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異世界14日目 4月14日(日) ①ケモミミ幼女保護しました

 

 ギルドでルーミィさんが酔い潰れてから十日間、当初の予定通りスライム料理作りに精を出した。


 その間の売れ行きは非常に好調であり、思っていたよりも多くの資金を集める事が出来た。

 しかし今は大樹の桜はほぼ散ってしまい、それと同じく、桜スライムは姿を消していき、今は葉スライムばかりとなってしまった。


 園のリビングから桜の大樹を見ると、青々とした若葉が揺れ動いており、桜の季節は終わった事が伺える。


「う~ん、桜の季節もお終いですね。桜スライムが採取出来ない以上、スライム桜餅の生産も出来ません。本日を以て製造終了ですね」


「えっ……そんなぁ……」


 リビングのイスに座っていたルーミィさんだったが、俺の言葉を聞く否や、そのままおでこをテーブルに置いて力無く両手をブラブラと動かし出した。


 なんですか、そのショックの表現方法は……ちょっと面白いじゃないですか。


 それとそのショックの原因は大盛りご飯じゃなくなるのが辛いのか、和菓子が食べられなくなるのが辛いのか……両方だな、きっと。


「季節限定という事に価値がありますからね。後、そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ。普通の和菓子は作ってあげますから」


「ほんとぉ!? 約束だよ!」


 起き上がるなり約束を強調する辺りは流石です。まさに花より団子ですね。しかし、新たな金策を考えないといけない。この季節の新たなスライム料理か……。


 若葉揺れる桜の大樹を眺めていると、更にその奥にある森が目が映った。

 そういえば、大樹より奥には行った事が無いよなぁ……気分転換に森の散策でも行ってみるか。何かいいアイデア浮かぶかも知れないし。


「ルーミィさん、今日はスライム製品も作らないので時間もあるので、あの森を散策してみませんか? 新しいスライムが居るかも知れませんよ?」


「うん、いいよ! 新しいスライムかぁ、楽しみぃ~!」


 初めの頃はあんなにスライムを蔑んだ目で見ていたのに……今はすっかりスライム料理に慣れたようである。

 新しいスライムの発見=新しい美味しい物が食べれる、と言う方程式が成立しているようだ。まあ、あながち間違いではないけどね。



≪≪≪



「木漏れ日が気持ちいいですねぇ……」


「ほんと、なんか癒される感じだよぉ~」


 大樹から二十分程、森を突き進むと少し開けた場所に出た。今は二人して寝っ転がって森林浴を満喫しているところだったりする。


 広大な森なので目印を付けて進んで来た訳だが、道中に残念ながら新種のスライムは見つからなかった。でも良い気分転換にはなっている。お弁当持ってくれば良かったなぁ~。


 保育園を運営する事になったらちょうど良いピクニックコースになりそうだ。うんうん、いい場所を発見出来た。

 ああ、それにしても空気が美味い。深呼吸をする度マイナスイオンが全身に取り込まれて……うん? この感じは……。


「いけません、園に戻りましょう。雨が降りそうです」


 深呼吸と同時に辺りから出る独特の匂い……雨の匂いを感じたのだ。この世界に来てからまだ雨が降っていない。久しぶりの雨なのだろう。


 土壌が発する油分が湿気に反応し、この独特の匂いが発生させる、昔、この匂いの原因が気になって調べた事があったのが幸いした。


「えっ? そうなの? そういえば空もどんよりして……あ、降ってきたよ!」


「これは本降りになりそうです。急ぎましょう」


 目印に従い、来た道を引き返そうとしたところ、雨は一気に降り出し、全く見えない訳ではないが、視界も悪くなってきた。


「かなり強く降ってきました、足元に気を付けて下さい!」


 打ち付ける雨粒が体温を急速に奪っていく。既に乾いている場所が無いぐらいまでに服は濡れてしまっている。

 まさか異世界で集中豪雨に遭遇するとは。


「待って、和也! あそこに子供が! なんか泣いてるみたい!」


 ルーミィさんの指差す方向を見ると、確かにしゃがみ込んで泣いている子供が見えた。


「迷子……ですかね。どちらにせよこの雨の中、放ってはおけません、助けに行きましょう!」


 ぬかるむ地面に足を取られないよう、出来るだけ急いで近づくと、服装の色合いから、女の子であると推測出来た。

 だけど行きも同じ道を通ったのだけど、その時は居なかったんだけどな……。スライム探しに集中してたからかな?


 女の子は雨のせいで綺麗な銀髪は肌に張り付き、ケモミミは項垂れ、尻尾も地面を這って丸くなっていた。随分と泥も被っている。

 まだ四、五歳ぐらいの子だろう……いや、待って? ケモミミ? 尻尾? えっ? 獣人? 


「ル、ルーミィさん! この子、ケモミミと尻尾がありますよ!?」


「そりゃ獣人の子供だもん、あるに決まってるじゃない。そんな事より早くしないとあの子風邪引いちゃうよ!」


 そんな事と言われたって……スライムは居るけどモンスターも居ないし、いや、居たら困るけども人以外見るの初めてだからつい。

 女神様はケモノっ娘には慣れているのだろうか、一切動揺は見られない、流石は女神様!


「おじちゃんだあれ? パパとママは? ここどこぉ……ううぅ……」


 俺とルーミィーさんのやり取りに気付き、不安な表情をしながら問いかけて来た。親御さんの居場所を聞いて来る時点で迷子は確定のようだ。


 天気が良いのなら一緒に待ったり探したりするのだが、この豪雨の中でこのまま放置する訳にはいかない。

 女の子とお話をする為に雨に濡れて額に張り付いた前髪をかき上げ、女の子の目線にまでしゃがみ込んだ。


「パパとママからはぐれちゃったのかな? おじちゃんとお姉ちゃんはね、近くにお家があるんだ。怪しい人じゃないからとりあえずそこで雨宿りしない? 雨が上がったら一緒にパパとママ探してあげるからね」


 自分で言っていていまいち説得力に欠けるな……そもそも怪しい人は自分を怪しくないって言うだろうし。


「……うん、わかった! おじちゃんとおねえちゃんのおうち行く!」


 尻尾を跳ね上げ、元気な声で答えてくれた。なんか素直過ぎて何故か罪悪感で胸がいっぱいです。騙している訳ではないからね……。



≪≪≪



 園に戻って来てルーミィさんとケモミミちゃんには先にお風呂に入ってもらっている。

 だが服はずぶ濡れな上に、泥だらけにもなっており、とても着れたものではないだろう。


 ルーミィさんは替えを持っているが、あの子の服のサイズは流石に持っていない。仕方が無い、予行練習を兼ねて神力を使うか……。


 神ブックを手に持ちイメージを膨らます為に目を閉じた……うぅ、寒っ……。早く俺もお風呂に入りたいなぁ。


 ――えっと、折角だから保育園の園内着を具現化してみようかな……俺が子供の時に着ていた物を参考にしよう。

 色は女の子らしくピンクにして、後は尻尾だな……多分尻尾の生え際は昔やったちょっとアレなゲームの感じを参照にするならば、腰下辺りに穴を開けておけばいいかな。あと背の高さはこれぐらいだった……よし、出ておいで~!



 白い光が集まると床に上下の子供用の服、イメージした通りの園内着が現れた。


「おお、相変わらず凄いな、神力って……」


 床に落ちていた小さな服を拾い上げ眺めてみた。その昔、俺が純粋無垢な頃に着用していた服と同じである。思い出すなぁ、これを着て走り回っていた頃を……。


「和也~、この子の服なんだけど……」


 少し感慨にふけっていたところ、お風呂上がりのルーミィさんが声をかけてきた。その後からはバスタオルにくるまれたケモミミ幼女がキョロキョロしながら歩いてきている。


「ええ、先程神力使って用意しておきました。下着はイメージ出来なかったので、今はこれで我慢してもらって下さい」


 流石に子供下着をイメージするのは不可能だ。だって見た事無いし、サイズも分からないもん……。


「わあっ! かわいい! これ、アメリアのふくぅ!?」


 こらこらっ! バスタオル一丁でこっちに来ないの! ってまあ子供だからいっか。それにこの子、名前はアメリアちゃんって言うのか。


「ルーミィさん、着替えさせてあげて下さい。私はその間お風呂に入らせて頂きますね、結構寒くて……」


 お風呂の順番はレディーファーストである。ここでおっさんが我先にと暖を取っていたら問題になる。聞いた人は間違い無く石を投げてくるだろう。


「うん、ごめんね、先に入っちゃって。そっかぁ、アメリアちゃんってお名前なんだね。さあこっちにおいで、新しい服を着ようね。和也、着替え覗いちゃダメだよ!」


 ……ルーミィさん、俺の事を何だと思ってるんですか? おっさん、ロリコンじゃないからね?


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