陣中食狂騒曲 Ⅱ
「婦人会」ならぬ「夫人会」と自称する組織。
アリシア直属部隊でグワラニー部隊の将兵の家族がつくる魔法の料理を提供するその集団の出現は当然儲けを主眼とした者たちの脅威となる。
それでも、前線を離れられない当直者たちへ配る陣中食を担当する者たちは部隊によって差が出ぬよう基準通りにつくられたものを提供すればよかった。
だが、問題は将兵が自身で金を払い好きなものを食すことができる自由食になっていた部分である。
「夫人会」はグワラニーの部隊の食事を提供するためにやってきていたのだが、僅かではあるが外部の将兵もその食事を口にできた。
当然他の部隊との差は歴然。
他の店にはクレームが殺到する。
まあ、それについては食堂主にも当然言い分はある。
「そもそもおまえたちがこれまで口にしていた陣中食に比べれば百倍美味いだろうが」
事実である。
だが、文句ばかりは言っていられない。
多くのライバル店が出店している以上、手をこまねいているわけにはいかないのだ。
そこから食堂主たちの選択は大きくわけてふたつの道へと分かれる。
質より量派。
軍から提供される食費で食せるものをつくるのはこれまでどおりだが、ひたすら量を追及する。
当然味は落ちるが、干し肉と乾パンという配給品や前線ではそれが標準となっていた当番兵たちがつくる「なんとか食べられる」ものに比べれば十分においしいため、当然需要は多い。
もうひとつは量より質派。
こちらはクアムートでは高級の部類に入る食堂を経営する者たちの選択となるわけなのだが、量は減らすがその分手の込んだ料理を提供する店で、追加料金を出せば量も付加される。
当然こちらは将軍などのいわゆる高級士官が利用する。
最前線でいつ戦闘が始まるかわからないということもあり酒類の提供も禁じられていたが、それでも、将兵たちは十分に満足できるものを食することができた。
「この戦いで勝ったのはあの食事のおかげ」
それが多くの者たちの口から洩れた感想である。
そして、これをきっかけに魔族軍全体で食事の改善が始まるのも子との戦いがきっかけと言われている。
当然ながら、ぼろ儲けを狙った者たちにとっては思惑が外れたわけなのだが、損が出た店はなく、結果はウインウインだったといえるだろう。




