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9 『え? 全自動好感度だだ下がり機?』

そのまま食事に案内された。

広間にロウソクのついた長いテーブル。

周りにスケルトンの召使たちが整列。

これはちょっと落ち着かない。


小人はこちらに気付くと

「お。髪切ったのどすか?

 おいどんが美少女なら、ぷしゃって大変な事になってしまう所でしたばい」

と褒めてくれた。


なお美少女のエイプリルの反応は薄い。

フードは下ろしてるけども相変わらず仮面は付けたままだ。

表情は判らないけども興味なしといった雰囲気に満ちている。

馬車の時と同じように手元の本を黙読している。哀しい。


小人と並んでテーブルにつく。

小人の椅子は幼児用の高い椅子で座ると音がなるクッション付きだった。

面白がってぷっぷっと何度も鳴らしてから座っていた。


さて。

スケルトン達の城なので骨の魚とか出てきたらどうしよう。祈った。

普通にきちんとした料理がでてきた。

豪勢な城料理という感じでもなかったが十分だった。

コーンスープ、サラダ、ステーキと白パン。

レモンの浮かんだ冷たい水。

肉はナイフの背中で切れるほど柔らかく、美味しかった。


美味しかったのだ。


おおお……

これだけの理由で帰りたくないとか思わせる。

家の飯は弁当屋とコンビニ飯と冷凍食品、缶詰のいずれかという家庭である。


あまりの美味しさにぼやけていた頭がハッキリする。五感が回復する。

なんだか夢見心地だったのが一気に目が覚めて現実になったみたいだ。


ウィンドウが出た。

『食事によるHP回復効果が発生』

ダメージが消えてゲージが7に戻った。便利過ぎない、この体?

あとで小人に聞いたら戦闘しながら食べて回復も出来るけど、喉に詰まらせて窒息死は即死判定になるので注意やでと言われた。


小人は食事を一緒に楽しんでいたがエイプリルは紅茶すらも手をつけずにいた。

ダイエット中か。仮面つけたままじゃ食べずらいのは判るけど。

魔女との遭遇の最中に偶然に見た顔を思いだす。

青い瞳の美少女。無表情な整った顔。

これで胸が大きければ完璧だった。骨メイドさんを見習って胸に詰め物をしてもらいたい。


食事が済むと書斎に案内された。テーブルがあって会話がしやすい。

黒髪ロングのメイドさん(骨)が紅茶セットを持ってきた。

茶菓子は小人の持ち込み。アップルパイを1切れずつ小皿に選り分けられた。

出来たてのように熱い。そしてびっくりするほど美味しい。

これだけで帰りたくなる逸品だ。


「いえ。帰って頂きます」

心の声が漏れてたのかエイプリルが言った。

「嫌われたもんどすなあ」

小人がしみじみと述懐を述べる。


「好意を持つ理由があった?」

「それ以上いけない。思春期の男の子が死んじゃう!」

風呂あがりのかっこよさも通用しないだと……!


「それ通用した事は?」

心を読まないで!

「私は可愛らしいと思いますよ」

メイドさんのフォローが入った。

可愛らしい、というのは言われた方は正直微妙な気分だが。

……筋トレしよう。


「水取どん。とびっきりエッチな妄想するんや!」

「!」

その言葉にエイプリルがびくんと怯えた。

小人が親指を立てる。

「さいてい」

何もしてないのに好感度がまた下がった!

とても当たりが強い気がする。


脳内に小人の声が響く。

びびび「ほら、逃げる時どさくさに紛れて胸揉んだじゃろ」

完全に忘れてた!


小人が呆れたような、感動したようなテレパシーを送ってきた。

びびび「貧乳は揉んだうちに入らなねえとは、上級者えきすぱーとどすな」

上級者にルビが振られたのはテレパシーの際にイメージで伝わってきた。便利やな!


「水取くん、最低」

心をまだ覗かれていたようだ。

何かしてたので時間を置いて追加で好感度が下がった。哀しい。


エイプリルが改めて言った。

「水取くん。出口はまた作れば良いからそのつもりで。

 準備に日にちは掛かるけどつ国の時間の流れとは違うから心配無用」

「完全に帰る流れかー」

「そう。それまで城で過ごして。ここなら安全だから」

「それまで必殺技とかで遊ぼうぜ。

 おいどんもせっかく気合入れて作ったから楽しんで貰いたいどす」

「そうだなあ。まあ仕方ないか」


冷静に考えるとあの魔女と戦ってどうにか出来るとは思えない。

ゲーム的な体とはいえゲームの腕前は一般人レベルだし、無限コンティニュー無しでどうにか出来る程うぬぼれもない。

自分はコマンド式の火の魔法が使えるけども魔女は魔女らしい魔法で殺しに掛かって来たのだ。どうなるか判らない。


しかしまあ。目の前の娘が名残惜しいのは確かである。

エルフの美少女だった。

あの時に時間も状況も忘れて見とれるぐらいの美しさだった。

また顔が見たい。そんな事は童貞の俺が切り出せるわけがなかった。


気を取り直した。

「せっかくだから色々聞きたい。魔女の話に出たプレイヤーって?」

「貴方には関係ない」

「まあまあ。知的好奇心は満たしてやろうぜ!

 プレイヤーはゲームの競技者どすな」

「まんまやないか。――何のゲーム?」


「狭間の取り合い」

エイプリルがつまらなさそうに言った。


失礼します、と金髪のメイドが慌てて入ってきた。

すわ何事! と身構えた。


携帯が死んだ。ズボンにいれっぱだったから。

ぐっばい!


うわあああ……。 これ元の世界でも壊れてるの、夢だよね、どうなの?

何らかの水難ですぐに壊れるか、すでに壊れてるかの二択どすよ、という返事。

すごいがっくりした。


小人はもう一切れパイを喰えよ、と勧めてくれた。


良いアップルパイだった。


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