おっとり少女――かなえ
三限が終わり、ルルーシカがタクに声をかけてきた。
隣には、前の放課、ルルーシカと話していた女の子が立っていた。
その女の子は心なしか頬を赤らめ、俯いていた。
髪は艶やかな紫、長い横髪が肩の上を流れ落ちていた。
第一印象は、ルルーシカの友達かと思えるほどに、おとなしそうだった。
両手をスカートの前で握り絞め、息を止めているのか、体を強張らせていた
「ねえ、あんた、お昼どうするのよ」
「お昼?・・・ああ」
タクは黒板上部に設置された時計を見ると、12時を過ぎていた。
ルルーシカの部屋にあったゴキブリが描かれた時計とは違い、
その時計には短針も長針も備え付けられていた。
ただ、時計の形は熱で溶かしたかのようにひしゃげていた。
ああ、もう飯の時間か・・・。
あんまり、腹が減っていあないんだよな俺。
朝飯を食べていないはずだけど。
「ほら、かなえ、この通り、また、ぶっ壊れているのよ」
ルルーシカの隣にたつ女子生徒は、《かなえ》という名らしい。
「え?・・・あ、うん・・・・・・寂しいよね」
かなえは、切りそろえられた前髪から、わずかに覗く眉を寄せ、
まぶたを少しばかり伏せた。
瞳は、悲しげに震えていた。
寂しい?
ルルーシカの俺がぶっ壊れている発言に、寂しい?
「そうかしら・・・めんどくさいだけよ」
ルルーシカは腰に手を置きながら、ため息を大きくつく。
何がめんどくさいんじゃ!!
「・・・・・・」
かなえはタクをじっと見つめていた。
その視線はまるで、タクの奥深くにある何かを探し求めているかのようだった。
「どうしたの? かなえ・・・」
「いえ、何でもないの・・・あ、お昼どうしよっか?」
かなえは小さく首を振り、笑顔を作る。
「自販機に買いに行きましょ・・・ほら、かなえの美しい顔に見とれていないで、あんたも行くわよ」
「あ、ああ」
タクはルルーシカとかなえの後について、教室を出た。
弁当は一階にある粗大ゴミ置き場で売られていた。




