あなたは、また変わってしまったのね
前回のあらすじ:俺はここを出る!
ドアノブを握った瞬間、タクの耳にとんでもない轟音が鳴り響いた。
その音は雷鳴に似ていた。
体がコンセントを触った時のように震え、
「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
とタクは奇声を発する。
ヘリウムガスを通したときのような、高い声だった。
しばらくすると、タクの体からはプスプスと黒い煙が上がり、
立ったまま硬直していたタクは、真後ろに白目をむきながら倒れた。
ルルーシカはタクのそばに歩み寄る。
足元には、炭のように真っ黒なタク。
「あたしからは、逃げることはできないのよ」
ルルーシカは、両手両足を伸ばし、仰向けに倒れ、
巨大なゴキブリの死体のように見えなくもないタクに語り掛けるも、反応はない。
「・・・・・・」
ルルーシカはしゃがみ込み、タクの体に触れた。
呪文をブツブツと唱え、指先でタクの体に若葉に似た紋様を描いた。
ルルーシカの髪はなびき、体は緑色の光に包まれる。
「ヒールライト」
ルルーシカを手を通して、タクの体も緑色の光に包まれる。
タクの真っ黒焦げだった肌は、本来あるべき色へと戻ってゆく。
「ほんとに、また変わってしまったのね。少しだけお互い理解しあえるようになったばかりなのに」ルルーシカの声は震えていた。「喧嘩ばかりだったけど・・・残念ね・・・私、少し寂しい」
ルルーシカは怪我を治癒したタクに向かってポソリと呟く。
しかし、
ドアノブに仕掛けられていた電撃魔法をもろに受けたタクは、
意識をうしなったまま、すやすやと眠っていた。