第2話 たぬきは魔女になりました
たぬきは魔法の杖を手に入れたあの日。魔法使いになりました。たぬきはメスなので魔女ですかね。わたしは魔女になりましたが、最初から魔法を上手く使えたかといえばノーです。イイ感じの枝こと魔法の杖は、たぬきに魔法を仕込むために古い小屋のあちらこちらにある本やら、ノートやら、メモやらを渡してきました。でもね、でもですよ。わたしはたぬきですよ? 文字なんて読めるわけないじゃないですか。これが普通なんですよ。ぽきょ~。
それでですね。あれこれモノのある場所を教えても、当然ですけどたぬきは全くモノにならない。業を煮やした魔法の杖が、ドンバンガシャーンと棚から瓶を落としたのです。たぬきは棚から落ちてくるならぼたもちの方がよかったのですが、ココにぼたもちはないから無理ですよね。床に落ちた瓶が音を立てて割れて、中身がたぬきにビシャッとかかったのです。
するとあら不思議。たぬきは文字が読めるようになりました。魔法陣も簡単に読み解けます。なんて便利。魔法の杖、賢ーい。たぬきより賢ーい。……あ、言ってて悲しくなってきちゃった。ショボーン。
まぁそんなこんなで一年、二年と修行して。優秀な魔法の杖の助力により、たぬきは一人前の魔女になりました。
めでたし、めでたし。
……で、終われるものなら終わりたい。
「どぉ~すんの? これぇ~……」
たぬきは森の端で見つけた血まみれの人間を前にして途方にくれました。
身分が高いのでしょう。身に着けているものは全て上等に見えます。でも血まみれです。これは面倒ごとの予感がします。たぬきは面倒ごとが嫌いです。ここは見なかったことにして逃げてしまいましょうか?
「うぅ……うぅ~ん……」
血まみれの人間が薄っすらと目を開けました。瞳は青。マズイ、マズイです。視線が合ってしまいました。
一瞬だけコチラをとらえた青い瞳に、たぬきの全身は一瞬すくんで金縛りにあったように動けなくなり、心臓がドクンと跳ねました。
悪い病気ですかね?
人間はたぬきを一瞬だけ見て、再び気を失ってしまったようです。
「このままココに置いておいたら、この人、死んじゃいそう。あ~……でもこれは助けたらメンドクサイことになる……あ~……でもこの人、そのままだと死んじゃう……あ~。なんでこの人間、こんなに綺麗なの? でもでも助けたらメンドクサイことになるぅ~」
たぬきは血まみれの人間を前に、頭を右に傾けたり、左に傾けたりして、どうすればいいのか悩んでみました。だからといって、見捨てていくこともできません。 仕方ないので、たぬきは血まみれ人間を魔法でどっこいしょと持ち上げると、空中を滑らせるようにして我が家まで連れ帰ったのでした。




