ネバネバ
「ほら温泉に入るわよ。ほんと情けない奴隷ね」
ルルーシカに続き、
タクは幻覚に関する違和感を抱きながら、
温泉につかろうとした。
決して狭くはない温泉。
水面は波打ち、緑色の水草が、
透明なお湯の向こう側に見えた。
足先がお湯に触れる。
体が冷えていたためか、
お湯の温もりがしみいり、
すごく気持ちが良かった。
肩までお湯につかると、ホッとため息が零れ出た。
「どんな効能があるんだろうな」
波の向きが変わるたび、
水草がタクの体を優しく撫でた。
最初はくすぐったかったそれも
次第に心地よくなり、
極上のマッサージを受けているかのように、
瞼が自然と閉じてしまう。
何度かコクリ、コクリとなり、
お湯に顔をパシャンとつけ、目を覚ました。
いっけね~、ウトウトしてしまった。
気持ち良すぎだろ。
「ルルとレーラは、何をしているんだ?」
ルル―シカは温泉から顔だけを出し、プカプカ浮かんでいた。
レーラは無表情に宙の一点をぼんやりと見つめていた。
「まあまあよね。あんたんとこのお風呂って・・・」
ルルーシカはホッとため息をこぼすかのように言う。
「でも、私のとこのはもっとすごいのよ。あんたが望むんだったら、今度来なさいよ。入らせてあげるわ。お風呂に入れてもらったお返しよ」
数秒の無反応の後、レーラはコクリと頷いた。
しばらくお湯に浸かり、石の天井に灯る松明を見つめていると、
レーラが湯船から出て、体を洗い始めた。
なぜかスクール水着を着ていた。
ルル―シカは天井の亀裂から流れ落ちている滝に打たれ、
修行僧の真似をしていた。
何やってんだよ。お前は。
レーラが体を洗い終えると、ルル―シカが体を洗うため、温泉を出た。
「ちょっと来なさいよ、あんた」
女王様がお呼びですよ。
へいへい。
タクもルルーシカに続き、温泉を出る。
水草が足に絡まり、つまずきそうになった。
「なんか用かよ」
「ほら、これで、私の体を洗いなさい」
タクはわかめに似た海藻を渡された。
「なんだ、これ?」
「つるつる昆布よ。これで洗うだけで、垢が綺麗に落ち、すべすべのお肌になるんだから」
ほんとかよとタクは思いながら、
つるつる昆布をルル―シカの背中にこすり付けた。
「あ、あ~ん、き、ぎもぢいいよお~~~」
ルルーシカはお子様には聞かせたくないような、
いやらしい声をあげる。
つやつや昆布をこすりつけたルルーシカの背中は、
泡であふれかえっていた。
ごしごしごし。
「ちょっと、あんた、もっと優しくこすりなさいよ。私、優しいほうが好きなの。刺激が少ないほうが好きなの!!」
タクは優しいほうが好きだと言うルルーシカの主張を無視して、より強くこすりつけた。
ごしごしごしごしごし。
「ちょ、ちょっと、刺激が強い、強すぎるって。ヤバイ、本当にヤバイことになっちゃう、おかしくなっちゃうって!!」
おかしくなりやがれ、と思いながら、
タクはつるつる昆布に日頃の怨念をのせ、ごしごしとこすりつけた。
「あ、あ、あ、あ、あは~~~~~~~~ん!!」
卑猥な喘ぎ声が浴室に木霊した。
「はあ、はあ、はあ・・・ちょ、ちょっと、あんた、やりすぎよ。ご主人様の要望をちゃんと聞きなさいよね。はあ、はあ、はあ」
「ほら、これ」
背中を洗い終えたので、タクはつやつや昆布をルル―シカに差し出した。
「な、何よ」
「俺に洗わせると、さっきみたいなことになるから、前は自分で洗えよな」
「は!? わけわからないこと言ってんじゃないわよ。確かに、背中のごしごしは刺激が強かったわよ。でもね、ルル様は強い刺激にも喜びがあるんだって知ってしまったのよ。新たな喜びを知ってしまったのよ、だから、前もしっかりとごしごししなさいよね」
ま、前もって・・・。
つ~か、変な喜びに目覚めてんじゃね~よ。
タクはビキニで包まれた小ぶりの胸を見た。
ゴクン。
それは、粗悪品であるにしても、
胸には変わりなかった。
それも、女の子の。
「な、なによ、私のボインを舐めるように見て、いやらしいわね」
なら、俺に前も洗ってくれと言うんじゃね~よ。
「なにか、嫌な予感がするわ。このまま、前を洗わせたら、あんたに、私の純潔が奪われるような気がしてならないわ」
ルルーシカはタクのブーメランパンツに視線をうつす。
すると、
目を大きく見開き、
口をあわわと震わせ、
頬を赤らめ、
ゆっくりと、俺のブーメランパンツから視線をそらした。
「俺がそんなことすわけないだろ」
「いえ、するわ。確実に・・・。
だって、
だってね、
あんたの敏感なところ、ギンギンのビンビンで、とってもヤバいことになっているもの」
タクは自分のブーメランパンツを見るも、
普段と何も変わりなかった。
つまり、
もっこりは大したことがなく、
平常状態だった。
つまり、通常サイズだった。
しかし、タクはふと思う。
そういえば、幻覚魔法で、俺の視界はいかれているんだっけ?
なら、ルルーシカの視界には、
ていうか、ルルーシカの顔の前には、
俺のアレが、
俺の視界に見えているものとは違う、脈打つアレが、
鬼の角のようにそそりたつ、暴走癖のあるアレが
はっきりと見えているってことなんじゃあ!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
タクは両手で股間を隠した。
しかし、時はすでに遅かった。
「まあ、あんたが私に欲情するのはしょうがないわよ。私、魅力的過ぎるから」
いやいや、ただの生理反応だ。
大抵の男は女の裸を見たら、反応してしまう。
好き嫌い関係なくな。
「よし!! 前を洗ってもらうのはやめるわ。洗っている最中に、ネバネバした変なモノを飛ばされたら、最悪だもの」
ルルーシカはタクからつるつる昆布を奪い取る。
「今回は、もう行ってよし。次回はもっといろいろしてもらうんだから、覚悟しておきなさい」
次回もあるんかよ。
それに、いろいろってなんだよ。




