31話 おヒナはお姫様?~土曜の午後に密会の約束を~
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今回は、今までスポットの当たっていなかった遠藤家の面々にスポットを当てていきます。
心配事があってもなくっても、朝は容赦なく訪れる。
「おヒナ!朝ですよ。支度はできてますね!」
その声が聞こえたら急いでダンジョンを消して、扉が開く前に土蔵の中で正座待機。
こっからは女中式トライアスロンのスタートだ。
競技は、雨戸開け、水汲み、大人数の朝食準備。
もうこの時点で心配してクヨクヨしている余裕は皆無になる。
いつ来るかも知れない不幸より、すぐ目の前の鬼婆お松さんの方がよっぽど怖いってね。
そのあとは、私だけ早めにご飯をかっこんで、メイド服に着替えて身だしなみチェック。
冴子さんの学校の準備を手伝ってから、そのまま護衛として登校同伴だ。
朝から忙しないったらないよ…。こちとら、昨日はギリギリまでレポートやってたから眠くってしょうがないっていうのにさ。
しかし、この登校の時間だけはそれも小休止だ。思わず大きなあくびが出てしまう。
「大きなアクビだこと。あのあとはあまり眠れなかったの?」
冴子さんがくすりと笑いながらそう尋ねる。
「まあそれもあるけど、単純にここの生活、朝が早いからね。そういう冴子さんはす全然余裕って感じだね」
「わたくしも眠いわよ?そう見せないようにしてるだけ」
なるほどね。流石、生粋のお嬢様。立ち振る舞いから違うってわけだ。
「まあ、冴子さんくらいだといやでもみんなの注目浴びちゃうもんね。そういうのも気をつけなきゃなのか」
「貴女も十分注目を浴びてるのよ。そろそろ自覚なさいな」
あー、確かにね。
この時代、教科書とかだと西洋化が進んだとか書いてあるけど、少なくとも女性の服装的にいうとそんなこと全然ない。
もう九割がた和服だ。
「そんな中、まさかのメイド服だもんね。そりゃみんな物珍しくて見てくるよね」
「もう、そういうことじゃないのに」
冴子さんはなんだか納得いかない様子。でも、そういうことでしかないんだけどなあ。
そうやって二人でこそこそ話を続けてくると、だんだんと別の生徒たちも姿を現してきた。
「遠藤さん、ごきげんよう」
「今日はよい日和で何よりですわね」
そうなると、私たち二人の時間はここまで。私はすっと後ろに控える。私はあくまでお付きだからね。冴子さんのお友達が現れたらでしゃばるわけにはいかない。
それでも、冴子さんと登校して数日は彼女たちはしばしば私を意識していたようだけど、最近はすっかりいつもの光景として認識されたようだ。私のことを無視して、冴子さんとの会話に興じている。私のほうもそのほうが気楽だから、ありがたい限りだ。
「皆さん、ごきげんよう。本当に、天気に恵まれてほっとしてますわ」
「それは私たちのほうですよ!今日の歓迎会での演武、生徒全員が楽しみにしているんですよ」
「応援しておりますわ。頑張ってくださいね」
「ええ、みっともないものにならないよう、精一杯務めさせていただきますわ」
ほう?演武?
それって薙刀を披露するって感じなのかな?
確かに、昨日の稽古は完全に薙刀中心の稽古だったし、今日学校のほうでイベントの本番があったんだね。
…そういえば、冴子さん、学校の話はあんまりしないよなあ。
まあ、私の方も、配信の話も、女中の中での人間関係の話も、まるで話してはいないんだけどね。
いろいろ課題が山済みだからその対策についてはよく話すけど、こういうお互いの日常に関しては特に話題にしない。その余裕がないからというのもあるけど、多分それよりも、互いに一線を引いているというのが正しい感覚な気がする。
お嬢様と女中。未来人と過去人。マレビトと現地人。結局二人は住む世界が違うからね。話してもしょうがないと、お互いどこかで思っているのかもしれない。
…戦友、だもんね。
それが私たちらしいあり方なのかもしれないけど、ちょっと寂しくもある。
…後で今日の演武聞いてみようかな。
夜の時間は、私のほうのへとへとだし冴子さんのほうも日課の稽古があるからあまり時間はないけど、こういうお供の道中なら簡単な雑談くらいできるかもしれない。
なにせ、今日は土曜日だ。実は一番冴子さんと接する時間の多い曜日だったりする。
なぜかというと、土曜日には色々なお稽古ごとのためお出かけが多いから。
冴子さんみたいな良家のご令嬢の場合、素養としていろいろな技能が必要らしい。お茶、お琴、お花、そういう伝統芸能のスキルは一通りできて当然なんだって。
そういう技能のお稽古はお師匠さんの家ですることが多いから、平日にはあまり予定は入れられない。日曜日は時間だけはあるが、その分家の用事が多く稽古の予定は入れにくい。
だから土曜日にまとめていろんな稽古事をするらしく、午前中に学校が終わった後はお稽古の梯子状態になるわけ。
先週なんか、学校が終わって家で食事をしてから、三軒もお師匠さんの家を梯子してたもんね。あれには呆れちゃったよ。
でも、これ、私のとっては割とご褒美タイムだったりする。
冴子さんのお出かけに、護衛の私は必須だ。つまり私は、土曜日だけは家でお松さんに顎で使われる女中の仕事から逃げ出して冴子さんのお供として出歩いたり、冴子さんと二人きりでこっそり話をする時間が得られるってわけ。
ふふ。今から楽しみ。
*
と、思ってたら。
ちょっと思わぬ展開が待っていましたよ。
「今日から一緒にお稽古ね、お姉様!」
そう冴子さんに抱きついてくるのは、遠藤家の末っ子である美代子ちゃんだ。
「お母様のお言い付けがあったのよ。わたしもちょっとずつお稽古を始めるんですって。まだお見学だけなんだけどお姉様のお話を聞いてずっと一緒に行きたかったの!」
おうおう。相変わらずめっさ可愛い。
まあ、美代子ちゃんと一緒だと流石にいつもの通りおしゃべりってわけにはいかないけど、それでも簡単な会話位ならできるだろう。これを機に美代子ちゃんと仲良くなるのもありかな。
そんなふうに考えていたのだが、話はここで終わりではなかった。
「冴子お嬢様に加えて美代子お嬢様もお出かけとなると女中一人では心許ないでしょう。本日からは私も荷物持ちとしてお供します」
そう言ってくるのは、ぱっと見私よりちょい年上くらいの男だった。
つけている前掛けに書いてあるのは、遠藤商店の屋号。少し頑固そうなその顔は、登下校時、私たちの少し離れたところからこちらを伺っているその人のものだ。
あー、そういうことね。
稽古の梯子の間ずっと私と冴子さん二人きりにするなんて、静江さんが許すはずがなかった。幼い美代子ちゃんを冴子さんの稽古につけ、それを心配したという体でお付きの人を増やしたようだ。
私たちは、店の人の目と美代子ちゃんの目、その二つの目で監視されているというわけね。
はー。これは、冴子さんと話すのは諦めた方がいいかも…。
「誠一さん。…そう。わかりました。少し荷物が多いけれどよろしく頼むわね。おヒナ。ご挨拶なさい」
冴子さんも私と同じ考えらしく、お嬢様モードのままそう言った。私もおとなしく女中モードで挨拶をする。
「冴子お嬢様のお供をさせていただくおヒナです。右も左もわかりませんが精一杯努めますので、今日はどうぞよろしくお願いします」
お松さんにたたき込まれて、これだけはうまくなったよ私。
「…佐々木です」
男はぼそっと早口でそう言うとパッと目をそらす。
ん?それだけ?
しばし待つも本当にそれだけだったようで、お琴とかの荷物を持つと早々に冴子さんの後ろに並んでそっぽを向いている。
…おい。客商売だろアンタ。なんじゃその態度は。というか、見張りの人がわたしから目離してどうするよ。
はあ…。これは楽しみにしてた道中、逆にしんどくなりそうだなぁ…。
*
想像の通りだった
佐々木、ひたすら鬱陶しい。
何がって、こいつめっちゃ私のことチラチラ見てくるんだよ。なのに私が佐々木の方を向くとパッと目を背ける。反応はめっちゃいいね。絶対に目を合わせません、みたいな気合すら感じる。
流石に気まずいんで、ちょっと話しかけてみても、帰ってくる返事は「はあ…」「いえ…」「特に…」の3パターンだけ!
見かねて冴子さんが少し声をかけると、その時だけきびきび返事するんだよ。
そこまで露骨にしなくてもいいだろ。
そんな苛立ちがなんとなく空気に滲み出て、会話が続かないんだよね。
一人、美代子ちゃんだけは、気にせず冴子さんと嬉しそうに話してた。
「お琴を弾いているとこのような指になるのね!わたしもちゃんとそうなるかしら」
とか言って、冴子さんの指をプニプニ触ったりね。はあ、もう、この子だけが私たちの清涼剤だよ…!
まあ、それでも、流石にこの佐々木の方を気にしてか、私に話しかけてくることはなかったけどね。
「あーあ、せっかくの機会だったてのになぁ」
以上、回想終わり。
私はお琴の先生の家の一室で、一人ため息をつく。
一応お付きの女中である私は、お琴を準備したりなんだりとお世話の仕事があるから、こうして家にあがらせてもらっている。で、その後は、台所横の小さな部屋で待機という感じ。
ちなみに、男性である佐々木は家の中までは入ってこず、家の外で待機している。なので、鬱陶しいあの視線からはつかの間ではあるが解放されてはいるんだよね。
…その代わり、特に話し相手もいないんだけど。
冴子さんは当然お稽古ということで別室、美代子ちゃんもその見学という感じで一緒についていった。
はあ、暇…。
普段の女中暮らしではありえない、何もしなくていい時間なんだけど、なんというか手持ち無沙汰すぎて逆に落ち着かない。
現代だったらこういう時はスマホをいじって過ごすんだけど、こっちではスマホは冴子さんに預けているので手元にない。
いっそ寝ちゃう?でもお付きの私が居眠りしているのがバレたら流石に冴子さんの顔を潰すことになりそうだ。
はー、せめて話し相手でもいないかなぁ。
そんな愚痴を心中でこぼしていると
「ねえ、おヒナ。おヒナ。聞こえていて?」
襖の向こうから女の子の声がした。
ん?んん?
「え?まさか美代子お嬢様?」
「そうよ。わたし。今そちらに行っても大丈夫そう?」
「え、ええ、今は私一人なので特に問題ないですが…」
そう答えるが早いか、襖が少しだけ開くとするりと小さな女の子が入り込んでくる。やっぱり美代子ちゃんだ。
「お嬢様…、冴子さ――お嬢様の見学をするはずでは?」
「そうなのだけど、なかなか先生がいらっしゃらなくてね。わたし待ちくたびれてしまって。そうしたら、お姉様が少しの間ならおヒナと話してきてもいいって許してくださったの!」
なんと!まさかの冴子さんからのお墨付きだった。
これは、美代子ちゃんと仲良くなるための後押しをしてくれたってことでいいんだよね?
「おヒナとはお話ししたいっていつも思ってたのだけれど、お母様はそれはダメっておっしゃるでしょう?お姉様もお家では我慢なさいって。でも、ここはお家ではないから大丈夫よね!」
美代子ちゃんはそう言って目を輝かせてにじり寄ってきた。
「貴女、不思議な力が使えるって本当?」
お、きたよその質問。そりゃこれくらいの子ならこういう話題好きだよね。
まあ、遠藤家にお世話になっているのは私にその力があるからだしここは静江さんたちに伝えた程度は答えておくか。
「使えますよー。と言っても、ここにはない簡単な物を取り出したりだとか、その程度ですけど」
「やっぱり本当なのね!ねえ、ちょっとやって見せてくれないかしら!」
そりゃそう来るよね。あー、あれ頭痛くなるからあんまやりたくないんだけど、ここでやって見せなかったらずっとせがまれるんだろうな。
仕方ない。ここは腹を括るか。
「ちょっとだけですよ?あんまり力を使うと、冴子さ――お嬢様のこと守れなくなっちゃうんで」
そう言いながら目を瞑って集中。出すのは前と同じでペーパーナイフでいいよね?私は手に何も持っていないことを示すよう、美代子ちゃんに手のひらを見せる。
「何もないところからー、はい、生成!」
そろそろ慣れてきたからか、割とすんなり出すことができた。
「わ!すごい!すごいわ!」
美代子ちゃんは目を大きく瞬かせて驚いてくれた。いい反応!こういうの嬉しくなっちゃうね。
「触ってみます?」
「え?い、いいの?怖いことはおこらない?」
「大丈夫ですって。はい、どうぞ」
そう手渡すと、美代子ちゃんは初めは恐る恐るという感じだったが
「こうやって見ると、少し古くて立派ってだけで、あとは普通の小柄なのね」
そう判断した後はおかしなところがないか調べるのに夢中になっている。
それにしても小柄だって。この時代、ペーパーナイフもそんな時代劇風に呼ぶのかな?
「ね?タネも仕掛けもないでしょ?」
頃合いを見て私はそう声をかけると、美代子ちゃんが納得したように頷いた。
「じゃあ、その小柄でしたっけ?それ、ちゃーんと握っていてくださいね。はい、消滅!」
私は大袈裟にポーズをとってペーパーナイフを消して見せる。ま、本当のところは頭が痛いからさっさと消したいってだけだけどね。
「消えちゃった!消えちゃったわ!わたし、確かに持ってたのに!」
「私がちょっと取り寄せただけのものですから、こうやって消すこともできちゃうんです」
私がそう言って胸を張ると、美代子ちゃんはさらに目を輝かせた。
「素敵だわ!なんて不思議なんでしょう!ねえ、もう一回!もう一回見たいわ!」
「ごめんなさい。これ結構消耗するんですよ。今日のところは勘弁してください」
「あら…そうだったのね。わたし、無理言っちゃったかしら」
「いいんですよ。私が修行不足なだけですから。そのうちまたお見せしますね」
「本当?!嘘言っちゃいやよ?」
「もちろんです。その代わり、美代子お嬢様はこの後ちゃんといい子にしてお稽古を見学するんですよ?そうでないとお見せできませんからね」
「もちろんよ!いい子にするわ!」
そう言いながら美代子ちゃんは嬉しそうに手を合わせた。
「それにしても、綺麗なお洋服を着ていて、不思議な力を持っているなんて、貴女御伽話のお姫様みたいだわ!」
「あはは…お姫様は流石に恥ずかしいですよ」
「あら!だって、おヒナがお姉様に付き従って学校に行く姿は、本当に王子様とお姫様みたいだったのよ。まるでご本から抜け出してきたみたいだったわ」
美代子ちゃんはうっとりした顔でそういうと、さらに顔を寄せて内緒話という感じで続ける。
「おヒナはお姉様が王子様みたいって言ってもわからないかもしれないけれど、お姉様、ご本の主人公みたいにとってもお強いのよ。薙刀を振るう姿なんて、息を呑んでしまうほど素敵なんだから!」
「わかります!もう世界一かっこいいですよね!」
「あら?貴女、みたことあるの?最近では、すっかりお家で稽古されなくなってしまったのに」
げ。そういや、夜の稽古は美代子ちゃん含めて秘密だった。
私は慌てて取り繕う。
「あ!いえ!登校時に薙刀持ってるじゃないですか!あれが本当に様になるというか!あと、どれだけ電車が混んでいても綺麗な姿勢のままですし、私が姿勢崩しちゃったらそっと助けてくれたり」
「まあ!まあ!なんて素敵なんでしょう!」
その話を聞いて美代子ちゃんは興奮気味に頬を赤くする。なんとか誤魔化せたみたい。その代わり、すっかりヒートアップしちゃったけど。
「やっぱり、お姉様とおヒナは王子様とお姫様なのよ!きっと二人手を取り合って悪者たちをやっつけるのね!」
あー、流石に興奮しすぎかな。ちょっと落ち着かせたほうがいいかも。
「流石に悪者をやっつけるのは大袈裟ですよ。御伽話と違って現実にはそんなことありませんよ」
「そんなことないわ!最近、おかしなことが色々起きて物騒だってお父様がいつもおっしゃってるもの。学校の先生も、遅くまで遊んでいてはだめって。でも、お姉様とおヒナならそれも何とかできるわよね!」
「あはは…。そういうのはお巡りさんが何とかしてくれますよー」
何とかなだめようとするも、夢見る少女モードに入ってしまった美代子ちゃんは止まらない。美代子ちゃんは、私と冴子さんがするであろう活躍を滔々と私に語った。
嬉しいやらこっぱずかしいやらで、とにかくくすぐったい。美代子ちゃんの話に出てくる私達はなんと国家的なあくまでもコテンパンにしてくれるらしい。本物の方は、私を追いかけてくる謎の組織すらどうにもできていないのにね。
でも、こうキラキラした目で見られるのは悪い気分じゃないのは確かだ。少なくとも、馬鹿なへまをして、美代子ちゃんの夢を壊さないようにしなくっちゃね。
すっかり美代子ちゃんの熱が入ってきたところで
「美代子、美代子。そろそろ戻っていらっしゃい」
廊下のほうから冴子さんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「あ…。もっとお話ししていたかったのに」
そう言って美代子ちゃんはしゅんとした顔をする。その表情に私は思わず声をかけた。
「来週の土曜日になれば、またお話し出来ますよ」
「…来週までは、お話ししちゃダメよね?」
そう上目遣いにこちらを覗き込んでくる美代子ちゃん。いちいち可愛いなこの子は!
しかし、流石にこれは私がどうこうできる問題じゃない。ただでさえ、見張りを露骨に同行させるくらい静江さんは警戒しているんだ。そんな中私と美代子ちゃんが仲良くおしゃべりなんて、絶対に許されないだろう。
「私も早く遠藤家になじめるよう頑張りますから。それまではご辛抱ください」
「…そうよね。わかったわ」
もう少しごねるかと思ったが、美代子ちゃんは思ったよりあっさりと呑み込んでくれた。
我慢することに慣れている、そんな感じだ。チクリと胸が痛む。
「…。私もいろいろ面白い話を用意してきますから。また、冴子お嬢様のお話をしましょうね」
「…ええ。ええ!きっとよ!」
美代子ちゃんはそういうとトトトと部屋の外に駆けていった。
その後姿を眺めながら、私はつい考えてしまう。
あんなにちっちゃいのに、自由に話もできない美代子ちゃん。考えてみたらあの子は、友達と思いっきり遊べるような土曜日の午後を、稽古をただ見学することに費やさなければいけないんだ。
だからこそつい妄想する。例えば美代子ちゃんをダンジョンに招待することについて。
日中は大人たちの目が厳しく見張っていようとも、ダンジョンの中に入ってさえしまえば美代子ちゃんも自由に遊びまわれる。冴子さんとも、私とも誰に気兼ねもせず話をしていいんだ。
しかし、流石にそんなことを軽々に勧めるわけにはいかない。
ダンジョンの秘密は、今のところ冴子さんにしか打ち明けてはいない。それを他の誰かに知られることについては出来るだけ慎重に考えるべきだろう。
ただでさえ、神隠しだ将門の祟りだとあんなに騒ぎになったんだ。そんな中で、私と冴子さんが夜な夜な怪しい空間で過ごしているなんて知られてしまったら、やっと手に入れた日常を私たちは失ってしまう。
…少なくとも、一度冴子さんに、相談してみないと。
廊下からかすかに聞こえてくる琴の音色を聞きながら、私は一人そんなことを思った。
お読みいただきありがとうございました。
はい、ということで美代子回でした。
美代子は結構重要な登場人物なので、ここで挟ませていただきました。貴重なほのぼの要員なので、もうちょい出していきたいですね。
さて、次回、夜の相談からスタートします。現代側のほうも少しずつ状況が動いていきます
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