勇者たちの悲しき休暇
アポロン・ボナールとの結果に従い、モレイアン川東岸の奪還に成功したグワラニーが、退去を拒むフランベーニュの農民の説得のためプロエルメルに訪れたほぼ同じ頃、モレイアン川を挟んで対岸にあたるミュロンバに姿を現した勇者一行。
実を言えば、ラフギールの騒動からこの日までそれほど時間が経っているわけではなかったのだが、そのグループの三人にとってこの「休暇」はとても長いものだった。
その理由。
メンバーのひとりの自称婚約者から与えられるさまざまなミッション。
具体的には、村のための過酷な労務作業。
彼女の監視下で休みなくおこなう日々。
それは、彼ら曰く、「絶対に休暇などではなく苦行。そのすべてが涙なしでは語れないことばかり」だった。
当然、自分たちが苦行を背負わされた張本人として、出発の遅れの原因をつくったアリストに対して盛大にクレームの言葉を並べ立てた。
だが、言われた相手であるアリストもその間遊んでいたわけではなく、やりたくもない第一王子という肩書に見合う仕事をしていたのだ。
三人に文句を言われる筋合いではない。
むろん彼はいつも通り反論のしようがない言葉であっさりと三人のクレームタイムを終了させてしまったのだが。
そして、もうひとり。
グループの中で唯一の女性で、唯一のフランベーニュ人。
実をいえば、他の四人と違い、彼女フィーネ・デ・フィラリオはこの休暇を有効活用していた。
ブリターニャ国内であらたなに手に入れた広大な農地に対しておこなう最高位の治癒魔法を使った肥沃な土地への改良作業。
そして、新しい拠点となったラフギールに新店舗を開店させるという充実した日々を送っていたのである。
「私はもう少し遅くても問題ないのですよ」
それが出発の決まった時に彼女が発した言葉である。




