ビチャビチャではなく、グシュグシュ?
シャツをめくりあげられたタクは、
ルルーシカに脇の下をさわさわされた。
「うわ、ぎゃは、ぎゃははは・・・、ちょ、ちょ、ちょっとやめてくれ、俺、無理だって、そこはマジで無理なんだって」
タクは盛大は体を捻らせながら、両足をばたつかせ、大笑いした。
脇の下を手のひらで上下に撫でることが、ルルーシカの言っていたグシュグシュの刑なのかと思った。
これなら、くすぐりの刑といえばよかったのでは、とも思った。
しかし、グシュグシュの刑はくすぐりの刑とは違った。
マジで、グシュグシュだった。
「いってええええええええ!!! いたい!! イタイ!! 痛すぎる!!
皮膚がさける。ちぎれてしまうって!!」
ルルーシカはタクの脇の下の皮膚をゆっくりと、力をこめてこすっていた。
力をこめることで、手のひらとわきの下の皮膚の間の摩擦が強くなり、
熱を持ち、ひりひりと、皮膚が割けてしまうかのような激痛が、タクの脳天を突き抜ける。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「ほらほら、私の秘密を早く言いなさいよ。知らない振りをしているんだってわかっているんだからね」
ルルーシカの手のひらの圧迫を弱めると、程よい刺激になる。
それが、絶妙な感じでくすぐったい。
「うは、ぎゃは、ぎゃははは、ほ、ほんとに知らないんだよ。ぎゃはははは」
「騙されないわよ。ほらほらほら」
ルルーシカは楽しそうに手のひらの圧迫感を調節する。
Sっ気の強い女王様がタクの反応を楽しんでいるかのようだ。
「ほんとに知らないんだって、ぎゃはははははははは・・・・・・うっ、いってええええええええええ!!! いたい!! 痛すぎる!! 死ぬ・・・・・・、え? ぎゃはっ、ぎゃははははは・・・・・・お、おい!! いい加減にしろよ!!」
タクはルルーシカの両手を振り払い、怒鳴りつけた。
「どうしたの? タク」
電源が落ちた人形のように、笑うことをやめたルルーシカは、悲しそうな顔をしている。
先ほどまでの、無邪気な子供のような笑顔は消え、口元を結び、目は心なしか潤んでいた。
タクは立ち上がる。
「ほんとに知らないんだよ!! 何もわからないんだ!! 自分自身のことでさえも・・・」
「嘘よ!!」
ルルーシカは、首を振る。
「本当だって!!」
「嘘よ、嘘よ、嘘よ、嘘よ!!」
ルルーシカはタクをキッと睨んでいた。
床に女の子座りをし、両こぶしを握り、
タクを見上げるルルーシカの攻撃的な目に、タクは肩を落とした。
もう、この女には付き合いきれん。
そもそも、俺がここにいる義務はないんだからな。
脇のくすぐったさと痛みはまだ残っていった。
タクは部屋を出ていこうと、足を踏み出す。
が、片足には、
タクが望んでもいないのに装備している、ジャラジャラしたあの装飾品が装着されていた。
鼻血がすでに止まっていたので、
タクはすっかりあの装飾品のことを忘れてしまっていたのだ。