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後編

 晩餐の後、殿下が私の部屋に来たのです、、、。 そして、私の部屋からなかなか出て行きません、、、。困りました、、。


 話しをするとかじゃ無いんです。リロイをずっと眺めているのです。


 私、、、もう眠いんだけど、、、。


 アニー、、、アイツを何とかしてくれ、、、。ずっと視線を感じて、落ち着かない。


 何とかしてって言われても、、、。

「殿下、そろそろお休みになられた方が」

「そうだね、、、」


 そうだね、、、じゃ、ありません。席を立って、ご自分の寝室へ行って下さい。

「私も今日はそろそろ寝具に入りたいのですが」

「俺の事は構わない」


 私が構いますけど、、、


「リロイに触れたいのだけれど、嫌がるだろうか」


 嫌に決まっているだろうが、、、。何で男に撫でられ無いといけないのだ


「嫌がっています」 

「そうか、、、残念だ、、、」

そう言って、また眺めます。


 私の眠気が限界を超え、椅子に座りながら、うつらうつらしてしまいます。

「アニー?」

名前を呼ばれても返事が出来ません。睡魔が私を捕らえて離さないのです。

「アニー、、、眠ってしまったのかい?」

彼が一度席を立ち、戻って来ると私を抱き上げてくれました。

 静かにベッドへ連れて行き、そっと下ろします。

 ひんやりしたシーツが気持ち良い。

 ドレスの裾を少し捲り、足首に触れられた時はドキリとしたけれど、靴を脱がしてくれただけでした、、、。

 


**********



 俺はアニーの靴を脱がせ、彼女にブランケットを掛ける。幸せそうな顔をして寝息を立てる。気持ち良そうに眠る彼女が可愛い、、、。


 振り向いてリロイを見ると、彼も背中を向けて寝ていた。

 


 俺は、そっと彼女の額にキスをした。



*****



 リロイが城に来たお陰で、彼女は聖女と認められた。

 今までは、侍女にさえ見縊(みくび)られていた。

 陛下にも、敬意を払われてはいなかった。

 いつまで経っても、田舎の女扱い。

 しかし、先程リロイが彼女の後ろを歩いた為、皆の彼女に対する感情に、変化が起きた様だった。



*****



 彼女が庭に佇んでいる。長い髪が風に揺らぎ、女性らしくなった。立ち姿も美しい。田舎の娘が貴族の女に成長した様だった。

 側にはリロイが常にいる。彼は彼女を守っているのかも知れない。



 私も彼女の側にいたいと思った、、、。



*****



 アニーと私の結婚式を、執り行うそうだ。

 リロイの存在が、貴族達にアニーを聖女だと認めさせた。最近の彼女は美しくなったし、ダンスも所作も他の貴族と変わらない。そろそろ良いだろうと言う事らしい。


「え?本当に結婚するんですか、、、?」

「君は、今まで何の為に勉強をし、ダンスやマナーを習って来たんだ、、、」

「そうですけど、、、やっぱり、公爵令嬢様とか伯爵令嬢様の方が、殿下には相応しいと思いますよ?」

「聖女を守るのが私の仕事だ」

「仕事、、、」


 あぁ、失敗した、、、。仕事なんて言ってしまった。


「私、リロイがいれば平気です。リロイは強いし、、、。それに、私が聖女なら、色んな村や町に出て、田畑を見て回った方が良いと思います」


「アニー、、、」



**********



 私を守るのが仕事と言われて、モヤモヤしました。


 リロイがゆっくり立ち上がります。

「リロイ?」

 大きな欠伸(あくび)をして


 此処(ここ)は退屈だ、、、


と言うのです。


「退屈?」


 何もしなくても、食事にありつける。退屈だ。そろそろ森に帰る


「え、嘘、やだ、、、」

「アニー?」

「リロイが、森に帰るって、、、」

リロイは伸びをして、ゆっくり歩き始めました。



**********



 アニーは、リロイを引き止め無かった。リロイの横を歩き、小さな声で話しをする。

 俺には聞こえない。


 城下町を通らないで済む様に、裏門から出て行く。アニーは静かに見送り、リロイは振り向かなかった。

「引き止めなくて、良かったのか?」

「退屈だって言われたの。見ていても退屈そうだな、とは思っていたから、、、」


 アニーも帰りたいのか、、、?


 喉まで出掛かった言葉を飲み込んだ。

 帰りたいと言われるのが怖かった、、、。



*****



『 残念ながらそれは出来ない。聖女は王家の人間と結婚する決まりだ 』

『 誰が決めたのっ?神様?違うよね!あんた達王家の人間でしょ?勝手に決めて、偉そうにしないでよっ! 』


 今でもあの会話を思い出す度に、聖女を守るなんて、傲慢な発想では無いかと思う。


 しかし俺は、彼女に惹かれている自分に、気が付いてしまった。

 彼女が少しでも俺の事を好いてくれるなら、こんなに嬉しい事は無い。



**********



 結婚式の準備が、着々と進んで行きます。私には止める事が出来ません。


 本当に私で良いの?

 もっと立派で、素敵な女性は沢山いるのに、選(よ)りに選(よ)って私なんて、、、殿下も災難だわ、、、。


 マナーは身に付きました。先生からお墨付きを貰った程です。勉強の方はまだまだ続きます。多分終わる事は無いでしょう。


 ダンスの練習は、殿下と一緒になりました。

 彼が練習の為に部屋に入って来ると、緊張してしまいます、、、。

 目が合うのが恥ずかしくて、つい視線を逸らしてしまうのです。


「アニー、こちらを見て」


甘い声で囁かれると、一気に顔が熱くなります。やっぱり、王族の方々は美しいのです。

「手を」

と言われ、そっと指先を重ねます。

「遠慮してたら怪我をする」

手を握られ、グイッと身体を引き寄せられます。密着してるんですけど、、、。


 貴族の皆様は慣れていらっしゃるかも知れませんが、所詮私は村育ち。近所に同じ歳の男の子が居なければ、子供すら居なかったのです。

 膝からガクリと落ちそうになる私を、殿下は支え、抱き抱えてくれました。


 ひーっ!


 は、恥ずかし過ぎますっ!止(や)めてーっ!

 思わず両手で顔を隠してしまいます。

 殿下は、私をそっとソファに座らせました。

 カチコチに固まった私は、真っ赤になった顔を隠したままでした。

「アニー」

そう言いながら、私の両手に優しく触れ、顔が見える様に退けました。

「どうしたの?」


 待って!


 殿下は今まで、こんなに優しく無かったです!



**********



 顔を赤くして、恥じらう彼女が堪らなく可愛い。抱き締めたい気持ちを、抑え無ければ、、、


「聖女様」


 はっ!とする。二人きりでは無かった。危ない危ない。


「お時間が無くなってしまいます」

先生の声に、唇をキュッと結び、「うん」と頷く彼女、、、。俺の心臓は、天使の矢で撃ち抜かれた様に、ドキドキした。可愛すぎる、、、。


 最初こそ、ぎこちない動きではあったけど、時間が経つ内に、彼女の緊張が解れて来た。とても踊りやすい。

 心底ダンスが楽しいのか、此方(こちら)までワクワクして来た。

 最後に二人でお辞儀をすると、先生は高揚した様に拍手をくれる。

「素敵です!本当に素敵!見ているだけで、楽しかったわ!」

先生はアニーを抱き締め

「貴方は素晴らしい生徒です!」

と褒めた。俺は、アニーの顔を見る。嬉しそうに笑う彼女。きっと随分頑張ったんだ。愛おしい感情が溢れて来る。


 彼女の勉強が始まる前に、二人でお茶を飲む。二時間たっぷりダンスを踊った俺達は、軽食を食べないと午後の仕事に支障が出る。

「今日のダンス、とても楽しかったです」

和(にこや)かにアニーが言う。

「俺も、ダンスが楽しいと思ったのは、初めてだ」

「初めてですか?」

「、、、そうだな、初めてだ」

確認する様に思い出す。

「子供の頃から習っていたが、相手をリードしないといけないとか、姿勢を気にしたり、、、邪念ばかりだった」

「邪念って」

「君の緊張が解れた時が分かったよ。それから、急にダンスが楽しくなった。とても踊り易くて、良い時間だった」

彼女は紅茶を飲みながら、嬉しそうに小さく笑った。



**********



「聖女様」

と呼ばれる度に、私は何もしていない事に気付くのでした。

 治癒の力や癒しの力が有れば、人の助けになるのに、私は動物や植物の声を聞くだけ、、、。


 何(なん)の役にも立っていないわ、、、。こんな事で良いのかしら、、、。


私はいつも不安でした。貴族の令嬢達は私とは違います。生まれ育った環境が違うから、彼女達は彼女達の役目があるんだと思うのです。


 でも、私は?


 私の役目は何なのかしら、、、?


「アニー、結婚式のドレスが出来たよ」


ドキリとしました。このまま殿下と結婚しても良いのかしら、、、。


「あの、、、」

「ん?」

「私、、、」

「、、、」

「殿下に必要ですか?」



**********



 アニーに、「殿下に必要ですか?」と聞かれて


「必要だよ」


と即答してしまった。


 彼女は、「何故?」と首を傾げる。


「君が好きなんだ、、、」

「、、、」

もう一度、彼女は小さく首を傾げた。

「、、、ごめん、、、。君が可愛いとずっと思っていた。本当は、君を解放しないといけない事も、理解している。王家と聖女が結婚しなければいけないなんて、過去の王族の傲慢だ、、、。でも、俺は君を手放したく無い、、、。個人的な理由で君が欲しい」

「、、、あの、、、」

「好きだ」

「殿下?」

「好きなんだ」

「、、、」



**********



「好きなんだ」と言われました。


「聖女を守るのが私の仕事だ」と言われた事もあります。


 何方(どちら)の言葉を信じたら良いのでしょうか?

 信じたい気持ちと、信じてはいけない、調子に乗るなと思う私。


 初めて会った時の、殿下の顔が過(よぎ)ります。

 彼は歓迎していなかった、、、今は?


 とても優しいです、、、。


 どっちが本物?


 どっちも本物です、、、。


 私は何を信じたら良いのでしょう、、、



**********



 アニーはまだ迷っている様だった。それでも、俺達は結婚するしか無いのだ。


「アニー、、、馬に乗らないか?」

俺達のダンスの練習はもう必要無い。彼女には、今後、その時間も机上の勉強に当てられる。

「乗りたいです!」

「俺も仕事ばかりで、外に行きたい。今日は二時間、馬に乗ろう」

そう誘うと、彼女は喜んでくれた。



*****



 昼から城の裏手の門を飛び出し、ひたすら馬を走らせる。

「殿下!見て下さい!」

彼女が指を指す。

「あの色!」

俺達は小高い丘を目指す。

「この花、殿下が植えた花ですね」

小さく群生した花が、遠くからも見えた。

「きっともっと増えますよ」

アニーと二人で見に来る事が出来て、嬉しかった。

「こんなに生命力があるのは、何か理由があるのでしょうか、、、」

「生命力に理由?」

「この子達、すごく逞しいんです。地中で沢山根を伸ばします」

「根を伸ばす、、、水辺に植えるのは如何(どう)だろうか」

「連れて行って欲しいみたいです」

俺達は馬を降り、そっと土を掘り起こした。



**********



 小川に来るのは初めてでした。サラサラと流れる水が、キラキラと光ります。小さな魚も泳いでいました。

「余り水辺に近付くと危ないよ」

そう言われても、私は水の中を見たくて堪りません。いつまでも、いつまでも見ていられます。

「もっと良く見えると良いのに」

サッと立ち上がり、振り向くと足元の土が崩れました。

「きゃっ!」

「アニー!」

殿下が私を抱き止め、支えてくれます。

「ご、御免なさい」

「足元に気を付けて」

「有難う御座います」


ドキドキが止まりません、、、

 


*****



 朝食を頂いた後、いつもの様にお勉強をしていました。苦手な言語を習います。隣国の公用語です。


「あら、クリスチーヌ様がいらっしゃってるのね」

私が先生の視線を追うと、その先、窓の外に美しい女性が立っていました。殿下とお二人で、散歩をしている様です。

「素敵ね、よくお似合いだわ」

上品なドレスに、細身(ほそみ)の日傘。うっとりする様な美人です。


 日傘が風に煽られて、彼女の手から離れました。

 咄嗟に殿下が腕を伸ばして取ります。

 二人は驚いた後に笑いました。


 本当に素敵、、、。


「クリスチーヌ様は、隣国の公用語もお上手ですから、後程ご一緒されてはどうですか?」

「え、、、」



**********



 クリスチーヌは俺の従兄弟だ。今でこそ、淑女と言う感じだが、幼い頃は俺より剣が強く、男らしかった。

「辺境の村から?大丈夫なの?」

「、、、」

「、、、まぁ、その子が本当の聖女様なら、結婚するしかないわよね」

「俺は彼女が好きなんだけど、彼女は俺の事どう思っているのか、、、」

「そうね、私達はそう教育されて来たから、相手が誰であろうと割り切れるけど、彼女は村で育っているから違うでしょうね。少し可哀想な気もするわ。でも、貴方は離したく無いんでしょう?」

俺は頷いた。

「彼女は日に日に美しくなって行く。目が離せないんだ、、、」

「良い人に出会えたのね」



**********



 私はクリスチーヌ様の前で緊張していました。だって、凄くお美しいのです。胸元の開いたドレス。そこから覗いた肌が、触りたくなる程綺麗なんです。

 女性から見ても、うっとりします。


『こんにちは、私はクリスチーヌ、貴女が隣国の公用語を習っていると聞いたわ』

『ア、アニーです、、、』

『何か聞きたい事はあるかしら?』


隣国の公用語で話し掛けられ、緊張していた私は、頭が真っ白になりました。何を話したら良いか分からず、その先を続けられません。

「大丈夫かしら?」

優しく微笑んで頂きましたが、私は自分の不甲斐無さに悲しくなりました。


 その後も私は、話す事が出来ず、殿下とクリスチーヌ様がお喋りしているのを、横で聞くだけになったのです。


 私はその場にいるのが辛くなり、少し席を外しました。

 部屋を出ると、溜息が出てしまいます。

 廊下を歩きながら、緊張を解(ほぐ)す事にしました。


 小窓から外を眺めていると、侍女のお喋りが聞こえて来ます。


「村の子だからと心配していたわ」

「本物の聖女様なら結婚するしか無いって、仰(おっしゃ)っていたのよ」



 やっぱり、殿下と結婚する相手は、私では無いと感じました。



*****



 余り長く席を外すのも良く無いと思い、お部屋に戻ります。

 二人は仲良くお喋りをしていました。

 私が入っては、空気を壊しそうで怖いです。

「お茶のお代わりを、お願いして来ますね」

と声を掛けて、部屋の中に入るのを止(や)めました。



 何だか少し寂しいです。



**********



 彼女も、アルフレッドの事が好きだと思うのだけど、気の所為かしら?

 私は窓辺に立ち、彼を呼んだの。大きな窓からは、澄み切った空が見えるわ。気持ちの良い天気。

 隣に立つ彼。いつの間にこんなに背が伸びたのかしら。昔は私の方が背が高かったのに。

「私ね、婚約が決まったわ。隣国に嫁ぐの」

「、、、夢が叶ったんだね」

「ええ、長かったわ、、、」

「おめでとう」

「有難う、、、」

そう言いながら、彼を抱きしめました。アルフレッドは、軽く抱擁しながら私の背中を叩き

「応援してる」

と言いました。



 カチャ、、、



「ぁ、、、」

アニーが新しいお茶を持って来たのです。私は

「貴女は聖女様なんだから、侍女にやらせれば良いのよ」

と、微笑みました。

 泣きそうな顔でカップとポットをテーブルに置きます。

「どうしたの?」

「何でもありません。古いポットをお下げしますね」

笑いながら、カタカタと震えています。


 ああ、、、私とアルフレッドが抱き合っていたのを、勘違いしているんだわ、、、。


「有難う」

と言うと、彼女は一礼して部屋を出ました。


「アルフレッド、追い掛けなさい」

「え?」

「彼女、きっと誤解しているわ。私もそろそろ帰るから、彼女とゆっくり話しをしなさい」

「あ、ああ、、、?」



**********



 両手で茶器を載せたトレーを持っていたので、涙が拭けません。

 抱き合っていたクリスチーヌ様と殿下が、余りにもお似合いで、私はやっぱり此処(ここ)にいるべきでは無いと思いました。

 殿下には、もっと相応しい方がいらっしゃる筈、、、。それなのに、ちょっと動物や植物と話しが出来る私が結婚するなんて、おかしいです、、、。


「アニー」


 私は振り向けません。振り向いたら、涙を見られてしまいます。

「アニー?」

殿下がギョッとしています。私からそっとトレーを受け取り、人を呼びました。遠くからパタパタと足音が聞こえて来ます。

「お待たせ致しました」

「これを下げてくれないか」

殿下は侍女から私を隠す様に立ち、トレーを渡しました。

「失礼致します」

彼女は静かに去って行きました。


 殿下は私の手を繋ぎ、ご自分のお部屋に戻ります。私は歩きながら、偶(たま)に如何(どう)しようも無く涙が溢れて、反対の指先で拭います。


 私をソファに座らせると、優しく

「如何(どう)したの?」

と聞いてくれました。

 でも、私は自分が何故泣いているのか、上手く説明出来無いのです。


「クリスチーヌが、君がきっと誤解しているって」

声を出したら、声を上げて泣き出してしまいそうで、何も言えません。

 殿下は私の肩を抱いて、そっと引き寄せてくれました。

 痩身なのに、思った以上に逞しくて、頼り甲斐があります。


「お二人が抱き合っている所を、見てしまいました。とても綺麗で、美しかったです。、、、殿下と結婚する人は、やはり私みたいな子じゃ無くて、生まれながら高貴な方がお似合いです、、、」

「クリスチーヌが綺麗に見えた?」

「お幸せそうでした」

「そうだね、きっと幸せそうな顔をしていただろう」


 その言葉を聞いた途端、涙がポロポロ溢れました。クリスチーヌ様は、殿下の事を好きなのかも知れない、、、。


「彼女の婚約が、決まったそうだ」

抱き寄せた私の頭に、殿下の頭がそっと触れます。

「クリスチーヌは、ずっと隣国に思い人がいたんだ。何年も何年も好きだった相手と婚約した。さっきは、その報告を受けていた。彼女が幸せそうな顔をしていたなら、本当に幸せな顔をしていたんだろう」

「殿下の事を、好きなんじゃないですか?」

「違うよ。彼女は従兄弟で、小さい頃から兄弟の様に育ったんだ。今でこそ、女性らしくなったけど、子供の頃は男の子みたいだった。、、、彼女が隣国の公用語が話せるのは、相手が隣国の貴族だからだ。随分勉強していたよ」

「そうだったんですね、、、」

「ねぇ、どうして泣いたの?」

「、、、お二人が抱き合っているのを見たら、胸がギュッてなって、ザワザワして、不安になって、如何(どう)したら良いか分からなくなって、、、。あの場にいるのが怖かったのです、、、」

「アニー、、、俺の事、好きなんじゃない?」

「え、、、?、、、好き、、、?」

「ヤキモチ妬いたみたいに感じるけど、、、」



**********



 アニーは自覚が無いだけかな?

 彼女は自分の唇に触れながら考える。唇を触れる行為は、緊張や不安の現れと言う。

「アニーは、誰かを好きになった事あるの?」


 あ、自分で地雷を踏んでしまいそうだ、、、。


「えっと、、、父さんと母さん、、、リロイも好きよ?」


 良かった、、、。


「初恋もまだ?」

「初恋?」

俺の顔を見上げた。可愛い、、、

「いつも誰かの事ばかり考えて、その人に会ったら一喜一憂する事って無い?」

暫く考えて、少しずつ赤くなって行く。

「俺は、アニーの事ばかり考えてるし、アニーの事で、一喜一憂しているよ、、、」

「、、、ど、、、どうしよう、、、。心臓がおかしくなってる」 

彼女は手を合わせて、胸を押さえる。

 俺はソファに彼女を押し倒し、両手をそっと掴むと胸に耳を押し当てる。

 

 心音が凄く早い、、、。


「あの、、、殿下、、、」

 

 ずっとこうしていたいと思う。


「ゆっくり深呼吸して、、、」


アニーは素直に言う事を聞く。小さな胸がゆっくり上下に動く。

 

 トクトク、トクトク、心臓が鳴る。


 数回深呼吸すると、早かった心臓の音が、少し落ち着いて来た。


 身体を起こし、アニーを起こす。そっと抱き締めて

「アニーを愛してる。アニーは?」

と聞くと

「私も愛してるんだと、、、思います、、、」

俺の胸に顔を埋めて、小さく言った。



**********



 私達の結婚式は、恥ずかしい位盛大でした。殿下とお揃いの衣装です。それだけで、私は嬉しくて涙が出ました。

 まだまだ私の事を認めてくれない人もいると思いますが、それでも良いのです。私は、私なりに頑張るしか無いのだから、、、。



 王城から出て、馬車で街を巡ります。

 遠くに、殿下と植えた花が咲いているのが見えました。



 いつかリロイに会いに行きたいな、、、そんな事を考えていた時、、、遠くで狼の遠吠えが一つ聞こえて来ました、、、。



  

これからも頑張って下さい。

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