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第1話 奨学金

読まれる方によっては、適切でない表現が含まれる可能性がありますが、作者の状況を鑑み、原文の通りの表現といたしました。


 俺は元の世界でも多くの若者を悩ませていた、悪魔の借金について思い出した。元の世界では大学進学率が男子 80%、女子70%に達し、どんなアホでもガイジでも、名前を書けば何らかの大学に進学することができた。サステナブルコミュニケーションコンプライアンス大学、ラーメン大学、就職予備大学、大学大学などの有象無象の私立大学が林立し、駅前の進学塾のビルに出張校を展開するものもあった。親は我が子を少しでも良い大学に入れようと、塾だの予備校だのに喜んで金を注ぎ込んだ。しかしながら、さらに学費、特に私立大学の学費を負担するということは、到底不可能なことだった。そこで、奨学金だ。学問を奨めるという素晴らしい名目のもと、学生に金を貸し付け、借金持ちという傷物にするのだ。十年二十年三十年先まで暗い気分にさせ、結婚出産育児その他諸々のライフイベントを諦めさせ、少子高齢化を飛躍的に促進し、無気力に苛まされる若者を、勤労と納税と介護に従事させるのだ。俺も奨学金の利用者の一人だった。


 俺が簡単に奨学金の仕組みについて説明すると、酒場の連中がざわつきはじめる。羽や鱗や獣の耳や爬虫類の尻尾やらが生えた、奇怪な者たちだ。

「そんな金、誰が借りるっていうんだ?」「借りた以上のものを返す、ってどういう仕組みだぁ?オイラわかんねーよ!」「そもそもなんで借金までして勉強するにゃ?」


 この世界の、この村の住人はどこか牧歌的というか、陽気というか呑気というか、世間知らずというか、悪意がないというか、平和ボケしているというかノータリンなところがある。特定の呪文を唱えると発行する円陣が浮かび上がりさまざまなものを召喚したりレーザー光線を撃ったり撃たれたり円陣が盾としての機能を持つことや、半透明の翼が生えた手のひらサイズの人間などの生物がいることについてはなんとも思わないのだろうか。


「ん?利息…つまり’’貸してあげた’’ことに対するお礼を上乗せした金額で返してもらう、というわけだけだが?」俺は呆れて言った。

 納得する者、しない者。一人の弓使いが静かに酒を飲みながら聞き耳を立てていたことに、俺は気づかなかった。


「…(今年18になるうちのも、魔法科アカデミーを目指して日々勉強している。村の学校でも一番の成績だ。しかしおれにはあの子を魔法科アカデミーに入学させてやるための費用なんてとうてい用意できない。)」

「…(だが、もしも金を借りることができれば、あの子を魔法科アカデミーに入学させ、卒業後がまた村に戻ってきてもらい、高い学費を払って身につけた専門性と責任感で立派な職についてもらい、この地域や俺たちの一族のために働いてもらうということもできる、というのか…?)」


「り、りそく…?聞いたことないわよそんな言葉!」

 気の強そうな女剣士がキャンキャンと喚く。現実世界におけるイキった女子大学生が派手髪と称して3回ブリーチ後染めるような、派手で下品なピンク色の髪をポニーテールにしている。防具はビキニのような形で、何を守ろうとしているのかわからない。


「すぐに返すならばわずかな少額の礼でよいだろう。だが、そうでないならば、借りた者の元で子供のようにすくすくと育つ…やがて元本をも凌駕するまでにな!そうだな…この分は、"利子"または"利息"と呼んでも良いだろう。」


ククク…"息は利の如し"と先人はよく言ったものだ。息子という存在は多くのメリットをもたらすという意味だ。まあ、皮肉にも事態はてんで逆さまだがな。避妊具もなしに性行為を繰り返していれば子供ができるのと同じように、利益がまるで子どものように増えていくのだ。息、というのは当然優れた性別であるところの男児に限る。あっ、子を便利扱いするなど、とんでもない、虐待だ。何事も役に立つか立たないかというくだらない有用性の観点から人間を評価しやがって。俺は親にも教師にも役立たずと言われて育ってきた。立たなくて結構。こっちから願い下げだ。俺に対して、手伝いをしないなら家から追い出すと脅し、塾や習い事でがんじがらめにし、自分でものを考え自立する自由を奪ったのはお前らだ。結果クラスでは孤立し、彼女はおろか友人と呼べる存在すらいない。くそっ、俺は産めなど頼んだ覚えはない。くそ。まんさんは死ね。幼女は許す。でも泣き喚くガキはお断りで、歯が生え変わる最中のもなんかグロテスクだから嫌だ。


「…賢者よ、さっきの話だが…。」

弓使いだ。った周りに気づかれないように俺を物陰に呼ぶ。

「おれの娘も借りることもできるのだろうか?今年18になる一人娘が魔法科アカデミーを志しているんだが、なにぶん女房が蒸発して以来、家系は火の車でな。うちの娘は知っているだろう?この年まで育てておいてあれだが、なにせ女房が知らん男との間にこしらえた子供でな。おれも赤の他人の面倒を見てやる義理はないんだ。」

全員苦しめてやるんだ。女に学をつけると碌な目にならないことを理解らせてやる。この女もそうだ。


チー牛いじめによる不登校歴ありバイト続かずFラン大学卒地元工場を二日で退職現在無職当然彼女なし素人童貞未婚子供部屋住みインセルアンフェの俺が、風俗からの帰りに事故に遭い、せっかく異世界に転生したのだ。無双をしてやろう。なるべく手酷く。俺は誓った。


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