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異世界20日目 4月20日(土) ①スライムの飲み物作ります!

 

 保育園開業初日以降も順調に保育をこなし、今日は初めての休日となる土曜日となった。とは言ってもこの異世界で生きていく為、まったり休んでいる暇など無い。

 異世界に来て通算二十連勤達成中だったりする。ブラック中のブラックである。


 尚、アメリアちゃんとはお店屋さんごっこをはじめ、それを応用したおままごと遊びなどの室内遊びや、運動場で走り回るなどの体を動かす遊びなどもして過ごした。


 ただ、流石は白銀狼夫妻のご息女である。やはり鬼ごっこでは到底勝てない事が判明した。もともと運動は苦手であるがそんな生易しい次元ではなく、大人が本気で逃げても瞬殺で捕まるレベルなのだ。

 アメリアちゃんといい勝負が出来るのは、あの牧場の方々だけじゃないかな?


 それよりも驚いた事があった……例のルーミィさんからもらったエプロンがアメリアちゃんには大絶賛だったのだ。

 あのひよこ……女の子には受けがいいのであろうか。おっさんには少々恥ずかしいワッペンなんだけど。


 そんな訳で一刻も早く元の世界に帰る為、そして明日のご飯を食べる為にも今日はスライム料理の新製品を試作する予定である。金銭的には前回の短期集中販売や保育費で少しは余裕があるものの、それだけではやはり厳しい。

 特に保育園を開業してからは一度も露店ブースでスライム料理の販売をしていない。保育時間を考えると今後の販売は土日限定になるだろう。


 また、スライムを使った和菓子はまだまだ沢山思いつくのだが、最近は季節が初夏に向かっており、日中は汗ばむ陽気になる事も多くなってきた。この季節を活かして今回は飲み物というジャンルで攻めてみるつもりである。


「ルーミィさん、新製品のスライム料理を作りたいのでスライム採取をお願い出来ますでしょうか? 試作は在庫のスライムでも作れるのですが、販売するには量が足りなくて」


 リビングのソファーに寝っ転がって随分と退屈そうにしている女神様に声をかけた。最近二人暮らしに慣れてきたせいか無防備さが増してきているように感じる。

 その体勢でスカートめくれたらパンツ丸見えになりますよ?


「分かった! 和也も早く準備してよ? じゃあ私行くね! スライムは待ってくれないから!」


 いや、待つも何もその辺に居るし動かないから……それになんかやたらと急かされたけど、女神様さっきまでリビングでだらだらしてましたよね? まあ手伝ってくれる気満々だからいいんですけども。


「今回はノーマルスライムでお願いします。葉スライムは避けて下さいね」


「OK! 任せて、行ってきます!」


 長い髪をたなびかせ、すごい勢いで出て行った……食欲旺盛な美少女だこと。


 あ、もう大樹の所まで行ってる……いきなりそんな全速力だとバテますよ? しかも試作品を作る分はあるって言ったでしょ? どれだけ急いでも今採取した分は使いませんからね? 



≪≪≪



 しばらくすると大量のスライムと共に肩で息をしながら額に汗びっしょりの美少女さんが帰ってきた。しかし鬼気迫るものがありますね。完全に想定内だったのでタオルは用意してますからね。


「お、お疲れ様です。汗だくじゃないですか……はい、タオルをどうぞ」


「じゅ、準備は出来た? す、すぐ作れるの? これだけあれば……ふふっ」


 タオルで額の汗を拭いながらうっすらと笑みを浮かべている……やだ、この子怖い。食べ物への執着心が怖い。それだけ楽しみにしてくれているのは嬉しいですけども。


「後はスライムを調理していくだけです。その間にシャワーでもして汗を流してきては如何でしょうか? 汗が滲んで服が透け――」


 ルーミィさんを改めて見るとただでさえ透けやすい白色のロンTが汗で滲んでくっきり綺麗に下着浮き出ている。あれはブラジャーだな、今日はピンクですか……。


 ルーミィさんも俺の目線を追い、見る見る顔が赤くなっていく。自分の状況を理解したようだ。


「んはっ!?」


 叫び声にもなっていない声を上げてキッチンから出て行ってしまった。


 今、俺が悪かったのだろうか? むしろこの状況でどうしろと言うんだ。おっさんには正解が分らない……。男女が一つ屋根の下で暮らすとこういう問題、起きますよね?


 さてしかしながら、今のルーミィさんにとってそんな事は関係無いだろう。これでシャワーから戻って調理が完成していなければ、地獄を見る可能性がある。怒りを鎮める為にも急がねばならない。


 今回の新製品『スライムタピオカミルクティー』の完成を。



 ――スライムタピオカミルクティ――


 材料

 ミルクティー、黒糖、ゼラチン、スライム


 調理方法

 ①先端に小さい穴をあけた竹筒を用意する。

 その際に底に小さい穴をあけ、蓋をしてお

 く。

 ②スライムを黒糖と一緒に煮込み、ゼラチン

 を加える。

 ②固まる前に竹筒に流し込み一度冷蔵庫で冷

 やす。

 ③冷え固まったスライムを先端の栓を外し注

 射器の要領で後ろから押し出し、水を張った

 ボールに鋏で切り落としていく。

 ④竹グラスに適量黒糖スライムを入れ、冷え

 たミルクティーを注ぎ、大きめの竹ストロー

 をさして完成。



 言わずと知れた若い世代層を中心に人気のある台湾発祥の飲み物だ。おっさんがまだ若かりし頃にはまだ無名であったのだが、元の世界では人気爆発のブームとなっている代物だ。

 今回は元々は日本のものではないが、この世界には無かった物だったので作ってみた。食感が癖になる一品である。


 事前にプランは立てており、竹グラスと竹ストローは大樹の傍に生えていた太さの異なる2種類の竹を加工しておいたおかげで時短も出来ている。

 園の備品倉庫にDIYセットが有ったのが幸いしたな。


「よし、完成だな……うわっ!?」


 調理が完成し満足していた所、視線を感じてふと目をやるとキッチンの入口から半分身を覗かせ、こちらを睨んでいるシャワー上がりのルーミィさんが居た。

 あの……怖いんですけど……。


「エッチ、スケベ、変態……ド変態」


 酷い言われようである……しかも何故か変態って二回言われた。ドも付けて……完全に不可抗力であったと思うのですけど。しかしいつの時代、どの世界でも男は弱い立場にある。物事を穏便に済ます方法を取らねばなるまい!


「先ほどは失礼しました。ルーミィさん用のお飲物が用意出来ましたのでお召し上がり下さい」


 解決方法は至って単純明快。いつものように謝るしかない! これも経験だ、下積みだ。いつか花咲く時も来る筈だ! 

 イケメンの方ならもっと良い対処法を知っているのであろうが、今の俺にはこれしかない。ああ、我ながら情けない…。


 待ちに待った新製品の誘惑とシャワーを浴びて喉も乾いているのだろう、体は水分を欲している模様で渋々であるがキッチンに入って来てくれた。後はこの新製品にかけるしかない!


「……飲み物なの?」


 よし、喰いついた! ここまで来れば大丈夫だ。あとは一気に畳みかけるのみ! 


「まあ、飲んでみて下さい。そうそう、一気に飲み込まないで一度口に含んで食感を楽しんで下さいね」


 大きめのストローの代わりに細い竹のストローを差している。そして器は竹製とエコ尽くしだったりする。材料は大樹付近にいくらでも生えているので原価はゼロだ。

 加工時間はそれなりにかかるけどね……この点を改良しないと大量生産は出来ないな。


「飲み物なのに食感? 随分大きなストローだね……うん、分かった。いただきます!」


 これを販売する際には注意書きが必要だな。いきなりスライムが喉に通ればむせてしまう可能性がある。


「うわぁ! 何これ、口の中にスライムが入ってきたぁ!? 食感のある飲み物なんて初めて! しかもスライムがほんのり甘い!」


「如何でしょうか? これを明日の日曜日としばらくの間、土日で販売しようかと思っています。竹筒とストローのセットで250G、中身だけは100Gで」


 ルーミィさんの機嫌も直ったようだし、材料を買いに行くついでにイベント広場の掲示板に告知を打とう。あと注意書きのPOPも作って竹の加工もしないといけな――


「でも、これだけでさっきの事は誤魔化せないからね!」


 ……残念、和風容器仕込みのスライムタピオカミルクティーでは力不足であったか。いや、きっと何を出してもダメなんだろうな。あはは……どうしよう……。


「そうだ! 久しぶりにギルドのBARに行かない?」


 そんなに久しぶりであろうか? 酔い潰れた時の印象が強過ぎてまるで昨日の事にように思い出せるのですが。お酒は弱いが好きな口なんですね。お酒初心者なのに厄介ですね……。


「こ、今度は大丈夫だよ! 一気に飲まないようにするし、弱いお酒を頼むから!」


 あ、また顔に出ていたようだ。きっと『おいおい、大丈夫かよ? この前大変だったんだぞ?』って感じの顔してたのであろう。


 そこまで分かってるなら隠せよ俺!


「分りました。それでは今晩行きましょう。でもその前に買い出しや告知、その他の準備をさせて下さいね」


「おっけ~!」


 ルーミィさんは喉の渇きも癒えたようで、上機嫌に鼻歌交じりでスキップしながらキッチンを出て行った。


 あれ? 怒ってない? しまった!? まんまと騙された……既に機嫌は直っていたのに付加価値を付けられたのか……。

 ズルくない? そういうの、おっさんちょっと焦ってたんだよ?


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