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ミアの香り

 タクはこいつらどうしたんだと思っただけで、

 お色気が来ればいつもどうりのクラスの雰囲気になるだろうと軽い気持ちでいた。


 ルル―シカが教室を出て行ったのち、

 雲が濃くなったせいか、教室はさらに暗くなった。


 雷でもくるのかな。


 空には、真っ黒な雲が覆っていた。

 そしておかしなことに、雲のある境界で、

 こちら岸とあちら岸を分ける川のような漆黒の闇が、

 雲を真っ二つにわけていた。 


 なんだ?

 あの亀裂。


「タク、何を見ているの?」


 耳元に妖艶な、粘りつく声が聞こえてきた。

 ミアの声だった。

 いつの間にか、横に立っていた。


「ミア?」

「ふふふ、どうしたの?驚いたような顔をして・・・私たち、付き合っているんでしょ?」


 ミアは口元に手を当て、笑った。

 ミアの顔は興奮しているのか、

 薄らと桃色に染まっていた。


「・・・いつ、学校に来たんだ?」

「ふふふ、何を言ってるの?私はさっきからず~といたし、あなたをず~と見つめていたのよ」

 

 何を言ってるんだ?

 教室にはずっといなかったじゃないか?

 ずっと俺を見つめていた?

 いったい、どこから。


「けど、さっきまでいなかったじゃないか」

「そう、なんだ。でも、私はず~とあなたを見つめていたのよ。ず~と、ず~~~とね、ふふふ」


 雷の光が、教室を黄色く染める。


「ねえ、それって迷惑なこと?私たち、付き合ってるんだから、それって普通のことよね」

「・・・ごめん。俺、記憶がなくって、よくわからないんだ。昔、ミアと本当に付き合っていたのかどうかも・・・」


 タクはミアに素直な気持ちを伝えた。


「かわいい子ね」


 ミアはタクを抱きしめた。

 制服に包まれた、ミアの豊かな胸がタクの顔を圧迫する。

 頭がとろけてしまいそうなほど、甘く魅惑的な香りがした。


「いいのよ。そんなこと。どうでもいいのよ」ミアはタクの頭を優しく撫でる。「ほんとにどうでもいいの。だってそうでしょ。記憶にどれだけの価値があるというの。今この瞬間や、この先の未来の方が大切じゃないの」


 ミアの胸からかおる香りは、花の香りだった。


 濃厚で、甘ったるくて、

 どこかで、嗅いだことがあるような・・・。

 そうか、この香りはルルが毎日飲んでいたホワイトジュースと同じ、

 ミルクの香りだ。


 タクは息を吸い込むたび、

 頭をハンマーで叩かれたかのように、グラグラと揺れた。


「ねえ、タク?」

「え、何?」


 タクは頭がボーとし、

 すでに、深くものを考えられなかった。


「あなたに見せたいモノがあるの。すごくすごく素晴らしいモノなのよ」

「スバラシイモノ・・・それって、なんだい?」

「さあ、一緒に行きましょ」


 ミアはタクの手を引っ張った。

 タクは椅子から立ち上がると、足がもつれ、ミアに抱きかかえられた。

 目の前にはミアのスカート。

 タクは、我慢できなくなり、スカートに顔をうずめた。


 ミアの太もも、何て柔らかいんだろう。

 ミアのスカート、なんて肌触りがいいんだろう。

 ミアのスカートの奥からかおる香り、

 なんて、ウットリするほど香ばしいんだろう。


「タク、いい子ね。でも、もう少し我慢してちょうだい。あとで、もっともっと楽しいことをしましょ」


 ミアはタクの耳にフッと息を吹きかけるように囁いた。


 楽しいことって、

 もっと、楽しいことって、

 どんなことだろう。


 タクはミアは連れられ、教室を出た。


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