2話 一章 始まりの街【ビーギニング】と、二人の少女 4
「はぁ?…」
俺は訳が解らず、益々首を傾げてしまった。
一方で、ダフネは黙ったままだ。またワゴンの壁に寄りかかりながら、
「…はぁ。」
と、分かりやすく溜め息を溢している。妙な艶かしさがあった。
話題の中心にも関わらず、呑気そうである。
その様子が俺には、癇に触った。まるで此方が聞き分けないみたいに扱われているみたいだった。代わりに指で指し示し、リキッドに向かって指摘する。
「あはは、…」
対して彼は苦笑いしながら、此方を宥める仕草を向けてきているだけだった。
「ぐぎき。」と俺は歯ぎしりして、苦虫を噛み潰した表情になる。納得がいかなかった。
「ヒルフェ様。…人には説明するのが難しい事情があるんです。…あまり詮索するのは、相手に失礼ですよ。」
ようやくダフネも口を開く。だが此方を諭す様に語りかけてきた。
「それ、お前が言うか!…」
と俺は再び文句を言いつつ、さらに言葉を続けようとした。
ほぼ同時、「リキッド様。」と、運転している御者の呼ぶ声がしてきた。
そのまま全員の視線は、其方に集まってしまう。
「どうした?」
「街が見えてきました。…後、一時間もしないうちに到着します。」
「わかった。」
とリキッドが代表して返事する。
俺も再び窓の外を注目した。
遥か前方の景色に、先程までは見えていなかった別の風景が出現していた。
そこには反り立つ岩肌の崖と、麓にある入江の海岸がある。
さらに崖の中腹から麓にかけて、白色で統一された外壁の建物が段々の様に、犇めき合っているみたいに並んでいるようである。
その光景をリキッドは指差しながら、誇らしげに説明を始めた。
「あれだ。…これから私達が暮らす街。…名前は【ビーギニング】。…美しき始まりの街と呼ばれているよ。」
「…美しき、…始まりの街。」
と俺は話を聞くと、両目を輝かせながら、期待に胸を膨らませている。
気がつけば、もうダフネとのやり取りは、頭の中から忘れてしまっていたのだった。




