭①
体育祭当日となった。
グラウンドには教師用テントと救護用テントが設置された。
常にそうだが、体育祭などの行事に参加をしない、休む者も出てくる。
2年A組からは男子が3名、女子が2名欠席をした。
それでも体育祭は開会式が行われていく。
浩平が険しい顔をして光輝の元へ歩いてくる。
「男子200mで欠席者が出た。代走を光輝に頼みたい」
「俺以上に足の速い男子もいるだろう」
「光輝が本気で走っていないことぐらい知っている。早く用意してくれ」
浩平に見抜かれているとは思ってもみなかった。
この時点で言い争っている時間はない。
「わかった。代走に俺が出る」
「すまない」
光輝は急いで男子200mの集合場所へ向かう。
一般の競技の中では男子200mは、花形の競技ともいえる。
皆、気合が入っている。
光輝の走る順番は8番目だった。
浩平に走るのを手抜きしているのを知られてしまっている。
これは真剣に走るしかない。
すぐに光輝の順番になる。
スタート地点について、一斉にスタートダッシュする。
身体が軽い。
スタートの時点で光輝だけが頭1つ分飛び出す。
そして、そのまま1位でゴールする。
そして1位の旗の元に並んで、競技の終わりを待つ。
クラスの座っている指定の場所へ戻ると雄太と武彦が驚いた顔で光輝を見る。
「光輝……お前、本当は走るのが速かったのか?」
「早朝にランニングしているから、少しは足に自信はあったんだが、今日は調子が良すぎたよ」
「それにしても速かったぜ」
雄太と武彦は未だに驚いている。
ひまりが走ってきて、嬉しそうに光輝に抱き着いてくる。
「光輝って速いじゃん……やっぱり格好いい」
そんなに褒められると照れる。
今まで目立ちたくなかったので、本気で走ったことがなかった。
今日は少しだけ走っただけなのに大騒ぎになってしまった。
次の女子200m走が終わると、ひまりとの二人三脚だ。
ひまりと2人で集合場所へ向かう。
列に並ぶと光輝達は5番目だった。
「練習の時のことを思い出して、ひまりのペースで走ればいいからな」
「うん、私も一生懸命に頑張るよ」
ひまりとの足を結って、順番を待つ。
光輝達の番がまわってきた。
スタート地点に立って、一斉にスタートする。
ひまりは好スタートをきる。
そのまま練習どおりに、どんどんとスピードをあげる。
次々に他の組を抜いていく。
少しオーバースピードかもしれない。
光輝はひまりの肩に少しだけ力を入れる。
「もう1位だから、これ以上のスピードはいらないよ」
「うん……わかった。いつものペースに戻すね」
ひまりもオーバーペースであることを知っていたようだ。
スピードを少し落として、1位でラインを通過する。
1位の旗の元へ2人で並ぶ。
「やったね。私達2人で1位だよ。やっぱり光輝とは相性ピッタリ」
そう言ってひまりは光輝に抱き着く。
「ひまり……今は体育祭で、ここはグラウンドの中央だ。皆が見てる……だから恥ずかしい」
「私は恥ずかしくないもん。もっと抱き着いちゃうから」
周りの男子からも女子からも、はやしたてる声が聞こえてくる。
「キスしちゃえー」と武彦が叫んでいる声が聞こえる。
こんな場所でできるはずがないだろう。
それにひまりとはまだ付き合っていない。
クラスに戻ったら武彦にヘッドロックをしよう。
クラスの元へ戻った光輝は武彦にヘッドロックをかけ、その口を黙らせた。
「これで学校中にひまりとの関係を知られたな。もう言い訳は通じねーぞ」
雄太がそう言って迫ってくる。
確かにまた既成事実が積みあがってしまった。
ひまりは嬉しそうに頬をピンク色に染めている。
非常に困った状態だ。
学年No.1美少女ギャルと影の薄い自分とでは釣り合うはずがない。
「ひまり、次は玉入れよ。女子全員参加なんだから、早く行きましょう」
渚がひまりを引っ張るように連れて行ってくれた。
女子の玉入れが始まる。
女子が玉を投げる時に、胸を張って少しジャンプする。
その時に胸がたわわに弾む。
「オオ――!」
クラスの男子達は女子のジャンプする姿にくぎ付けだ。
ひまりは豊満な胸をしている。
ジャンプする度にプルンプルンと揺れる……揺れる。
男子生徒は全員ニヤけた笑みを浮かべている。
「女子の玉入れ最高――!」
武彦は大きな声で叫んでいる。
それを聞いた、玉入れをしている女子が、武彦を睨んでいる。
武彦……心の声は漏らしてはいけない。
同じ失敗を繰り返すな。
クラスに戻ってきた女子から武彦は冷たい視線をもらうことになった。
武彦は次の綱引きに出場するため、まるで女子から逃げるうように、集合場所まで走っていった。
それを見た女子達が全員で笑っている。
武彦の参加した綱引きは、武彦の頑張りも虚しく、相手チームに引きずられて、武彦はコケていた。
それを見たクラス全員が笑っている。
ひまりと渚も口に手を当てて大笑いしていた。




