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アグリニオン戦記外伝 Ⅳ  作者: 田丸 彬禰


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混乱する王女

「話をは始める前にまず聞きたい。グワラニー殿の話を聞いた感想は?」


 アリスト・ブリターニャが勇者として活動することを阻害してい枷を外す算段をする会議。

グワラニーから概要を聞いた直後、その場にいる最年長者となる魔術師長はその言葉とともに視線を向けたのは依頼者の妹でもあるホリー・ブリターニャだった。


 まるで尊敬する兄の裏の姿を見たような気分としかホリーの心境は表現できない。

 もちろんグワラニーが兄に協力するのは明確な利敵行為である。

 それを利用してグワラニーを貶めるとも考えられるが、利敵行為というのならこれまでの兄の行動も同様といえる。


 ……もちろん兄さまはそのようなことは当然わかって……。


 そこまで呟いたところでホリーは気づく。

 そうであれば、それはグワラニーも同様だと。


 ……つまり、背信行為を疑われる危険を承知でふたりともこのような話をしているということですか。

 ……ということは、その先にあるものはその危険を吹き飛ばすくらいのものということになります。


 むろん兄は枷が外れれば魔術師であることを隠さずに済むため、軍を率いて戦う際に、剣の代わりに魔法を使うことが可能となる。

 兄がどの程度の使い手かは知らないが、少なくても策謀という点では相応の力があるはず。

 兄と対峙する魔族軍にとってはそれだけでも大きな負担となる。

 それにもかかわらず、グワラニーは報酬と引き換えに兄の枷を外すことに協力するという。


 ……これでは金に目が眩んでとしか考えられませんね。ですが……。


 ホリーはそう呟くものの、即座に自身の言葉を否定する。


 ……それは並みの者の場合。グワラニーは違う。そもそもわたしのような者が考えつくことをグワラニーが気づかぬはずがない。


 ……では、それをおこなって手にできるグワラニーの利とはなんでしょう?


 ホリーは知らない。

 いや、知らされていない。

 兄が有名な勇者一行の一員だと。


 もちろん疑ったことはある。

 兄が魔術師であることを知っているのだから当然である。

 しかも、彼女の場合、最近は常に黒色であるフィーネの髪がもともと銀色であることも知っている。

 つまり、多くの者が疑問とされる点と、ホリーはすべてクリアしていたのである。

 それにも関わらずホリーがその考えを捨てた理由。

 それは伝えられている勇者の情報と目の間の現実との乖離。

 

 勇者チーム。

 それは勇者と呼ばれる剣士に引き入れられた者たち。


 だが、兄の護衛隊は、たしかに勇者チームと編成は同じだが、序列がまったく違うのだ。

 兄が頂点、続いてフィーネ、三人の剣士は同格で最下層。

 噂通りでいけば勇者であるファーブのフィーネにお仕置きを受ける恥ずかしい姿はとても勇者には見えない。


 ……ないですね。


 勇者の現実を見て、勇者ではないと思ったということになるわけなのだが、とにかく、そう判断したホリーにはアリストはもちろん、グワラニーも真実を伝えていなかった。


 だが、アリストの枷の話を進める以上、それは話さなければならない。

 一応、その点についてグワラニーとアリストは話をしている。

 当然グワラニーは交渉後に時間を取り、ホリーに話すことを勧めたものの、アリストは拒否。

 そして、その直後グワラニーに丸投げする。

 その結果が、例の報奨金の値上げにつながったというわけである。


 ……金を貰う約束をした以上、もちろんやるが、いずれわかるのだから自分で言えばいいだろうに。それを大金を払ってまで他人にやらせるのか。


 心の中でそう呟いたところでグワラニーは疑問符だらけの表情で老魔術師からの問いの答えを探すホリーを眺めた。

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