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免許皆伝?そして楽しいイベントへ






 あれから更に数日が経ち、俺は結構、魔力操作にも慣れてきた。

 それでも、子供達と魔力操作を学ぶのは毎日の日課なので欠かさずに遊んで……げふんげふん。

 学んでおり、今日の訓練はかくれんぼだ。



「リーン! どこだー?」

「どこだー?」

「リーンにーいちゃー! どーこでーすかぁー」

「リンタロウ様ー」



 と言っても普通のかくれんぼではない。

 普通なら鬼は一人でその他が逃げると思うのだが、今回はその逆だ。

 逃げる人が一人でその他が全員、鬼。


 しかも今回は、ベルトラン君やイケメンも混ざっての超ハードかくれんぼ。

 そしてたった一人の逃げ役、俺。




 まじで、本気出して逃げてます。

 なんてったって今日の訓練の成果によっては、俺が今つけている魔力制御装置を保護者監視下でなくても外せるようになるかもしれないからだ!


 実はかくれんぼは、ちょっと前まで俺が魔力ダダ洩れだった事で、隠れたとしても魔力を辿って居場所がすぐに丸わかりので、後回しにされていた学びだったんだ。そのため初めの方はそのダダ洩れの魔力を収める方法を学ぶことをメインの目的として訓練していたが、少しずつ調節ができるようになった事により、その他の皆と同じ内容の訓練を少し前からやっている。


 その内容というのが少し難しかった。

 どうやら魔力というものは、自身が制御しているつもりでも性質特化の影響が受けないくらいの魔力が微かに漏れ出るのが普通らしく。魔力は残り香のようにその場に残り、それはよーく見ると視認できるとの事。

 子供達や俺は、それを探って逃げ役を探したり、鬼役に魔力の残り香を見つからないように完全に魔力を己の身に収めるという訓練内容をやっていた。

 これを特訓する事によってより繊細な魔力操作が可能になってくるそうだ。


 俺も最初の頃は魔力を収めることに必死で、皆のレベルに追いつくのは高い目標かと思われたが、今までの訓練でかなり成長した。

 数日頑張ったことで製糖した俺は、本当によく見ると魔力の残り香が見えるし、魔力を完全に己の身に収めることもできるようになったのだ。


 その証拠に、俺は今皆から逃げることができている!!!

 やっぱり俺ってやればできる子!


 なんて調子に乗ってると魔力が漏れ出てしまうので気を引き締めないとみんなに見つかってしまう。

 なんてったって、相手は子供でも魔力操作では俺の数倍先輩なのだから。

 今回は上級冒険者であるイケメンも参加だ。

 まじで気が抜けない。


 ただ隠れるだけではすぐに見つかってしまうので、今回は逃げ役が俺一人なのであちこち様子を見て場所移動オーケーというハンデ付きだ。

 俺はそのハンデを利用して、わざとあちこちに魔力の残り香をさり気なく残し皆の目から逃れていた。



「ふぅ、そろそろ逃げる場所が限られてきたなあ」



 逃げる範囲は屋敷の中と牧草地手前の庭まで。

 皆は手分けして隈なく探していたが、なかなか見つからない俺を見つけるために作戦を立てたのか追い込み漁のように俺を追い詰めていた。

 おそらくイケメンの入れ知恵だろう。


 そして、その入れ知恵をしたであろうイケメンの姿が見えない。



「まずいな……さっきまで皆と行動してたのに、見失った」



 俺も逃げるのに必死だったからなあ。

 でも、イケメンが皆の傍にいないということは逆に入れ知恵する人物がいないため、皆の追い込み漁の隙間を抜けて上手いこといい場所に逃げれるという事でもある。

 このかくれんぼは制限時間が設けれらており、三十分間逃げきれれば俺の勝ち。

 もうそろそろ三十分のはず……。


 イケメンの居場所が気になるが、賭けに出て皆の隙間を抜けるか皆の様子を伺える範囲で潜み隠れるか。

 悩みどころだな…………。


 あ、そういえばこちらの世界で時間の数え方は前の世界と一緒だった。

 まあ、何故かというと俺の前の世界の時間の数え方の感覚になるようにと、以前こちらの世界の言語を理解できるようにかけられた時の魔法の影響で無理ない程度にその辺の感覚変換もされているらしい。


 実際はこちらの世界独自の時間の単位らしいのだが、魔法ファンタジー万歳である。


 ちなみに月も一月から十二月まであり十二カ月一年単位、約三十日で一カ月、七日で一週間、という感覚も前の世界と変わらないよう変換されているが、さすがにうるう年とかそういうのは無いらしい。

 あとは、前の世界の地球のように東西南北などで暑い寒いとか四季の違いとかがあるわけではない、と言う違いがある。

 この星はカリファデュラ神の孫にあたるのでもちろん魔力を持っており、星に流れる魔力の性質が場所によって違い、その魔力の影響で寒暖差や四季などの違いがあるらしい。




 例えば南の国は暖かいイメージだが冬の国があったりするとか。

 そういう前の世界と同一にしきれない感覚もあるようだ。



「「リーン!」」

「どーこでーすかぁー?」



 おっと、そんなことを思い返している間に皆が近づいているな。

 そろそろ動かないとここもまずいか。



「でもなあ、もうそろそろ制限時間だと思うんだけど……。かと言ってこのままここに居ても見つかるかもしれないし」



 そんな俺がいる場所は屋敷の外の屋根の上。

 なんと屋根裏から屋根へと行けるようになっているのだ。

 この場所は前回のかくれんぼで知った。

 皆も、もちろん知ってるので見つかりやすそうな場所かと思うだろうが、そこは計算して残り香を配置していたので今は安全スペースなのだ。



「うかつに移動してイケメンに見つかってもなあ」

「そうだな。賢い判断だ」

「だろ? やっぱり相手の動向を把握するっていう、のは…………」



 え?

 今俺、誰と喋ってた……?



「って! やば!!」

「はい、リンタロウ捕まえた」



 気づいた時には遅すぎて、俺はイケメンに後ろから抱きしめられる形で捕まえられてしまった。



「あぁー! くっそ! どうしてここが分かったんだよ! 捕まらないように計算したのに!!」



 あと抱き着くな!

 

 俺はイケメンから離れようとジタバタしてみるが、さすがは上級冒険者。

 ピクとも動かない。

 こんなところで上級冒険者の力を発揮しなくていいと思う。



「はぁ、もう。この腕ピクともしねえ」

「はは、リンタロウは冒険者じゃない素人のはずなのになかなか良い線いってる。隠れるのも上手いが、魔力の使い方もかなり良くなった。筋が良いよ」

「こうやって追い詰められて捕まっている時点で誉め言葉に聞こえない」

「十分褒めてるよ」

「っちょ! すり寄るな!」



 このイケメンは、隙を見てはこうやって首筋にすり寄ってきたりなどスキンシップが多い!

 俺は、イケメンの顔を思いっきり手で押しのけて少しでも距離をとろうと試みる。

 抱きしめられたままではあるが、顔の距離をとるだけで気持ちはだいぶ違う。

 

 なんだこいつ、甘えん坊なイケメンなのか。



「それよりイケメン、どうやってここが分かったんだよ」

「うーん? 名前を呼んでくれたら教えるよ」

「はぁ!? なんでだよ!」

「なんででも。リンタロウはいつまでたってもそのイケメンって呼ぶか、ドゥース様やパルフェット様の前ではゼンさんなんて他人行儀だからな」



『さあ、ゼンって呼んでくれ』と言いながら、イケメンの顔を押しのけていた手にしれっと唇で触れてくるではないか!

 ギャッとなった俺は反射で手を引っ込めたが、顔が自由になったイケメンはその顔を首筋だけでなく頭から俺の頬にまですり寄ってくる。

 

 鬱陶しい!!!



「――っ! ゼン! やめろ! 鬱陶しい!!」

「フッ、はいはい、よくできました。今度からそう呼ぶんだぞ」



 イケメン……、ゼンはそう言うとすんなりと俺から離れていく。

 こいつはこうやって俺を揶揄うくせに、俺が本気で怒る手前で大人しくする。

 こう上手い事、俺との距離感を保ってくるから怒るに怒れないし、調子が狂う。



「――――ったく! はぁ…………俺、不合格? 制御装置付けたまま?」

「いや、合格。もう三十分経ってる」

「まじで!?」



 ぃよっしゃあ! 制御装置卒業!!!!

 でも、ちょっと待てよ?



「ていうか、どうやって俺を見つけたんだよ?」

「ん? あぁ、リンタロウの香りを辿って見つけた」

「…………え、変態なの?」

「……ちょっとその言い方は心外だな。俺は人より鼻が利くんだ」

「えぇ? だって、俺、魔力収めてるから匂いしないはずだろ?」



 俺の魔力を収める魔力操作はかなり上手くなったらしく、双子お兄ちゃんズやプティ君など皆から制御装置を付けていなくても、魔力操作で魔力を収めている時は匂いがしなくなったと言われるようになったのだが。

 そんな俺の匂いを嗅いで辿り着いたってどんな嗅覚だよ。

 変態かな? って思うだろ?






「「あ! リーンみっけ!!」」

「リンにいちゃー、みっけ!」

「あー、でもちょっと前に三十分経ってるから俺達の負けだよ」

「「「えぇー!」」」



 ゼンのちょっぴり変態発言のやりとりを遮る形で、俺は子供達に見つかった。


 だがしかーし! ベルトラン君の言うとおり俺はもう三十分逃げ切っている!

 ふふん! 俺、勝った!

 ちょっと大人げないかと思ったが、制御装置からの解放の喜びの方が勝ってしまった。


 まあ、制御装置あった方が魔力が漏れ出る心配はないからそっちの方がいいと思うけど。

 なんて言うか、ちょっと、あれを付けていると窮屈なんだよな。


 ぶうぶうと文句を言っている双子お兄ちゃんズと、それを真似してぶうぶう言っているプティ君が可愛い。

 そして、文句を言うなと窘めるベルトラン君。

 やっぱりしっかりしたお兄ちゃんだなあと思っていると、ベルトラン君は何かを思い出したのか『あ』と声を上げた。



「ゼン様! 父上がお呼びでした。何やら警備の件でお話があると」



 え、もしかして俺が家族の仲間入りするとかの話のときに上がっていた警備の相談ってやつ?

 本気で?

 冗談の範囲で止めておいた方がいいのでは? と思った俺はそれとなーくベルトラン君に聞いてみる。



「ねえねえベルトラン君。それってこの前、俺がここの家の子にって言う話が出た時のドゥース様が言ってた警備の話……?」

「え? いえ、おそらく最近領地で多発している窃盗事件に対する警備の話かと。ゼン様にはここに滞在している間、警備関係をご協力していただいておりますので」



 ほっ。

 なんだ、俺の思い過ごしだった。

 けど窃盗事件とか、穏やかじゃないなあ。



「リンタロウ、俺はドゥース様と話をしてくる。少し皆と休憩をしていてくれ、なるべく早く戻ってくる」

「ん、わかった」

「あと、この預かってたブレスレットは、このままパルフェット様に俺が返しておくから」



 そう言って、今日の特訓の始まりに俺が預けて、懐に入れていたブレスレットを見せてくるゼン。



「あぁ! そうか、ありがとう。あとで俺からもパルフェット様に貸していただいていたお礼を言う」

「わかった。パルフェット様にもそうお伝えしておく」



 ゼンはそう言うと、子供達にも今から休憩と伝えてドゥース様と話をしに向かった。

 子供達と俺は、その後姿をいってらっしゃいと手を振りながら見送る。


 けど………………。



「そんなに事件起こってるんだ……何を盗まれてるの?」

「それが……ちょうどリンタロウ様がいらっしゃる約半年前くらいから徐々に増えた形なのですが、最初は領民が育てている鶏がニ、三匹いなくなって…………」



 最初の事件は被害が少なく、鶏小屋の入り口の鍵が開いていて、ただの鍵の閉め忘れによる脱走と思われた。

 だが、鶏小屋の主人はかなりの几帳面な人物であった為、その可能性は低いと考えられ窃盗ではないか?

 と、一度話が広がりすぐさま領主であるドゥース様の耳に入り警備の強化を行なったそうだ。


 この素早い対策のおかげで、領民よりそれ以上の窃盗被害の話は出てこなかったらしく、窃盗犯は捕まらなかったが念のための警備強化継続という形で一度落ち着いたとの事。


 しかし、それから一月後にまた別の所から家畜が数匹盗まれたと報告があった。

 もちろん毎日警備をしているのだが、その被害は徐々に派手になる一方で。

 小さな家畜がメインに盗まれていたのがどんどん大きめの家畜になっていき、一度に盗まれる数も増え、今では牛まで盗まれているという。


 って、牛って……あの毛刈りしたばかりの牛!?



「ここの牛も盗まれたの!?」

「いえ、我が家ではなく他の領民が飼育している牛なので、我が家はまだ被害を受けていないのですが、つい一週間前にも領民の牛が二頭盗まれたと報告がありました……。うちもいつ盗まれるか分かりません」

「そういえば、ゼンはドゥース様とここ最近よく話しているもんな…………」

「手口がどんどん巧妙になっていっているらしく……、単独犯ではないとの事で、最近は犯人の捜査に力を入れているとか」



 それって……めちゃくちゃ大変な事件なんじゃ。

 ゼンは俺がこちらの世界に来て最初に起きてからは、訓練に時間をたくさん使っている。

 そんな大変な事件が起きているのに、俺がゼンの時間を貰っちゃってていいのか?


 そんな俺の考えが思いっきり顔に出ているせいかベルトラン君がフォローの言葉を入れてくれた。



「ゼン様は元々リンタロウ様のためにこちらに滞在されています。俺達はリンタロウ様をぜひ優先して頂きたいと思っていますのでお気になさらないでください」



 むしろ、リンタロウ様のゼン様の時間を、俺達が貰っちゃって申し訳ないくらいです。

 そう笑顔で言ってくれるベルトラン君。


 やっぱりとても気遣いができる優しい子だな。と、ベルトラン君の温かい気持ちに俺も温かくなる。

 だが。


 ゼンが俺のっていう言葉はちょっと気になる。

 俺、あんな変態所持した覚えはないぞ。


 そんな事思っていたら。







「皆ー! 上に居るんでしょう?」



 パルフェット様のお呼び出しがかかった。

 皆仲良く屋敷の中に戻り、パルフェット様のもとへと集まる。



「はーい、みんな集まったね。今から休憩って聞いたと思うけど、休憩はなし!」

「「えぇー!?」」



 おぉ、突如として休憩なしのお言葉。

 双子お兄ちゃんズは文句を垂れたが、その他は俺も含めて首を傾げる。



「どうしたのですか? 母上、また突然ですね」

「まあね! これから皆を市場に連れて行きまーす! あ、文句を言ったシャルルとサロモンはお留守番でーす」

「「えぇぇええええええ!! やだ! 母上の鬼!」」

「わぁい! いちばー!」

「母上に素直に謝れば連れて行って下さる。謝れ」

「「ごめんなさい! 連れてってください!」」



 パルフェット様は素直に謝った双子お兄ちゃんズを許し、市場に連れていくと言った。


 ていうか、市場なんてあるんだ!

 と純粋に興味を持った俺に、パルフェット様が説明してくれた。


 どうやら、パルフェット様の言う市場というのは、半年に一度、二週間ほどの長期に及んで領民の牧草地の一角を借りて大きく開かれているらしく。その市場でこの領地の特産品などをいろんな国の商人たちが買い付けなどをしたり、逆に商人から領民がこの領地には無い、いろんな品を買ったりする結構大規模なものらしい。

 その市場では美味しい物もたくさん出るし、他国の珍しい品も流れてくるらしいので子供達は市場に行けることを大喜びしたみたいだ。


 まあ、そんな俺も話を聞いてかなり楽しみになった。



「さあ! 皆、支度をして! お昼前には飛竜でしゅっぱーつ!」

「「「「おぉー!」」」」

「リンタロウ様……だいぶ、我が家に馴染みましたね」

「あ、つい、ノリで……」



 パルフェット様の掛け声に応じる双子お兄ちゃんズとプティ君、そして俺。

 ベルトラン君の言うとおり、だいぶ、馴染んだな。

 俺…………って、ちょっと待て。


 飛竜に乗れるのー!?


 また違う楽しみに気づいた。

 まじで、楽しみじゃん!


 ゼンや、ドゥース様、ベルトラン君が乗ってるの見てちょっと憧れてたんだよな!

 








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