お姫様の日
タクが目を覚ましたのは、昼だった。
ルル―シカは不満げな顔で、タクの隣に座っている。
机の上には、ハンバーガーが置かれていた。
それも5個も。
いっけね。寝すぎちまった。
なんだよ。もう昼かよ。
というか、俺、何時間寝てたんだよ。
「ルル・・・今日はハンバーガー五個か。すいぶんと食欲旺盛なんだな」
「はあ?五個も食べないわよ。ほら、一個、あんたにあげるわ。どうせ何も、買ってきてないんでしょ。冬眠中の極楽オラウータンみたいに死んだように寝すぎよ。股間を蹴り上げても起きなかったんだから」
どんな、起こし方をしてんだよ。
股間を蹴りあげられても、起きないなんて、
いや、蹴りあげられた痛みで、気絶していたんじゃないのか?
「はい、これ」
タクはルルーシカからハンバーガを受け取った。
「おお、悪いな」
股間のことはともかく、
ごくまれに、優しいところもあるんだな、とタクは思った。
ムシャムシャムシャ。
マスタードがピリッと効いた、
肉汁したたるおいしいハンバーガーだった。
「これ、うまいじゃん!」
「当然よ。このルル様が、数秒もかけてじっくりと選んであげたハンバーガなんだからね」
「へいへい」
たった、数秒かよ。
適当に自販機のボタンを押しただけじゃね~かよ。
タクがハンバーガーを食べ終えると、
ルルーシカは三個目のハンバーガーの包み紙をめくっていた。
早食いで、よく食べるわ。
ちょっとは噛めよ。
ハンバーガを飲み物かなんかと勘違いしてんじゃね~のか?
「何よ。欲情した雄みたいに下心丸出しの目で、私を見つめて」
「いや、そんな目で見てないし・・・」
「なら、何よ。気持ち悪いわね」
ルルーシカは一口でハンバーガーの半分をたいあげる。
本当に幸せそうな顔で口を動かしている。
そういえばなんかこいつに訊こうと思っていたんだよな?
何だったけな~・・・ああ~あれか。
「なあ、そう言えば、かなえさんって今日は休み?」
「ええ、そうなんじゃない。モグモグ・・・。心配なの?」
「うん、まあ・・・ちょっとはな」
ルル―シカはしばらく無言でハンバーガーを食べる。
心なしかペースが遅くなった気がした。
「なあ、お前さ~、昨日、かなえさんの調子が悪いのは、あの日だからって言っていたけれど、あの日ってどんな日なんだよ」
「ん!!ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・な、何よ、急に、私、昨日、そんなこと言った?」
「ああ、はっきりと言っていた。で、どんな日なんだよ」
ルルーシカはタクから顔をそむける。
心なしか、頬が赤く染まっていた。
「な、何よ。そんなこと、どうでもいいじゃない」
「だけどさ・・・」
「もう、何よ、このド変態!!少しは気を利かしなさいよ。それにかなえは、そんな小さなこと・・・」
と言ったところで、ルル―シカは言葉を切る。
悔しそうに下唇を少しだけ噛んでいた。
「小さなこと?」
「もう、うるさい!うるさい!うるさい!もう、お姫様の日ってことでいいわよ!以上!」
ルル―シカは立ち上がり、
プンプンしながら自分の席に戻っていた。
ルル―シカの後ろ姿はこれ以上このことについて訊いてきたら、
ぶっ殺す!!と言っているようにタクには思えた。
もちろん、ルル―シカがどこから持ってきたかわからない椅子と、ゴミはそのままだった。




