誰がために
とうとうディーヴェに攻めてこられた、けど?
バシュ
ドガガガガ
ボッ
ブバッ
ガラガラガラガラ
ドスン
キュイイイイイイイイン
先程から、激しい衝撃音が繰り返される。
聞こえる人の声は、雄叫びか絶叫か。
その隙間に、誰かの呻き声が響く。
バルバロイ領地のシスティア国境付近で、とうとう隣国ディーヴェから潜入しようと躍起になって居るのだが、全くうまく行かない。
関所門の手前に配置された、立派過ぎるゴーレムが敵兵を容赦なく凪払っていた。
では、大きなゴーレムの足元や死角を通れば!
そう思った隙間には。
バルバロイの私兵と国の国境警備兵が連携を組み。
露払いをしている。
ここ数年で張り巡らされた国境の、結界と魔法防御の掛かった壁は高く。
下から上に行けば行く程反り返ったシノビガエシになっていて。
最後は有糸鉄線になっていた。
更に壁の上方は通路になっており。
弓、投石、手榴弾部隊が構えており。
例え登れても、無傷では居られなかった。
蹂躙する筈が、逆に蹂躙された形になる。
防衛だけとは言え、過剰防衛な気もするが。
こちらが蹂躙されれば、力無き民や女子供の末路はこれ以上だろうから、アレクは妥協した。
ぶっちゃけ、ゴーレムが凄すぎて。
被害あちらが被る前に、庶民混じりの下級兵逃げていったんですけどね。
貴族はプライドで、大半死んだり生きたりする種族だけれども。
庶民はプライドで死ぬよりも、明日のご飯や生活。
そして、大切な家族の元に帰るためなら何でもしてしまうのだ。
下級兵を切り崩すのはそれ程難しくはない。
まず、戦う力も鍛えられておらず。
戦う為の気概は薄い。
そして、出来れば早く戦況から抜けたい者が多いのも特徴だ。
ディーヴェは特に民を蔑ろにしがちなので。
厄介なあの国から、酷い目に遭っている家族ごと亡命を斡旋し、移民専用の町を作ったり。
有る程度の食糧金銭を握らせれば転び易い。
無論、スパイも混ざるが、そこはシノビ部隊に任せて鎮圧させた。
残った世間知らずの貴族兵も統率がとれておらず。
1日しないでディーヴェ兵は散り散りに祖国へと逃げ帰っていった。
そして今、目の前に拘束魔法と魔法封じの腕輪とロープで簀巻きにされた。
美貌のシャアルクス宰相が、青ざめながらちょっと恥辱を感じてか。
恐怖感からか、凄く先程からプルプルしている。
芋虫みたいです。
イケメンがこれとか、情け無くもちょっと面白いとか思ったのは秘密だ。
「我が国への宣戦布告、申し開きは?」
「ふん。」
それっぽく聞いたが、鼻息荒く答えない。
「やれやれ、天才的頭脳と唱われたシャアルクス殿は、こんなに分かりやすいお馬鹿さんとはね。」
切り口を変え煽る。
すると顔色を真っ赤に染めるも返事はない。
「我がバルバロイ領地の話は、わざとある程度情報流していた。
そんな程度の事も読めませんか?」
「わざと、だと?」
反応に満足して俺は微笑する。
「だって、下級兵の統率。
何故とれなかったか?
とか。
予想より守備陣が強い。
とか。
そちらの実力者ががっつり減った。
なんて、わかりやすくしていましたが?
まさか気付かれなかったとはね。」
確かに分かりやすい手法だが。
かなりの時間をかけた。
真綿を締めるようにじわじわと。
だから、彼らが気づいた時、全ては手遅れだっただろう。
ディーヴェの末端に致までの腐敗。
それを憂う者は、蜘蛛の巣のような場所から逃げ出したかった。
アレクは、そんな人達に、逃げ場所を提供したに過ぎない。
最初は娘の未来の為に始めた、どう考えても良くある偽善だ。
だが、長い年月を経て気持ちが変わった。
誰だって、幸せになる資格を持っていて。
俺はそのチャンスを作り出せる立場にいる。
俺の偽善が本物になれば、もっといいな。
位に変化したのだ。
そこに転がる腐敗の原因の一角は、理解できずに転がっていた。
何か喚くわけでもなく、ただ呆けてこちらを眺めるばかりだ。
そのまま地下牢に連行するが。
抵抗もなく、ズルズルと引きずられていった。
彼は宣戦布告の責任で処刑されたその時まで。
自身が何を失敗したのか分からず。
茫然自失だったようだ。
こうして、一番厄介なイベントを片付け終えた次の週。
イリシア嬢とフィン殿が、正式に婚約した報告を受けて、俺は一抹の寂しさと共に安堵した。
「くははっ、俺はフラレタノカナ?
まあいいや、お幸せに二人共。」
イリシア嬢の事は嫌いではないし。
むしろ長いこと想われていた。
気付かないうちに絆され、愛着心が沸いたのだろうか?
だが、あれだけ袖にすればフラレもしよう。
それでも、こんなおじさんよりは、同年代の男の方が良いだろうと結論付け。
ほんのささやかな嫉妬心は目をつむった。
イリシアが、もしも全てのゲームイベントが終わるまで耐えられたら。
アレクが彼女を受け入れていたかも知れなかった、など、イリシアが知る由もないことだった。
ディーヴェのシャアルクス宰相さんは、扱いが雑なのは仕様です。
さて、イリシアとフィンの婚約への、アレクの心情ですが。
もう少し押せばイリシアたんはアレクをゲットしていたかも?
でも、やはり共有時間の多さで若者に負けました。
つーか、どちらも前世女性なので、イリシアたん百合なのか?疑惑が出たとか出ないとか。
では又。




