Ⅰ-5:冒険者組合
トシフとテタニが喧嘩をしている間、ずっとローレンスと話をしていた。
その最中、やっと地面に降ろしてもらえたので体を楽にしたら、彼はものすごく驚いていた。
うん、三角錐じゃなくてこの不定形なのが私の本来の姿なんだ。
(……まあ、ちょっと危なっかしいところもありますけど、自慢の仲間達ですよ)
(だ、れ、が、危なっかしいって?)
ふと後ろを見ると、いつの間にか喧嘩を終えたテタニとトシフが戻ってきていた。
(俺としては、一番軽率な行動してるのはローレンス、君だと思うんだがな)
(僕だって最低限一発耐えられる程度の敵にしか戦いは仕掛けませんよ……)
(一番防御力高い君を基準にするんじゃねえ! って何回俺言ったっけ?)
ローレンスがトシフに叱られている横で、テタニが話しかけてきた。
(ところでサーシャちゃん、さっき崖から落ちたって言ってたけど、いったい何しに行ってたの?)
(いや、私は元々上にいたんだ。崖の下に来たのは初めてだけど……)
(エルダー・カチュアの生まれなのね。じゃあ、どうして下へ降りようと?
カチュアの森の魔族って基本的に自分のテリトリーから出ないからさ、アタシ気になっちゃって)
へー、そうなのか。確かにミーシャも離れられないって言ってたけど。
(ちょっと世界を旅して周ろうと思ってね。この世界、知らないことだらけだし)
(ふーん、カチュアの森の生まれなのに変わってるのね、あなた)
変わってる、かぁ。
あそこで育ったわけじゃない……とはいえない気もするけど、少なくとも私は世界を歩く者だからねぇ。
常識が構成されたのは、前の世界の話だ。
(ところでテタニさん、連合、って何なんです?)
(あー、初めて出てきたって言ってたもんね。うん、教えたげる。
連合ってのはね、本当は世界冒険者組合連合会っていう名前なの。
長いからみんな連合って呼んでるけどねー)
テタニさん曰く、一定以上の規模の街には、必ず冒険者組合が存在するらしい。
冒険者組合というのは、簡単に言えば前の世界のハローワークと猟友会を足したような組織のことで、三人は各地を転々としながらギルドで依頼をこなしつつ生計を立てている、とのことだ。
そして、各冒険者組合同士が情報交換をはじめとした提携のために生まれた大きな組織が、冒険者組合連合会なのだという。
(その冒険者組合って、私でも入れますかね?)
(うーん、連合の冒険者組合なら、割と軽く入れるだろうけど。ねー、トシフ)
(いや、いきなり俺に振るなよ……
一応連合の冒険者組合なら、話ができて、名前のわかる奴なら建前上は姿かたちによらず門戸を開いてることにはなってる。
俺が総連じゃなくて連合を選んだのもそれが決め手だったからな。
でも、いくら連合に魔族がいるっつったって基本腕か触手がある奴ばっかで、お前みたいな不定形の奴を見たことはないなぁ……
俺達だって報告に行かなきゃいけないから案内してほしいって言うなら案内するが、お前……そもそも、文字書けるのか?)
文字……? 盲点だった。コミュニケーション自体は≪念話≫で事足りてしまうから、全く考えてなかったけど、もちろん前の世界で使ってた文字がこの世界で使えるとは限らない。
そもそも、≪念話≫が普通に通じてしまうのがおかしいのだ。
顔が一気に青ざめる。私の体のどこが顔なのかは、私自身もわかってないけど。
そう頭を抱えていると、ローレンスが念話さえできれば代筆してもらえると教えてくれた。
ただ、この体じゃ組合員証を持ち運べないんじゃないかな、とも言われた。
組合員証を短期間で何度も無くすと、除名されてしまうのだとか。かなしいなぁ……
私の旅は、前途多難だ。




