ここは、どこだ?
四限目は実践魔法だった。
授業が行われる場所は教室ではなく校庭だった。
芝が生い茂り、ヘッドリッジ魔法学園の空へと伸びる塔の影が、
タクの足元にまで伸びている。
「それじゃあ、いくわよ~」
とんがり帽子に白衣という身なりの女性教師が、宙に紋様を描く。
呪文をブツブツと唱えながら、中心から放射する無数の矢印の紋様が地面に展開される。
その大きさは、ゆうに数十メートル。クラスメイト全員がその紋様内に入っていた。
「ほら、『ぺっぺろぺ~ろ』」
その意味不明な言葉が魔法を発動する言葉だったのだろう。
地面から吹き上がる光が瞬いた次の瞬間には、
校庭ではなく、違う場所にいた。
ここは、どこだ?
さっきまで、校庭にいたはずなのに。
眩しいほどの太陽は空高く輝いていた。
それを、さえぎる雲のように、宙浮かぶ島が、一つ、二つ、三つとながれてゆく。
空の色はエメラルドグリーン。
空なのに、美しい海を見ているような錯覚をタクはおぼえた。
「おいおい、すっげよ。どこまで森が広がっているんだ?」
眼下には、濃緑色の森がどこまでも広がっていた。
蛇行する川が森の隙間からちらりちらりと見える。
「ここは、どこなんだ?」
「おそらく、メゾヘッソ魔法国立公園内にある『深淵の森』だと思う」
「メゾヘッソ魔法国立公園?深淵の森?いやいや、さっきまで校庭にいたし」
「とんがり帽子先生が、空間移動魔法を使ったのよ」
「空間移動魔法?ああ、そういうことね」
つまり、俺たちは、なんとか国立公園内の『深淵の森』に飛んだというわけだ。
ん?飛んだでいいのか?まあいいか。
「さて、みなさん」とんがり帽子先生は両手をパンパンと叩く。「前回の授業で無効化魔法『エルドゾーブ』を習いましたよね。今回はその実践編といきましょうか。そうね。誰にお手本をしてもらおうかしら。前に出てやりたい人いない?」
すぐさま、注目を浴びたがっているバカが手を上げた。
「とんがり帽子先生、僕、僕、僕、僕やるよ」
もちろん、ピエロだった。
「また、君か。毎回、君ばかりだとね~」
とんがり帽子先生は他の生徒が手をあげるのをしばらく待ったが、
誰もあげないので、仕方がなくピエロを当てた。
「じゃあ、もう一人、誰かいない?」
しばらくの間、誰も手を上げなかった。
ルルーシカを見ると、腕を組んだまま手をあげる気配はない。
自分で注目を浴びることが好きだと言っていたのに、
なんで、手をあげないんだ。
もしかして、結構、地雷な授業なのか?
その時、一人の生徒がゆっくりと手を上げた。
ミアだった。




