移動ユニット
ダワンイワヤ会戦に参加した魔族軍諸将が驚いたもののひとつにグワラニーが持ち込んだ木製宿舎がある。
もちろん他の魔族軍にも木製宿舎というものはある。
ただし、それは将軍クラス限定であり、そもそも固定されたもので移動できない。
当然その下になる者の宿舎は良くて丸太と布を組み合わせた簡易テント、最下級の兵士たちは当然地面に転がって寝る。
そうなれば、大木の下や洞窟などは彼らにとっての一等地になるわけである。
これは人間側でも同じであるのだが、こちらは攻勢に出る状況であるため、日々移動することが多い。
そのため、魔族軍に比べてテントの技術が発達しており、大きさや形などにおおくのバリエーションが存在する。
だが、グワラニーの持ち込んだものはなにもかもが桁違いのものであった。
移動ユニット。
グワラニーがそう名付けたこれが最初に登場したのはマンジューク防衛戦であり、最近ではマジャーラ遠征の際にも戦場へ持ち込まれている。
木製宿舎の良さはもちろん耐久性と居住性であるのだが、組み立て時間とコストのマイナス要素がそれはるかに凌駕するため、どこもそのようなものを持とうということにはならない。
だが、ここでもグワラニーの資金力と配下の魔術師団の力がモノを言う。
数万人が居住できる簡易宿舎をつくり上げると兵士とともにその転移魔法で運ぶという荒業をやってのけたのである。
そして、もうひとつこのユニットは設置するにはそれにふさわしい場所が必要となる。
平坦で、かつ、その重さに耐えられる程度の地盤ということになるのだろうが、グワラニーの部隊にはそのようなことを専らとしている戦闘工兵がいる。
彼が整地した場所に移動させる。
それだけの話である。
グルナッシェ平原に持ち込まれた移動ユニットは自軍以外にも約六万人分。
これは新型ユニットの登場によって不要となり倉庫代わりに使用していた旧バージョンのユニットも再度現役復帰させたために可能になった数なのだが、それでも参加した将兵全員分には及ばない。
それについては、一ユニットに多くの兵を押し込む部隊、一ベッドをふたりの兵士が共同で使用し、どちらか一方が歩哨に立つことで問題を解決する部隊、それぞれが工夫して対応したのだが、野宿と言い出す者がいなかったのは彼らが雨風が防げる場所をいかに憧れていたのかを改めて認識させるものだったといえるだろう。




