グラウンド
タクとルルーシカはグラウンドに足を踏み入れた。
山の稜線上方には、溶けてしまいそうなほど真っ赤な太陽が輝いており、
空に薄らと広がった雲を朱色に染めている。
グラウンドには、フェンスと電信棒の影が伸びており、
どこからか、ヒグラシの鳴き声が聞こえてくる。
「誰もいないんだな」
周囲を見回しても、グラウンドにはタクとルルーシカの二人しかいない。
「作戦ね。そういえば、何かの童話で読んだ事があるわ。決闘にわざと遅れ、相手を苛立たせる卑怯な戦法を使ったことで、国一の剣士になったいうくだらない童話を。ミアはそれをまねようとしているのね」
どこかで、聞いた事がある話だな、とタクは思った。
カチャリと音がし、振り向くと、
引き戸が勝手に閉まった音だった。
すると、
スッとその場所に何もなかったかのように、
引き戸が消えてゆく。
あ~あ、どうやって帰るのやら。
俺はいつ帰れるか、不安でしょうがね~よ。
マジでねみ~し。
今日の俺、寝すぎだよな。
「さて、グラウンドの状態はどうなのか、確認しようかしら。まさかとは思うけど、卑怯者なミアが、事前にこのルル様に恐れをなして、魔法トラップを仕掛けていないとも考えられなくないしね」
魔法トラップね~と思いながら、
タクはルルーシカの後ろをついてゆく。
「ちょっと何よ。金魚の糞みたいに私についてきて。あんたは決闘をしないんだから、ふちでご主人様の私の応援をしていなさいよね。邪魔なのよ。集中力を高めるのに」
なんだそりゃ、とタクは思いながらも、
断る理由もないタクは、
グラウンドのすみに生えているかしの木の根元で、寝転んだ。
遠くで、ポツリと一人立ちつくしているルルーシカを見ると、
砂漠に取り残された旅人のようだな、となんとなく思った。
「はぁ~あ、ミアの奴遅いよな」
腕枕をし、空を見上げると、
飛行機が、後方に飛行機雲を伸ばしながら、
横切ってゆく光景が目に入ってきた。
ひぐらしの鳴き声が心を揺する。
何故か、その鳴き声に混じり、波の音が聞こえて来た。
おそらく、とてつもなく、心地よい時間だったのだろう。
そのせいで、タクは知らぬ間にうつらうつらと、眠ってしまっていた。




