Ⅰ-16:加入
「すみません! 加入手続きをお願いできますか?」
あの後驚くべき速さでメンテナンスを一度中断し、片づけをしたローレンスは、私を掴んでギルドの受付に運んだ。
「えーっと、加入されるのはどちらの方で?」
困惑する受付の人。
そりゃ組合員しか入れない所からから出てきた人がいきなり言ったら困惑するわな。
「この子です。大丈夫、きちんと≪念話≫が通用しますから。それに、審査自体はタオで済んでいます」
そう言って私を机の上に置くローレンス。
とりあえず、私からも受付の人に話しかける。
(すみません、冒険者組合への加入手続きをお願いします)
(なるほど、確かに念話は通じるようですね。ではまずこちらの書類に目をお通しください)
そう言うと、受付の人は書類を渡してきた。
さすがはプロだ、こんな見た目の私にもきちんと対応している。
……いや、チラッと見まわすだけでドワーフとかコボルトとかいるし、実は知らないだけで小さい魔族もちょくちょく冒険者組合に来ているのだろうか?
それはともかくとして、渡された中で一番上に重ねてあった世界冒険者組合連合会総合規約、と書かれた書類に目を通す。
案の定、守秘義務として組合員以外への依頼内容の漏洩は禁止されていた。そりゃ三人とも怒られるわけだ。
依頼を受領した組合長の裁量による処分ってことはハラモさんがなにか処分を下したのだろう。
それから、渡された三枚すべての書類に目を通す。
(確認しました)
(質問事項はございませんか?)
(いえ、大丈夫です)
(では審査はタオで済んでいるとのことでしたので、お名前だけこちらにお願いします)
受付の人に羽根ペンとインクを渡される。
けれど、悲しいことにそもそも今の私は文字が書けないのである。
(すみません、代筆をお願いできますか? 文字が書けないものでして……)
(では、お名前を、フルで頂戴いたします)
(サーシャ・タカトオ・ナガノ・ニホンです)
そう告げると、受付の人は怪訝な顔をしながらも手元の紙に私の名前を書いて渡してきた。
あくまでも自筆の必要があるのだろうか? 書き写せ、という意味だろう。
めんどくさいので≪中心教義≫でインクを直接文字にして貼り付ける。
(これで、大丈夫ですか?)
(え、えぇ……。
では只今よりタオに情報を照会いたしますので、明日以降に組合員証の受け取りをお願いします)
そう言って受付の人が苦笑いをしながら書類を回収する。それに合わせて、私も規約類を≪多次元収納≫でしまう。
やっぱり、このスキル便利だ。
すると、何かを書いていたローレンスが便箋を差し出した。
「すみません、ハラモさんにこの便箋も一緒に転送してもらえませんか?」
「えっと……ローレンス様ですね、承りました」
そしてローレンスが便箋と引き換えに私を回収して整備場に戻った。
自分で動けるんだけどなぁ。
「しかしあなたには驚かされっぱなしですね。
オウォッキャンに着くまでにできるようになれば儲けもの、程度に思ってましたから」
(いやいや、私だってまあできるだけ早くに冒険者組合には加入したかったし。
監視で縛られるよりは、契約で縛られている方が気が楽だからね)
「……まだあなたは組合員証を受け取ってはいないので、黙秘しますよ、黙秘しますとも!」
そう言って笑うローレンス。
やっぱりそういう系の任務受けてたんだな。
「それで、あなたはこれからどうするんです?」
(ん? どうするって……、あ)
そっか。
組合員になったから必ずしも彼らと一緒にいる必要はないのか。
でも。
(行く当てもないし、迷惑じゃなければ三人についていこうかなって、思ってる)
「迷惑じゃなければって……、断る訳がないじゃないですか。あなたといると退屈しませんから。
それに、あの二人もあなたに興味津々ですからね」
その晩。宿で合流したトシフとテタニも盛大に驚いた後、半ばあきらめたような顔をして――
――そして、改めて自己紹介をしてから、正式に私は彼らのパーティに入り、オウォッキャンを目指すことになったのだ。




