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Ⅰ-6:森を出て

 結局、私は連合(ユニオン)に入れるかはわからないけれども、彼らはどちらにせよ冒険者組合(ギルド)に行くということなので、とりあえずついていくことにした。

 私は体の大半を土の中にしまい、ひょっこりと顔を出す。カビの本能なのだろうか、やっぱり土の中の方が落ち着く。


(お前、土の中の方が落ち着くって、いったい何なんだ?)

(私? 魔導埃黴(マドウホコリカビ))

(……そうか。旅をしてるといろいろ変な奴とも出会うが、コミュニケーションができるカビなんてお前が初めてだ)

(あれ、意外と驚かないんだね)


 人間だってヤバい奴は常識じゃ測れないからな、と吐き捨てるトシフ。

 この世界では、その種族の平均から大きく離れた能力を持った個体が希によく生まれ、彼らの事を外れ値(イリーガル)と呼ぶとのこと。

 そんな外れ値(イリーガル)の中には、後に勇者と呼ばれた伝説の存在もいるらしい。


(ま、外れ値(イリーガル)っつっても、旅に出ようと思ったりする積極性がないせいで埋もれてるやつもいっぱいいるのさ。

 その分、積極的なお前は後に伝説になるかもしれないな)


 えー、私はそんな目立ちたくないんだけど。っていうか、とっとと妹見つけ出して元の世界に帰りたい。

 だけれども、そもそも意思疎通のできるカビ自体がまず珍しいから普通にやってりゃ目立つのは避けられないとまで言われてしまった。

 じゃあ、目立たないようにするにはどうすればいいのか。

 「意思疎通できる」「カビ」。この二つの要素が合わされば、そこに希少性が生まれる。

 しかし、意思疎通をしない、という選択肢は旅の目的からしてまず論外だ。

 となると、「カビ」であると認識させなければよい。

 まず考えられるのが擬態や変装だ。

 何に? 人型になるとしたら、体積が足りなさすぎる。

 それに、形だけなら≪中心教義(セントラルドグマ)≫を使えばなんとかなるけれど、人型のような縦長い形じゃすぐに崩れてしまうだろう。

 でも、それ以外でうまく変装できそうなものって何だ?

 ……そう言えば。この三人が初めて私を見た時、たしか魔導具(アーティファクト)だと思われていたんだっけ?


(ねえ、トシフさん。私がこのまま町に入るのと、魔導具(アーティファクト)に変装するのとどっちが目立たないと思う?)

(……お前相当目立ちたくないんだな)


 下手に目立つと情報収集めんどくさくなるからね。


(だったら、アタシの杖の先にくっついてればいいんじゃない? 最初の、錐体になってさ)

(確かに、杖の先の宝玉なら多少魔力も発しますし、問題ないかと思います)

(え、いいの? 私騙されてない?)

(いいのいいの、あなた面白そうだし)

(……お前らがそれでいいって言うなら止めはしないが、一応組合長(ギルマス)には報告させてもらうからな)


 ともかく、私はテタニの杖の先につけられた魔導具(アーティファクト)に扮して、冒険者組合(ギルド)へと向かうことになった。

 そして……、しばらく歩いていくと、急に開けた草原に出た。

 私は今、カチュアの森の外への第一歩を踏み出したのだ。


(サーシャちゃん、そろそろ街道に出るよ)


 テタニのその声に応じて、私は地上に飛び出し、≪中心教義(セントラルドグマ)≫で三角錐状になる。

 さっき気づいたことだけれど、この形になると、多少表面が乾いたとしてそこが水を通さなくなるから内側が乾かなくてすむ。

 これは意外な利点だった。その代わり、全く動けなくなるのだけれどもね。

 でも、テタニの杖の先に引っ付いているのなら移動に関しては全く問題ないのだ。


(サーシャ、あれが今俺たちが拠点としている、タオという町だ)


 街道の先に、うっすらと建物が並んでいるさまが視界に入ってくる。

 あれが、カチュアの森の玄関口たるタオの町だとのことだ。

 そういえば、この地域、いやこの世界の文化的なレベルはどのくらいなのだろうか。

 それも町を見れば自ずとわかってくるだろう。

 私は、この世界ではじめての町に心を躍らせながら、テタニの杖に揺られていった。

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