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11 『俺のエルフのイメージと違う』

エルフ。森の中に住む住民で男も女も美形で耳が長い。人間の数倍生きて若い姿のまま。

弓がメイン武器。魔法を使ってどちらかというと菜食主義。

あと近年はオークに性的に弱いという。


――そんなイメージだった。


この世界の妖精族は宝石を本体とした精霊だという。永遠に若い存在。

神々の従者として世界に作られた人ならざる者。


種族と言えるかどうかというと群れを成して社会を作らないので種族ではない。

神々の従者として集団でまとまる事はある。

山や湖、泉に精霊の宝石が融け込み自然発生する事もあるという。

宝石は地の女神や、冥府の王の吐息だったり、天の光が結晶となったともいう。


妖精族が美しいのは宝石や木漏れ日、月の光の美しさ、森の静かな淵に輝くさざなみの深い緑の光が人の形になったからだとも言う。

そんな訳で生き物としての生々しさが薄いのだった。


エイプリルは四月宝石としてこの城に紐づけられた精霊だそうだ。

面と向かって綺麗だとか宝だとか褒め称えられてエイプリルは動揺したらしい。

ぷいっと横を向いてる。耳が赤いのが見える。

その反応、こっちの方が恥ずかしいわい。


「へ、へえ。妖精ってそんなのだったのか」

「そう。精霊石が核」

エイプリルがようやく顔を戻す。耳の色が元に戻って平常心だ。


「お前様の国だと、雪女が近いと思うべ」

「ああ、あれか」

雪の美しさに対する憧憬が妖怪化したような存在だ。

ようするに昔話の精霊みたいなのがこの世界の妖精族らしい。

物を食べたり飲んだりする必要すら無いという。

食べても消化されずにすべて魔力に分解されるか消失するという。


「だから幾ら食べても太ったりしないのです」

「……」

メイドさんがドヤ顔っぽい声で言った。

俺としては骨メイドさんには肉を付けて欲しいけどな。切実に。

エイプリルはホットミルクを持ったまま微妙な沈黙。手に力が少し入ったようだ。


小人が陽気に続ける。

「あとお前様の言うエルフは貧乳とかスレンダーな娘が多いとの事どすが、こちらの妖精族は爆乳多いと思うで。ほとんどが地母神の系譜やからな」

「……」

エイプリルの無言が恐ろしい。


なにか触れてはいけない気がするので話題を変えた。


「メイドさん達もなにかの精霊とか?」

「狭間の城に仕える者達」

疑問に短くエイプリルが答えた。小人が追加で解説する。


「大昔の滅びた神々に仕えた一族だったと聞いてるべ。

 呪いが許されるまで城に居てプレイヤーの助けをする役目だとか」

「ふーん」

「もう十分に話した。水取くんは帰還するのだからこれ以上の説明は不要」

切り上げに掛かった。


「そんじゃお開きにするべ。

 あ、水取どんは寝る前に空見ると良いどすよ」

「空?」

「エイプリルどん、中庭に一緒に行くと良い」

「拒否」

にべもなく断られた。


「ミム。水取くんに部屋の案内。特に禁門の場所には立ち入らないように説明」

「かしこまり」

「なに、その禁門って? 開かずの間みたいなの?」


視界に豆知識ウィンドウがでた。

禁門:皇帝、王の間への門。


王様いるんか。へえ。いや俺じゃね?


「水取くんは知らなくて良い所」

「はい」

そればっかりだなあ。とは思う。歩み寄りを覚えてもらいたい。

小人が伸びをした。歯を磨いておやすむ! とシャウトして出て行った。

金色の髪のメイドさんが慌ててついていった。

それでお開き。


メイドのミムさんが中庭へ連れ出してくれた。

「うわ………。たしかに凄いな」

「そうですか? 毎日見ていると良く判りません」

見上げた空は地球ではお目に掛かれないような色彩に富んだ星空だった。

特殊加工を施した星空の写真のような光景がそのまま広がっていた。


「あの光る雲みたいなのは星雲ですよ」

と解説をくれた。天の川が凄い。

微妙に形が違う気がするもののオリオン座や北斗七星といった判りやすい星座がそのままあった。へえ。


「あちらの2つの星は大きく光る方から小さく光る方へ結んだ線が常に西を指します。ガイド星と言って西の国ではよく知られた物語と一緒に語られます」

この星は知らなかった。

普通の星空より沢山の星が見えるから知らない星座も増えていそうだ。


「星がきれいだなあ」

「お気に召しましたか。外つ国の方が気に入ってくれると嬉しいですね」

と上機嫌でミムさんが言った。

黒髪ツインテールのメイドさんと順調にフラグを立てている気がする。

お面の下がスケルトンじゃなければなあ。




「お嬢様ー、もう良いですよー」

ミムさんが二階に向かって手を振る。エイプリルがこちらを見てた。

ぷいっと横を向いてから奥へ引っ込む。相変わらずの美少女っぷりよ。

なんとなく気まずい。


夜空に霧が再び掛かっていく。

あ、ひょっとしなくても気を遣われてたんか。

星空を見やすくしてくれたようだ。


「お嬢様は素直じゃないですからね」

ミムさんがやれやれ、という感じで言ったのが印象的だった。


もっとも狭間がぶつかる時期は霧を掛けるとの事で

翌日以降ははっきりと星空が拝めなくなった。霧がかかってそれはそれでカッコ良いのだけども。


「さ、お部屋に案内しますよ」

手を引かれてエスコートされるでごわす。


「ミムー、灯りを。お客様が足元を踏み外さないように」

ミムさんの同僚がランプを持ってきた。

薄暗い廊下が蛍光灯とは違った暖かみのある光に照らされる。

ミムさんが優雅に会釈して同僚から完璧な動作で受け取る。

外国の儀仗兵みたいな雰囲気。かっこいい。


夜の霧の城は静かで幻想的だった。虫の声と風にさざめく木々の声。


その中を二人で歩いて行った。

補注:メイドさんに対する人称の変化は水取の心象の変化による。

メイド→メイド骨、メイドさん→ミム →ミムさん

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