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Ⅰ-9:守秘義務

(私だって君を冒険者組合(ギルド)に引き入れたい気持ちはやまやまなんだ。

 勘違いしないでいただきたいのだが、これはキミがカビであるから、というのが理由ではない。

 その体で収納系スキルがなければ組合員証(ギルドカード)を常に持ち歩くことはできんだろう。

 残念ながら今の連合(ユニオン)のシステムは、組合員証(ギルドカード)に大きく依存してしまっている。

 だからお前を今すぐ冒険者組合(ギルド)に登録することはできぬのだ)

(あの、私今すぐ冒険者組合(ギルド)に登録しようとは思ってもいませんでしたよ)

(ん? 彼らの推薦で飛び級して入るつもりではなかったのか? ではなぜついてきた?)


 そのシステムはじめて聞いた。っていうか、推薦ができるってことはこの三人って結構実力あるんじゃ……?

 そもそも、ここに来るのもトシフが任務の報告の必要があるって言ったからだし。

 それらをハラモに伝えると、彼はかけていた眼鏡を外し、手を震えさせながら机に置いた。

 ふと三人を見ると、顔が見る見るうちに青ざめていった。

 察した。そして、未だ聴覚がないことに感謝したのだった。

 この人たち、私が何も聞こえないのをいいことに一体何を宣ったんだ……。


(まったく、所属するんじゃなかったら審査する必要もなかったのに、余計な手間をかけさせおって)


 あ、あの尋問みたいなのって審査だったんですか。そりゃ時間もかかるわな。もともと必要なかったけど。

 でも、一応審査してしまったから結果はとっておく、収納系スキルを獲得したら連合(ユニオン)冒険者組合(ギルド)なら私の名前を出せば審査結果を融通する、とのことだ。

 この審査をもう一度受けるのはめんどくさいので、情報を融通してもらえるのはありがたい。


(ただし、だ。それまでの間はできるだけ他の組合員と同行しているように。

 単独行動中に組合員を傷つけることがあったならば、最悪我々はキミを討伐対象とする。いいな?)

(え、討伐対象って、私そんな悪いことしました?)

(いや、キミにはそれだけの力がある。それは先ほどの審査で分かったから、釘を刺しておいたまでだ。

 討伐対象と言ってもな、キミと敵対したいわけではないのだよ。

 だが、我々組合や連合(ユニオン)としては非のない組合員を守る必要がある。それだけだ)


 まあ、下手なことをしない限りはそうはならないがな、と笑いながら告げられる。

 勝手に討伐対象にされた方としては全っ然笑い事じゃない。

 そもそも私ってそんな強くないし。いや、強くなければ傷つけることもないのか? どうなんだろう?


(まあ、そこの三人(三馬鹿共)は調子に乗りやすいが実力は確かだ。

 当面は彼らと一緒にいることを推奨する)


 そう言い終わると、ハラモは三人に何かを告げ、面会は終わりとなった。

 私は再びテタニの杖の先に取り付けられ、来た時と同じように魔法陣と階段で一階に戻る。


(すまんな、サーシャ。まさかあんなめんどくさい審査をする羽目になるとは思わなくてな)

(いいですよ。どっちにしろそのうち冒険者組合(ギルド)には入るつもりでしたし)

(いや、審査が長引いたのは俺たちが勝手に認定申請出したからなんだ、普通に組合員になるだけだったらあんなに時間はかからん)


 曰く、加入するときに組合員三人以上の推薦があり、審査に通れば推薦を出した人の中で最も低いランクの人以下のランクまでは飛び級ができるシステムなのだとか。

 別に私は一番下のランクからでも構わないのだけれども。


(いや、それが一定以上のランクの組合員証(ギルドカード)連合(ユニオン)と協定結んでる国や都市の査証代わりになるからな)

(それこそ魔導具(アーティファクト)に変装してればいいんじゃ?)

(組合長(ギルマス)も同じ事言ってたけど、お前もさらっととんでもない事言うのな)


 密入国って言ったって、どうせ野鳥とかもそうなんだからカビの私には関係ないでしょ。

 それにそういうことだったら言ってくれりゃ口裏合わせくらいしたのに。


(サーシャさん、勘違いされているようですが怒られたのは僕が魔導具(アーティファクト)の任務の事を組合員ではないあなたに喋ってしまったことについてです。

 あなたが冒険者組合(ギルド)遅かれとも加入する意思があるということで今回は軽い処分で済みましたが、本来はかなりまずい事なのですよ。

 別に推薦の件については組合長(ギルドマスター)もむしろ歓迎していましたから)

(そういうこった。お前が気に病むことじゃねえ)


 ……ん? ちょっと待って。

 組合員になるということは、一種の冒険者組合(ギルド)との契約がなされた状態だ。その中には当然守秘義務も含まれるだろう。

 でも、現状私は組合員でないから守秘義務がない。

 だとすると、討伐対象ってのは機密を漏らされないようにするためで、この三人と一緒にってのは一種の監視体制なのでは?

 とすると、審査結果を融通というのは一種の囲い込みなのではないだろうか?

 元よりそのうち冒険者組合(ギルド)には入るつもりだったから、囲い込まれることには異議はないし、知ってしまった秘密に関しても喋るつもりはない。

 けれども……、監視で縛られるのは、契約で縛られるのよりもかなり不愉快だ。

 とっとと収納系スキルを会得して組合員になろう、そう思ったのであった。

お知らせです。

書きダメが溜まってきてしまったので明後日23日の投稿は毎時投稿となります。

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