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異世界4日目 4月4日(木) ②牧場に行く!

 

「よっ! 今日は暖かくて気持ちいいな!」


 今日も食材を購入する為に雑貨店に足を運び、店長のイリアさんから清々しい挨拶を受け取った。


 そのイリアさんの恰好もある意味清々しい。胸元がいつもより大きく開いてるせいか、麗しい谷間がいつもより視界良好である。


 もう少しで見えてはいけない物が見えてしまいそうですよ?

 確かに暖かいのは分かりますが、露出がエスカレートしているように思えるのですが。

 このままでは夏にはどうなってしまうんでしょうか?


 ……全くもって楽しみじゃないですか!!


「和也……」


 はう!? ルーミィさんのジト目が突き刺さる……ま、またその目ですか。わ、分ってます、分かってますよぉ……。


「いやあ、こんちわ。君達が噂の異世界から来た二人だね」


「どうも、初めまして。噂通り賑やかな人達みたいね」


 もはや定番の掛け合いとなりつつある光景の中、声を掛けてきたのは、雑貨店で先にお買い物をしていたカップルからであった。


 当然だが雑貨店は俺達だけのお店では無い。村の方全員が利用している人気店であり、沢山の人が来店している。


 何人かは顔見知りになった村の方も居るのだが、声をかけてくれた方達は始めてお伺いする方達である。


 しっかし……なんだ? この二人は。


 別に、馴れ馴れしい、とかそんな毒づくつもりで思った言葉では無い。

 純粋に驚いたのだ……その二人の容姿に。だってめちゃめちゃ美男美女なんだもん。


 男性の方は金髪に青い瞳の持ち主であり、超が付くほどのテンプレイケメンである。笑顔が眩しい、爽やか好青年だ。

 女性の方は大人の魅力が詰まったミステリアスな美女だ。


 イリアさんやフラムさんみたいにお胸は大きくは誇張していないが、背も高く、それでいて細身ではある為、シルエットが美しい。

 そのスタイルの良さにマッチされ、完成されたものを感じる。


「ああ、そういえばカズヤ達は初めてだな。この男前がアレクで隣の美女はナーシャだ。村外れで牧場をやっている夫婦さ」


 もうひとつ衝撃が走りましたわ……カップルじゃなくて夫婦だったんですね。

 しかし、絵に描いたような理想の夫婦じゃないか。やはり美男と美女は惹かれ合う運命にあるんだな……。


 さて、いつまでも妄想をひた走らせている場合じゃないな。


「初めまして、桜の大樹がある丘に引っ越してきましたカズヤと申します」


「ルーミィです、宜しくお願いいたします」


 二人揃って頭を下げてご挨拶。しかし周りが若いなぁ~、夫婦の二人も完全に俺より年下だろうし、イリアさんも十代後半か二十歳そこそこぐらいに見えるしな……うわぁ、俺だけおっさんじゃないか。


「僕は今イリアさんから紹介されたアレク、隣は妻のナーシャ。これから宜しくね」


 ま、眩しい! 男の俺から見ても惚れぼれするような笑顔だ。しかも気のせいだと思うが笑顔を向けられた瞬間、歯がキラリと光ったような……。


「そうだ、カズヤにルーミィ、一度アレク達の牧場見せてもらったらどうだ? 中々のびのびとしたいい所だぞ?」


 確かに気になる。おそらく雑貨店に置いてある製品は彼らが卸している物もあるだろう。この村の人とは仲良くしていきたい。

 なにより新鮮な食材の生産元と交流があるのは、今後のスライム料理に大きなアドバンテージを与えてくれるだろう。


「広いだけで特に何も無いけどね。良かったら今からでも見に来るかい?」


「お邪魔でなければ是非お伺いさせて頂きたいです!」


 こんな海の物とも山の物とも知れない異世界人に対し、とっても優しいですね……イケメンは心も広いんですね! この村の人は皆いい人達ばかりで助かります。

 というか皆さん基本的に異世界耐性持ってますね……。



≪≪≪



 牧場招待のご厚意に甘え、アレクさん、ナーシャさんと共に牧場に向かう事になり、道中に雑談がてら牧場の事を伺ってみた。


 どうやら牧場にはおじいさんとおばあさんが居るらしく、元々牧場はその二人で経営していたとの事だった。

 そこに縁あって今は四人で一緒に経営しているらしい。まあ、お年寄りを助ける若い力なのかな?


 そんな雑談をしながら村はずれに向かって歩いていると、徐々に視界に緑豊かな広大な土地が広がっていくのが見えた。その手前にはログハウスがあり、その先には変わらすにずっと高原が広がっていた。

 聞くとどうやら目に見える場所一帯が牧場との事らしいのだが……広過ぎやしません? ドーム何個分よ、この面積。


「おや? お客さんかの?」


「あらあら、いらっしゃい」


 牧場の入り口に着くと、お仕事をしているおじいさんとおばあさんからご挨拶を頂いた。てっきりお年寄りのイメージが先行していたが、背筋はピンとしており、白髪ではあるが若々しいお二人であった。


 俺とルーミィさんも自己紹介を済ませ、牧場の見学をさせて頂く事になったのだが、先程まで隣に居たルーミィさんが居ない事に気付いた……何処に行ったの?


「わ~! 和也、見て見て! 牛さんだよ! あっちには羊さんも! いっぱい居るよぉ!」


 居た……勝手に柵の方に行って大きな声で叫んでた。なんだろう、物凄く恥ずかしい……女神様がはしゃぎ過ぎて。


 上司さん……この女神様、本当に落ち着きがありませんね。きっと子供の頃の通知表にも書かれてたに違いありませんよ。

 学校あるか知らないけど。


「すみません、連れが騒がしくて……」


 結局俺が謝る事に……これ! 俺の恥ずかしい気持ちは別に構わないけど、そんなにはしゃいだら動物さん達がびっくりするでしょ!


「いやいや、元気いっぱいの可愛い娘さんじゃのう。なあ、おばあさん」


「ええ、ほんと。私の若い頃にそっくりですわ」


 うん、お年寄りの方はだいたいみんなそう言うよね。


 だけどこのおばあさんの言う事は本当だろう。お歳は召していらっしゃるがとても可愛いのである。さぞかし若い時はモテたであろう。

 ちなみにおじいさんも絶対イケメンだったと確信している。だって今もめっちゃダンディで格好いいんだもの。


 この牧場は美男美女しか居ないじゃないか! 俺だけ仲間外れになってるぞ?


「あっ! 和也! 和也っ!」


 はいはい、大きな声は控えようね……。


「豚さん、逃げちゃったよ!」


 ……なぬ? あ、柵の隙間から抜け出ちゃったのか。


 豚さんは一時の自由を手に入れ、奥の高原の方に向かって全速力で走っていた。これがまた意外と足が速い……動けるDだな、あいつ。


「やれやれ、良く逃げ出すのう、あのやんちゃ坊主は……」


 おじいさんの言葉が終わった直後、一陣の風が捲き起こった。その風が止んだかと思った次の瞬間、先程逃げた豚さんを抱えたおじいさんが目の前に居た……一体何が起こった?


 豚さんが逃げて、おじいさんが捕まえたの? あの一瞬で? 意味分かんないんですけど?


「あ、そろそろ羊を小屋に戻さなきゃ。ちょっと待っててね。カズヤさん、ルーミィちゃん」


 そっかぁ~、俺は疲れてるんだ。異世界に来て気苦労の連続だったもんな。

 目の前で残像を残しながら、羊を小屋に超高速で運んでいるアレクさんが見えてしまってるもんな。あはは。


「お待たせ! じゃあ改めて牧場を案内するね」


 涼しい顔をして十秒程で帰ってきた……丘の向こうに居た沢山の羊を小屋に戻して。

 隣に居るルーミィさんも目を丸くしている。大丈夫、全く同じ気持ちですから。


「あ、あの。少しご質問しても宜しいでしょうか……」


「ん、どうしたんだい?」


「今、全部手で捕まえて小屋に戻したんですか? あの短時間で……」


「うん、そうだよ」


 どうやら俺の疲れから来る幻覚では無かったんですね。そっか、ここ、異世界だったよね……。


 その後、牧場の飼育数や動物の種類を聞いたのだが、これまたとんでもない数であった。牛に豚に羊に鳥、あと趣味で農園や各種製品加工も手掛けているらしい。

 しかも全てを手作業でお仕事しているらしい……訳分かんねえ、異世界牧場。



≪≪≪



 牧場を見学させて頂いたお礼を述べ、今度スライム製品を持って来る事を約束して村に戻って来た。しかし脳裏に刻まれたのは大自然や動物達では無く、アレクさんとおじいさんの動きだった。


「なんか、夢でも見てたのでしょうか?」


「う、うん。私もそう思ってた……」


 アレクさんもおじいさんも何者なんだ? そもそもどうして牧場なんてやってるのだろう。それだけの身体能力あるんなら、魔王とか倒しに行けばいいのに。


 この世界に魔王居るのか知らないけどさ……あ、でも試練選択の時に魔王を倒す云々の試練があったよな。


 という事は……居るな、確実にこの世界の何処かに。


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