零れ落ちた言葉 Ⅴ
実を言えば、あの日同じ場所からこの世界に飛ばされた者が三人同じテーブルで食事をしていた。
もちろんそのことを知る者はいない。
ただし、厳密にいえば、その可能性があると思っている者はいる。
そう。
フィーネである。
ついでにいえば、彼女はもうひとり、守銭奴国家のトップに君臨するアドニア・カラブリタについてもその可能性があると疑っている。
さらに彼女は異世界転移魔法の秘密の重要部分についても把握している。
そして、この部分についての情報を彼女は同胞の者として確定しているグワラニーに提供した。
そのグワラニーは異世界を行き来している者を大海賊のひとりバレデラス・ワイバーンと特定している。
つまり、元の世界に戻れる可能性に一番近い位置にいる。
ただし、グワラニーには大きな問題があった。
魔法が使えないのである。
もちろん彼の傍らにはデルフィンがいる。
一見するとその問題も解決しているように思えるが、グワラニーの知識はそれを否定していた。
異世界転移と言っても転移魔法には変わらない。
そうなれば、「術者が足をつけた場所にしか転移できない」という枷が作用するに違いない。
グワラニーはそう考えており、それはまさしく正しかった。
さらにまだ足りない知識もあると思われる。
それを埋めるためにはどうしたらよいか?
答えはもちろんワイバーンとの接触となる。
だが、現在の彼にその機会はないと言っていいし、フィーネも難しいと言えるだろう。
この三人の中でその可能性が一番あるのは、利益を共有しているアグリニオン国の商人アドニア・カラブリタを通じて大海賊と直接的な面識ができたチェルトーザとなる。
ただし、チェルトーザは帰還に関する情報という点ではふたりに大きく水を開けられている。
むろん彼はワイバーンが重要なキーマンということは知らない。
三竦み。
三人の状況を表すのであれば、この言葉がふさわしいのかもしれない。
そして、この状況が改善するか、それを吹き飛ばすくらいの情報が手に入らないかぎり、彼らが元の世界に戻れることはないだろう。




