グミグミの物体
タクは、深夜に目を覚ました。
窓からは射し込む月明かりが、床を照らしていた。
ベッドから起き上がり、ルル―シカの部屋に入る。
寝起きのせいか、頭がぼんやりとした。
ルルーシカの部屋に入ると、
まず目に飛び込んできたのは、ルルーシカのベッドだった。
ルルーシカは大の字で寝ている。
体には掛布団をかけて。
ん?
掛布団の上に、何か、
波打つ何かがいるような。
タクは目を擦った。
その何かは、ルルーシカの体をはい、ルルーシカの脚から胴体へと
体を伸ばしている。
大きさは、数十センチ。
巨大なナメクジのようにも見えなくもなかった。
「あん?なんだ?」
月明かりがルルーシカのベッドを照らし出す。
ルルーシカの横顔を、ルルーシカの体を、
そして、その何かを。
ギョロリ。
タクは、ルルーシカのからだの上にいる、漆黒の塊に睨まれた。
ぶよぶよした波打つ体の中心には、巨大な目があり、
血管が浮き出た、肉食獣特有の細長い瞳が、タクを見つめている。
「あ、あ、あ、あ、あ、」
なんなんだ?
この、気持ち悪い物体は。
漆黒の物体は、瞼を閉じる。
すると、体はさらに波打ち、幾つもの盛り上がりが、
体に浮きあがる。
瞬間、盛り上がりがギュンと伸び、一斉にタクに襲い掛かった。
それは、触手のようだった。
「あ、うぐぁ!!」
反射的に体が動いた。というか、尻餅をついただけだが。
避けた触手は、タクの部屋のドアを貫通していた。
つまり避けなければ、串刺しになっていたということ。
グミ状の物体が、ヤバイものであることは明らかだった。
なんなんだよ。
なんで、突然攻撃をしてくるんだよ。
グミ状の物体はルルーシカの体を離れ、
ズルズルと、ベッドを降り、タクに近づいてくる。
おいおい、勘弁しろよ。
俺じゃなく、ルルを狙えよ。
俺が何をしたってんだ。
タクは、後ずさりし、自分の部屋に入った。
物体も、タクに続き、タクの部屋に入ってくる。
体の半分ほどある目はタクを見据えている。
再び、瞼を閉じ、今度は、宙に浮かび、
キュッと収縮した。
直後――物体は膜のように平たく広がり、
今度は、体全体から、タクに向かって触手を伸ばしてきた。
数は一度目の数十倍。
とても避けられない。
「ああああああああああああああああああああああ!!」
タクは両手を使い、防ごうとした。
が、ガギッ!!
吹き飛ばされた。
後頭部を壁にぶつけ、グラリ視界が揺れる。
自分の体を見ると、
串刺しにされ、血まみれになっている――ということはなかった。
逆に、自分へと攻撃をあたえたグミ状の物体が、
青白い炎を上げて燃えている光景が、
確認できた。
やばい、俺、死ぬのかな。
意識を失う瞬間、ノイズがかった視界の中、
グミ状の物体が燃え尽きる姿を確認したような気がした。




