異世界51日目 5月21日(火) ①雨の天使
「今日もあめでおそとであそべなぁい……」
運動場を眺めているアメリアちゃんはケモミミが倒れ尻尾も下がっており、見た目通り元気が無い。それもこれも先日から降り続く雨のせいである。
ここのところすっきりとしない天気が続いており、まとわりつく湿気も不快に感じる。雨季にでも入ったのだろうか?
この世界にも日本と同じ四季があるみたいなのでこの世界にも梅雨があるのかも知れないな。
「……お水は必要、でも多過ぎても困る……その境は受け取り手次第」
ソフィちゃんは哲学めいた事をおっしゃってますね……隣のアメリアちゃんには難し過ぎないかな?
園の備品はそれなりに揃え、室内遊びも開園当初に比べると充実はしてきてはいるが、やはり子供は外に出て遊びたい気持ちが強いようだ。
さて、どうしたものか。園児達にストレスは与えたくない。
「そうだね、お外遊びは濡れちゃうから出来ないね……」
ルーミィさんも二人の園児に合わせて屈み込みながら一緒に運動場を眺めており、憂鬱そうな表情を浮かべているのだが……うん? そうか、濡れなければいいだけじゃないか! ナイス、ルーミィさん! おっさん、閃きましたよ!?
園児二人を呼び、まずは良く観察させてもらった。体や足のサイズも入念に。後方から冷たい目線を感じますが違いますよ? 決して邪な思いはありませんから。
「アメリアちゃん、ちょっと尻尾を見せてくれるかな? 後、ケモミミも触っていいかな?」
「うん、いいよ! はい!」
美しい銀色の毛並みに尻尾を見せてくれた。長さや太さを確認する為に少し触らせてもらったのだが、これがまた……もふもふだった。堪りませんなぁ~。
続いてケモミミっと。生え際はっと……ふむふむ、この辺りからか。
「あははっ、なんかぁこそばゆいよ~、カズヤせんせぇ~」
「ほう……和也先生?」
だから怖いですってばルーミィさん……俺はアメリアちゃんのケモノパーツのデータが知りたかっただけなんですってば……でもちょっと気持ち良かったのは内緒にしておかないと。
ルーミィさんの誤解を解きながら、早速ニューアイテムであるホルスターから神ブックを取り出した。いやあ、便利だわ、これ。欲しい時にいつでも手が届くこの快感。
神ブックを持ち、早速先程のイメージを具現化させた。雨の時に大活躍するあのアイテム達を。
「よお~し、いい感じ! 大分神力使うのも慣れて来たな」
神力の光が消えて遊戯室の床に現れたのは二組の『レインコート』と『長靴』だ。
村に行けば子供用の雨具もあるだろうが、アメリアちゃんにはケモミミと尻尾がある。流石にそれに対応した物は置いていないし、折角だしソフィちゃんとお揃いにしてあげたかったのだ。
ただわざわざ神力を使ってまで出したんだからオリジナリティを持たせてある。
レインコートのコンセプトはネコさんだ。アメリアちゃん仕様としてフードはネコミミにしており、耳の収納が可能となっている。もちろん普通にかぶっても型崩れしないように工夫もしている。
レインコート本体部分にはお尻辺りに尻尾を付けてある。ここの一工夫を施し、実際に収納出来るようにしてみた。尚、ソフィちゃんの事も考えて尻尾が無くても維持出来る仕組みにしてある。
これは日本刀の鞘をヒントにイメージしてみたのだが、いい感じで再現されていて一安心だ。
後、長靴は必須だ。子供は水たまりが大好きな生き物なのだ。俺もよく水たまりに入って遊んだ記憶がある。大人になれば避けて通るものであるが、子供からすればそこに入らずにはいられない魔性の現象なのだ。
どうして水たまりって子供を魅力するんだろうな……これまた哲学である。
早速二人にその場で着せてみたのだが……俺は自分の才能に恐怖した。この手で可愛らしいネコの天使が二名誕生させてしまったのだ。
ちなみにカラーはブチ模様のネコさん仕様だ。
「ニャ~!」
「……にゃあ」
おうふ……いかん、可愛らし過ぎる。
二人も気に入った様子でネコさんになりきってポーズを取りながら楽しんでいる。狼さんとドラゴンさんがネコさんになってしまいましたとさ。
よし、これで準備は万端だ。雨に負けずに村へ散策に行ってみよう!
神力の具現化に満足していると、ふと妙な違和感を感じた。言葉では言い表せないのだが、場の雰囲気というか空気が何か変な気がする。原因はルーミィさん……か?
はしゃぐ二人のネコさんを眺めるルーミィさん。別におかしなところは無い。でもなんか妙な感じなんだよなぁ。
……分かったぞ! ルーミィさん、とてつもなく物欲しげな目をして二人を見ているぞ!? まさかルーミィさんもネコさんレインコート欲しいの!?
似合うとは思いますけど流石に十七歳ですからね……諦めて貰えます? 神ポイントも消費しちゃいますので……。
≪≪≪
雨の方はそれほど強く降ってはいないが、傘無しで出歩くには厳しい微妙な雨足となっている。その中、園児達はご機嫌に水たまりから水たまりへと楽しそうにはしごしている様子が映った。
長靴はやはり正解だ、普通の靴なら園を出て一分で引き返すところだったな……。
「カズヤせんせ~! はやくぅ~」
「……ルーミィ先生も」
急かされる俺とルーミィさんであるが、俺達は大人用のレインコートを着ている。普通雨と言えば傘を連想するのだが、残念な事にこの世界に傘の概念が無かったのには驚きだった。
元の世界とはやっぱり微妙に食い違うんだよな……まあ、機械はもちろんだけど金属系のアイテムはあったりなかったりするもんな。
「あんまりはしゃぐとこけちゃうよ~、まったくぅ~」
先を走る元気爆発の園児達に腰に手を当てて声をかけるも園児達は止まらない。あの二人、大分うっぷんが溜まってるみたいですからね。
「元気があるのいいのですが、確かに危ないですね。お~い、アメリアちゃ~ん、ソフィちゃ~ん! 先生と一緒に手を繋いで行こう~!」
俺の声に二人は振り向き、こちらに向かって走って来てくれた。これで安全に歩け――
「やっぱ幼女が好きなんだね!? 声をかけて手を繋ぐだなんてふしだらだよ! 最低だよ!」
「ルーミィさん!? なんかやたらと声大きくない!? それに普通だから! いつも繋いでるじゃないですか!?」
結局、ルーミィさんが両手で園児達を繋ぐ事で事態を収め、俺はその後ろを肩を落として歩いた……。保育園では事あるごとにロリコンと呼ばれるし、胸の大きな人を見たらキレられるし……俺は一体何を見て過ごせばいいのだろう……。
後者は下心持たなければいいだけの話なんだけど、それっとほんとに難しい事だからね?




