性別、フィン君 ①
フィン君のターン
その日、フィン・リ・ジョースター。
伯爵家の長男は、自分の気持が良く分からなくなった。
ただ、分かって居るのは。
イリシア嬢が、誰かに馴れ馴れしく触れられる事が、何だかとてもイライラしたんだ。
例えば、彼女が好意を寄せて居るアレク殿でも、だ。
彼女の柔らかそうな唇で、綺麗な声でアレク殿を語る時、とても幸せそうで。
それを眺めるのも、あの声を聞く事も、僕には楽しみだったはすなのに。
アレク殿に相手にされて居ないと嘆く相手は僕だけだった。
アリーナ嬢とカノープスは、二人の世界に入るし、アレクの味方だから。
当てになら無いとイリシア嬢は言う。
だから、いつも僕だけを頼るイリシア嬢に、無意識心惹かれて居たのかもしれ無い。
彼女が本当に頼りたいのは僕では無く、アレク殿な事に、無意識に気づかないフリをしていた。
だって、前世の女の子だった頃の記憶が、余りにも強すぎてさ。
まるで女の子みたいに、女の子の話を聞いていたつもりだったんだ。
その日、バルバロイの屋形で、タランティーノ皇太子が訪れて居た。
彼は学院でも、独特な雰囲気だが。
アルドノアスとは別のベクトルで女性を口説くのだ。
アレク殿はゴーレムロボのメンテナンスに、アリーナ嬢とカノープス殿はお茶の準備で、応接室には、僕と皇太子とイリシア嬢が残された。
「イリシア嬢、お久しぶりですね。
数年前の、イスピニアの城での晩餐会以来でしょうか?」
アレク殿位の長身の、パッと見優しげだが、何処か気障な仕草が良く似合う。
「え?あぁ、そんなにたちましたか。
学院に入る直前でしたから。
あの頃慌ただしかったもので、少し前位な気分で居ましたの。
お久しぶりですわ。
ふふっ、懐かしいですわね。」
するっとイリシアの側に近づき、その手を捉えると、手の甲に口付けた。
さりげなく自然な仕草だ。
だが、その後がいただけ無い。
腰を抱く様に、イリシア嬢を引き寄せると、耳元に囁いた。
「その美しい姿を、私はもっと近くで見て居たいな。
そうだ、君がもっと側に居られる様に、婚約者になってくれたら嬉しいのだけれど?」
イリシア嬢は真っ赤になって狼狽えた。
「え?あ、あの、何をいきなり…ひゃあん、はうぅ、や、やめて下さいまし。」
そのまま、彼女の耳に口付けたものだから、イリシア嬢が、彼を引き剥がそうと必死だ。
軽くタランティーノ皇太子の手が緩んだタイミングで、僕はイリシア嬢の逆の腕を引っ張って、背中に隠した。
この男、僕が居るのにイリシア嬢に手を出した。
それだけで、僕は頭に血が昇って何か口走ったけれど良く覚えてい無い。
ただ、アレク殿が来た時のイリシア嬢の笑顔が、頭が冷えさせて、胸に焼き付いて離れなかった。
ああ、まさか。
僕はイリシア嬢に、いつの間にか恋して居たのだろうか?
まさか、そんな。
タランティーノ皇太子は、イリシア嬢をからかっただけなようだが、身分的には問題ない組み合わせだ。
少し、頭を冷やそう。
僕は少しイリシア嬢と距離を取る事にした。
再び、図書室に入り浸り、アリーナ達との予定をキャンセルした。
自分がどうしたいのか、全然分からない。
確かに前世の女の子だった僕の記憶と、これまで育った男の僕はどちらも僕で。
イリシア嬢の側に居るのに、友達で居たいのか、恋人になりたいのか。
イリシア嬢が、誰かに触れられるのは嫌だ。
誰か特別な笑顔を向けるのも苦しい。
でも、自分で触れたいかと言われれば、良く分からない。
分からない事だらけで、途方にくれて居た。
少しだけ、イリシアに傾き始めたフィン君の話です。
前世含めて淡い初恋になりかけ?
な感じなので、ガツガツしてません。
でも、可愛い嫉妬はしちゃう。
又気が向いたら続き書きますね




