2話 序章 七年前の辛い出来事。~それからの様子~4
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「………ちゃ、ん。」
女の子の声が聞こえる。最初は切れ切れ雑音みたいだったが次第にハッキリと、聞き取れてきた。
「……ちゃ~ん。…」
その声は自分の名前を呼んでいる、と勝ち気な少女は気がつき、ぼんやりとする頭を覚醒させる。次第に自分の現状を思い出し、「…いけない!!」と、慌てて上半身を起こして辺りを見渡す。
ここは実家ではない。別の街にある屋敷の庭園で、一面に芝生が敷き詰められ、針葉樹や薔薇の生け垣に囲まれた美しい場所である。
彼女は白いガーデンテーブルに、突っ伏しながら、うたた寝していたようだった。
「……ちゃん、何処~?」
ふと再び、女の子の声が自分の名前を呼んでいる。
すぐに勝ち気な少女は、テーブルから離れて歩きだす。しかし同時に、自身の全身から違和感を感じて立ち止まる。くまなく見れば、少し寝汗をかいていており、額から雫が頬を伝う。座骨から胸の谷間にかけては、汗が溜まっているようだった。既にシャツが肌に張り付いて気持ちが悪く、最悪な寝起きだとさえ感じていた。
「ねぇ、何処なの~?」
と、また先程と同じ少女声が聞こえ、此方へと近づいている気配がしていた。
「はぁ、……しっかりしろ。…私。」
勝ち気な少女は溜め息を吐く。すると、パンッ、パンッと、自身の両頬を力強く両手で叩き、気合いを入れ直したら、険しい表情になる。再び前へと歩きだしたのだった。




