第52話 神事の舞
『おひねりちょーだい』を助ける為動き出した雨宮小春!
必殺のカードとして双子探偵を召喚した僕は再び『おひねりちょーだい』の下を訪れるが、なんと橋本圭介と双子探偵と宇佐川結愛はトモダチだった!
そして話は本題の脅迫騒動の詳細へ移っていく……
「こちらをご覧ください」
『おひねりちょーだい』マネージャー兼プロデューサー兼ヘアメイク兼家事代行兼公認会計士の折月は数枚の紙切れを浅野姉妹へと差し出した。
そこには筆で書かれた達筆な文字が踊っている。一見するとプロの書道作品だけど、その内容は物騒極まりないものだった。
おひねりちょーだい殺す。
「……それが、最初に届いた脅迫状でした」
「……これは?事務所の郵便受けに?」
「いえ、事務所の受付に直接……矢文で」
「「矢文で!?」」
「それが2枚目です」とその下の脅迫状を見るよう促す。
お前らの代表作いよーっぽんは盗作作品である。この事実を然るべき場で公表しろ。さもなくば酷い目に遭わせる。殺す。
「そして今朝……これが……」
お前ら殺す。解散しろ。しなかったら殺す。
「うぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁっ!!」
「圭介?」「しっかりしろ圭介」
矢文を見たショックかエナジージャンキー橋本圭介がガタガタと震え出した。それを相方早川大地と恋人兼護衛の宇佐川結愛が必死に宥める。
そんな元学友など知らぬ顔で双子探偵は手錠で繋がれた手で仲良く脅迫状を見つめつつ、探偵みたいな顔をしていた。
「「……なるほど」」
多分何も分かってないけどとりあえず頷く双子探偵。姿だけなら頼もしい。
「うちの事務所では事態を重く見て…その、『おひねりちょーだい』は解散…という発表をしようかと……」
「おい、お前らならなんとか出来んだよな?言っとくけど、ここまで来てやっぱり無理ですなんてほざいたら……」
「…………それは全て話を聞いてからだ。宇佐川」
おぉ、美夜さん、なんか……プロっぽいぞ!?
「脅迫状以外に被害は?」
「……事務所に時々矢が飛んできます」
攻撃方法がアナログ……
「とにかく命を狙われてるのは確かなんです。ですが…だからといって……こんな…僕らが何をしたと言うんですか!」
と、感情を露わにする早川大地。それを見つめる宇佐川結愛と折月の目はなんだか複雑だ。
いたたまれないものを見る瞳--彼女らの中にあるのは同情と、罪悪感だ。
この視線から僕は事情を察した。
やはり彼らは……
「……なら、なぜ警察に相談しない?」
「そうですね。なにか……後ろ暗いものがあるから、然るべき場所に相談できず、私達のような者を頼ってきた……そういう事ですね?」
双子探偵の追求に早川大地は宇佐川結愛達を見る。その視線を観念したかのように受け止めた彼女は深いため息を吐いた。
「……話す事を全て話してもらおう。事件の解決の為に」
手錠で繋がれた美夜さんがカッコよく見えるんだから、すごい。それくらい場の空気はどんよりと重苦しいものに支配されていた。
「……依頼人の秘密は守ります。宇佐川さん。私達を信じてください」
詩音さんの最後の一押しでついに、宇佐川結愛の唇が開かれる--
「……この話をするには『おひねりちょーだい』結成前まで話を遡らなきゃならない。そう……私らの高校時代まで……」
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「…『おひねりちょーだい』は私と橋本との出会いが全ての始まりだったんです」
「折月さん……?」
「早川も聞け」
全ての真実をマネージャー兼プロデューサー兼ヘアメイク兼家事代行兼公認会計士が語り出す。それはまだ僕のへその緒が取れて数年という年月まで遡る……
「橋本がまだ高校三年生だったあの日…ちょうど夏の終わりだった……あの日あの街…北桜路市に巨大な台風が停滞していた……」
「そう……夏休みの終わりだった」
「あぁそんな事あったなぁ」と当時を懐かしむ双子探偵の前で宇佐川結愛が続けた。
「あの日私と圭介は世界の存亡を賭けた戦いをしてた」※
……?
「そう。復活した古の大妖怪、九尾の狐とな」
「あ、その話師範から聞きました。彼岸神楽流に伝わる彼岸神楽伝説ですね」
彼岸神楽流開祖、彼岸神楽は昔九尾の狐と戦った事があるんだって。
……待って?実話?
「告白する。私らでは歯が立たなかった…世界を守る為に私らは最後の武器に縋ったんだ……それが--」
「橋本のダンス……」
「あぺーーーーー」
隣でアホ面こいてるこの男のダンスに世界を救うだけの力が……?
これは真面目に聞いていい話なのか「ふざけてんのかてめぇ」とハリセンを挟む話なのかよく分からないけど、話の舞台が我が故郷北桜路市だけに「まぁ有り得なくもないか…」と色々言いたいのを一旦飲み込み、浅野姉妹と共に清聴する。
「圭介のダンスには九尾の狐を封印する力があった」
「そ…そうなのか……」
相棒の秘められた力に思わず戦慄する早川大地。どうやら彼はこの話を真に受けているようだ。突っ込むのも野暮なのでとにかく聞こう。
「そのダンスを現場で目撃したのが、当時城ヶ崎の仕事の付き添いで北桜路市に来ていたこの私なのです…」
「それが圭介と折月の出会いだ」
「私はその時、彼のダンスを見て感涙を流した……心が洗われるようなそのダンスに私は取り憑かれたんです。そう…橋本圭介というスターに!!」
「ぺけーーーーー」
熱く語る折月の視線の先で溶けたアイスみたいになっているこの男、橋本圭介こそがこの騒ぎの元凶…
彼はエナジードリンクが切れて限界寸前のようだ。
それで?九尾の狐はどうしたんですか?
「……あの時の圭介のダンス…それこそがそのまま『おひねりちょーだい』のデビューシングル『いよーっぽん』だ」
「その楽曲が問題の盗作作品…」
「では宇佐川さん。説明してください。その作品……いよーっぽんは盗作なのですか?」
双子探偵は切り込んだ。詩音の確信を突く追求はこの事件の真実へ大きくメスを入れる。
今までの話では『いよーっぽん』は橋本圭介のオリジナル……というふうに捉えられるが……
「……盗作…………とも、言えなくないかもしれない」
宇佐川結愛のその一言に、早川大地は息を呑み込んだ。橋本圭介は垂れてた唾を呑み込み、折月はお茶を、宇佐川結愛は空気清浄機から噴出する空気を呑み込む。
僕らは特に呑み込むものがなかった……
「……盗作、とも言えなくない?はっきりしろ宇佐川。盗んだのか?盗んでないのか?」
「オリジナルではない」
美夜さんに宇佐川結愛はキッパリと、もうほぼパクリましたと宣言。そこで折月が割って入る。彼は必死に弁明するように声を荒らげた。
「知らなかった……我々はこの事実を最初知らなかっ--」
「あんたはそうでも、私と圭介は知ってた。言い訳にはならない…」
「宇佐川さんっ!」
そして宇佐川結愛は語る--
「和楽器バンド系アイドルグループとしての方向性を確定させた圭介のダンス…いや、舞は本来、九尾の狐を封印する為の儀式なんだ」
「……」「……」「……」
まぁ、あの街だし?地獄の怨念とかエイリーンの母とか出てくる街だし!?
「……そして、『いよーっぽん』は曲こそオリジナルだが、その舞に合うように作ってある。だから振り付けは……」
「盗作……」「もうはっきりパクったって言えよお前ら。消火器で殴るぞ?」
「つまり振り付けは丸々パクリで、その振り付けには他に著作権を持つ人が居る……という事ですか?」
僕の要約に「いや著作権は知らんけど」と呟きながらも宇佐川結愛、その舞の本来の作成者を告げる--
「圭介はあの日九尾の狐との戦いの中で伝承されたんだ……あの神事の舞を…」
「「「誰から?」」」
「……元陰陽師の一族。日本舞踊、妻百合流の人間からだ」
※「お前なんなん?」古城編(エピソード「禍~伝説の闘い、終演!!」)




