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3 『さりげなく仕掛けられる特大の地雷』 (挿絵小人)

目の前には20cmの熊のぬいぐるみみたいなコボルトちゃっきーがいる。

切り株に座ってなにやら呪文の準備。


「モヤシっこのお前さまにすげえ力を授けよう!

 どうせ剣とかも握った事がないのじゃろう?」

「当然!」


「お前さまに判りやすくお前さまの記憶にあったゲームを参考に組んでみたべ。

 本人にとって判りやすい方が何かと融通が効くどすからな」

「良いね! どんな能力?」


小人がなにか呪文を唱える。

すると水取を中心に光る魔法陣が浮かび上がって、くるくると回転していく。

エッジの効いたロックな曲が魔法陣から聞こえる。

曲が変調して加速、魔法陣も加速。一気に体に吸い込まれた。



視界が真っ暗になった。



頭の中で薄い真っ白な本が現れる。

その手前に被さるように文字が浮かび上がった。



――水取逸角の潜在力を分離しました。ページ数のカウントを開始。(0/1)

――ページ数のカウントを完了。(0/3)

お。止まった。3か。

痛っ。なんか虫に刺された。

頭の中に電撃が走る。文字にノイズで一瞬乱れる。



――ページ数のカウントを完了。(0/300)

増えた!? バグか。

完了後に白い本が一気に分厚くなった。辻褄を合わせに来た!



――基本制御システムのインストールを開始します。(0/300)

声が聴こえる。インストールですか。

羽ペンが白紙のページにつらつらと文字を書き込んでいく。

言うならライティングだよなあ。



――基本制御システムのインストールに成功しました。(10/300)

――生命制御ソフトをインストールします。(10/300)

――成功しました。(11/300)



おどろおどろしい魔法的な雰囲気に現代的な用語が無理くり入れられている気がする。

11は11ページの事だろう。



――起動します。

本が閉じられ、そして消えた。



真っ暗な闇に文字が浮かび上がる。


*******


水取逸角x3


*******


……。何の表示だろう。

唖然とする中に軽快な効果音で目覚める。世界的配管工のスタート音に似ている。

目が回復すると視界の左端っこにゲージがある。


一つ一つ聞く事にした。


「なんかインストールとか出てたけど?」

「雰囲気で付けてみたべ」

雰囲気かい!


「そう、ロマンスね」

小人はうっとりしながら言った。

こちらに微塵みじんも伝わらないネタやってる気がする。


雰囲気はどうやら魔法を制御しやすくする為に必要な事らしい。

そういうもんなのかね。


「お前様の眠れる可能性を300として魔法の演算をやらせているべ。

 これは雰囲気じゃねえ数字」

「俺の眠れる可能性だと!」

「具体的には精子貯蔵庫」

「聞かなければよかった回答!」


「まあ半分ぐらい冗談やで。未開花の才能だと思いねえ。

 300は凄いどすよ」

「へえ。凄いのか」


「普通は10そこらぐらいじゃねえかな。

 さすが逸材やで。……はて。王の血は本当じゃったか」


「おお。やったぜ!」

なんか虫に刺されたタイミングで一気に300とか増えた気がするけど言わないでおこう! 

修正されたら嫌だし。


話題を変える。


「あと、さっきから気になってるけど。……ゲージが見える」

「ライフゲージって奴どす。7つ付けてみた」

「ゲームだ、それ」

「ふふふ。ダメージを受けると2秒ほど無敵になるべ。

 どんなダメージも1ゲージ。特殊な攻撃は2ゲージ」

「そこは全部1ゲージに統一してほしいな……!」

「んじゃ1ゲージにするべ。全部消えたら1ミス。残機は3どす」

「残機ときた!」


最初聞こえたスタート音は外して貰った。

シリアスな状況で死んで復活時にそれだと気が抜けるに違いない。

頭いいな! って褒められた。ふ、よせやい。


「必殺技はコマンド入力式で発動にしたべ」

「お、おう」

コマンド入力式の意味がちょっとわからない。

コントローラーでも握るのか。


挿絵(By みてみん)

小人が小石を渡す。いや、赤い宝石だった。

1cmぐらいのサイズ。手のひらで転がす。


「ルビー? 赤いから」

「魔法の石どす。それ食べると魔法が使えるようになるべ。

 いやちょい待ち。あ、やべ、待って待つんや」


「え? もう飲んだよ」

魔法が使えるようになるべ、ほう! というタイミングで飲み込んだね!

なぜか飴玉ぽく見えて美味しそうだったから仕方ない。



――魔法の誓約を確認しました。基本制御システムを変更します。

――システムの変更に成功しました。

――炎の呼び鈴のインストールに成功しました。(16/300)



心のなかで再び魔法の本が現れて追加で書き込まれていく。

最初の方のページに注釈が色々入ったようだ。


「思いっきりが良すぎるわ……! ま、大丈夫じゃろう。愚問どすたな」

「え? え? よもやの毒?」

「童貞じゃなかったら心臓が破裂するべ。聞くまでもなかったじゃろう?」

「心が痛い!!」


無事に魔法が使える事になった。

ありがとう、童貞。さんきゅー、バージニア。


「おっけーやで。

 指でもどこでも良いから意識を集中しながら

 宙に線を描いてコマンドを入力すんべ」


「ちょっと待って。……なんか心臓がポカポカする」

「炎の魔法どすからな」

心臓の中に先ほどの飴玉みたいな宝石が入ってるらしい。


相手が右なら下ー右下ー右を0.5秒内に入力で炎の弾が出るそうだ。

前方向なら下ー斜め前下ー前って所。

線を引く距離が長い程威力が増すのだとか。


試しにちょちょんとやってみる事にした。

まずは格ゲみたいにレバーを回すようにコマンドを入力。半回転。

……失敗したので素直に一回一回元に戻ってコマンドを指で引いた。


空中に輝くリボンが引かれた。

リボンの中には細々した文字が書かれて一際光っている。

コマンド終了と同時にリボンが集結、マッチの炎程に変化した。

そのままコマンドラインの方向に飛んで霧に吸い込まれていった。


次に30cmぐらいのラインを描いて地面を狙ってみる

頭ぐらいの炎が飛んで炸裂した。すげえな。

着地した地面で焚火みたいに燃えている。

大きさは集中すると小さくできるらしい。

でっかく書いて小さい火にしたほうが威力が増すという。

0.5秒の制限もあるので指動かしながらだと結構難しい。


「上手くいったようどすな。

 『炎の呼び鈴ベルフレイム』という魔法どす。

 本来は呪文の歌が響くのだけども奇襲にも使えるように文字リボンにしたべ。

 見栄えも良いじゃろう」


「おお。そして何書いているかよく判らない文字」

「フフフ。ちなみにその文字は雰囲気でごわす。

 ほらお前様の好きな漫画で

 背景に英字新聞を使って誤魔化すのがあるじゃろう?」

「知らない方が良かった情報がでた!!」


「魔法のルーンは1文字。見つからないように入れてるべ。

 だから奇襲にも使える。

 素でルーンだけにしとくと呪文の歌が発生するべ」

「へえ」

冗談かと思ったら意外に実用的な理由だった。


呪文の歌というのは魔法を使うと音が出るそうだ。

それが呪文に聞こえるのだという。

呪文は唱えるものじゃなくて

魔法を為せばイデア界から発生するんやで、と良くわからない事を言われた。


判った事は呪文を覚える必要のないファンタジー世界って事だ。

地味にありがたい。



「ほかは?」

「コマンド式の技はこんだけ」

「すくな!」

「条件みたしたら増やすべさ。……正直お前様の才能にびっくりやで」

「くくく。いまさら思い知ったか」


潜在力、心の中の魔法の本は10ページかそこらが平均値だそうだ。

基本制御システムで10ページ取ったのも余裕があったのでフルで入れたらしい。

最小限のシステムとコマンド式魔法をびっしりページに書いて済ます予定だった。

読みづらいページは魔法の展開が遅くなるそうな。


余裕の300ページは予想外という。

……ほんとうは3で止まってたからなあ。謎の100倍結果。



「まあ1つの技を極めるのも良いって事よ。

 10kmぐらいのリボンを引けるようになろうぜ」

「無理じゃね?」

無茶ぶりである。


挿絵(By みてみん)

そしてごそごそと小人がバスケットから札を取り出した。

「飴玉が旨かったんで切り札を3つ授けよう。ミンナニハ ナイショダヨ」

3枚のお札を小人がくれた。手に取った途端に光になって消える。


「札を使うって思えば使えるべさ」

札が心のなかの本に栞のようにするりと入っているのが判る。

意識すれば使用できるらしい。


豆知識のウィンドウが出た。

ちなみに基本制御システムの機能らしい。

アイコンマスコットは小人が外国の卒業式とかで被る帽子かくぼうを装備してる奴である。



豆知識;切り札の効果

影縛シャドウバインド:対象を行動不能にする

水晶の壁クリスタルウォール:対象を絶対防御する水晶の壁を作る

死ぬ前に良い奴ブラッドになる権利(レター):対象が死ぬ前に良い奴になる




「シャドウバインドは忍者漫画で見た奴で良いとして。

 クリスタルウォールも硬そうな防御で判った。

 ……最後のはなに?」


「お前ならこの世を救う英雄になるかもしれん……(がくっ) ってなる切り札」

「それどう使うんだよ!」

「すげー使える切り札じゃろう? ぶっちゃけ壊れ?

 騙されたと思って持っておゆき。チートだけにな」

「うっさいわ」


小人が自信満々に言うのでそのまま通した。

そして切り札の説明がさらに加えられる。


「切り札はコマンド入力と違って消費型どす。

 1度使ったら復活は24時間かかる。

 クリスタルウォール使用中は解除後からカウント。

 クリスタルウォール使って、そのまま24時間無敵、

 そんでまた再使用は不可どす」


「なんか、本当にゲームだな……! 生意気にバランス取ってる」

「お気に召されたようどすな。

 あとこの切り札の存在は他人にばらす時は注意やで。

 おいどんから貰った事は言わずに

 元から持ってたとか修業の成果とか誤魔化しておけ」


「本当に秘密だった!」

「切り札は隠しておくものよ……!」


切り札はインストールはなかった。

もし何らかの魔法で探られても判らないらしい。

切り札の切り札たる所以ゆえんよ。


なんだかんだでゲームのような体になってテンションがあがった。

しかしその高揚は長く続かなかった。


ちょっとした段差を降りた時に体が点滅したからである。


挿絵(By みてみん)

脳内に済むマスコット。

TVでメッセージボードを持ってくるスタッフさんみたいにウィンドウを持ってくるぞ。


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