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異世界4日目 4月4日(木) ①桜の季節はコレ!

 

 今日は朝から風も暖かく、雲一つ無い晴天となっている。窓からは日差しが穏やかに降り注がれている。


 心地良い日差しが降り注ぐ仕組みになっているさくら保育園のリビング。匠の技が光るナイス設計ですね、上司さん。

 しかしここで甲羅干ししている場合では無い。今日は新製品を引っさげてイベント広場に行きたいのだ。

 とりあえず朝食の支度をしないとな……今日はてっとり早く済ませて新製品の調理にかかりたい。


 よし、今日の朝食はスピーディ、かつ腹持ちの良いあるアレを作ってみるか。



≪≪≪



「シンプルだけど美味しいね! これ、何てお料理?」


 ルーミィさんの手には、頂点をかじられてしまってはいるが、元三角形だったお米の塊が握られている。


「それは塩おむすびと言います。元の世界、と言いますか私の国ではメジャーな料理なんですよ」


 まあ、料理と言う程では無いのだが、パンばかりの朝食というのもアレだしお米を使ってみた訳だ。

 九割は時短の為だけど。


「今日は新製品を作ってみようかと思ってるんですよ……ところでルーミィさん、ほっぺたにご飯粒付いてますよ?」


「えっ! あ、ほんとだ! えへへ……」


 子供ですか……普通に食べたら付かないと思うのだが――


「はむ! はむ! うう~ん! 美味しい~」


 頬に付いたご飯粒を口に運ぶと、再び両手でおむすびを持ち、交互に食べ進め出した……付くわな。そんな食べ方してたら……。


 美少女で女神様なのにそんな食べ方しちゃダメでしょ! もっとお行儀良くして下さいよ……。




 しっかりおむすびも完食されたので後片付けを終わらせた後、再び調理を始める事にした。


「では、新製品の発表です! その名も『スライム桜餅』です!」


「おおっ~!」


 パチパチと手を叩く音がキッチン内にこだました。拍手喝采をありがとう!

 一人からだけど……さて、神ブックにレシピを記録しておこうか。



 ――スライム桜餅――


 材料

 あんこ、砂糖、もち米、スライム(桜、葉)


 調理方法

 ①もち米を蒸す。

 ②もち米と刻んだ桜スライム、砂糖を混ぜ合

 わせる。

 ③混ぜ合わせたもち米であんこを包む。

 ④あんこを入れたをもち米を蒸す。

 ⑤事前に薄切りにした葉スライムの塩漬けを

 もち米にのせて完成。



 前回に引き続き、あんこを使う料理だが、今度は食感とボリュームを重視した和菓子に挑戦してみた。


 そしてこの蒸すという新しい調理法を行う事により、スライムの素材としての新たなポテンシャルを引き出す事に成功した。


 どうやらスライムは一定の温度に辿り着かないと液状化はしないようである。そしてその温度は恐らくは沸点と推測している。


 つまり、100℃を超えなければ固形物として調理する事が可能と言う事になる。

 そしてこの蒸す事により、もう一つ特色も確認出来た。


 今回使用したのは桜スライムなのだが、練り込まれた桜スライムの桃色が一層浮き出ており、もち米と一体化したその様はまるで宝石が散らばったかのようなお餅となった。


 そしてこれは今後の料理に欠かせない特製になるであろう事も発見出来た。


 なんとスライムは味を吸着する性質もあるようであり、試しに塩漬けにしてみた。するとこれまた見事に葉スライムに見事に味移りしていたのだ。


 無味無臭と言われていたスライムに初めて味が付いた瞬間だった。


 これらの要素を全てかけ合わせた結果、彩り抜群の元の世界の桜餅を超える桜餅が完成した。


 怖いわぁ……自分の才能が。まあ、誰かに言う訳でも無いし、ちょっとぐらい調子に乗ったって良いですよね?


「うわ~! 綺麗! ねえねえ! 食べてもいいでしょ?」


「はいはい、どうぞお召し上がり下さい」


 しかし、よく食べますね? さっき朝食食べたばかりでしょうに……。


「うう~! 見た目にも綺麗だし、スライムのみずみずしさともちっとした食感が同時に味わえるよ! しかも何よりこの緑のスライムの塩っけがあんこの甘さをより引き立ててるよ! これは名脇役だね!」


 ナイス食レポです。流石ですね、食いしん坊系女神様。その道のコメンテーターいけますよ?


「それでは好評のようですのでスライム水まんじゅうと合わせて作って行くとしましょう! さあ、じゃんじゃん作りますよ~!」


「は~い! 頑張ってねぇ~!」


 応援ありがとうございます。食べ専女神様……。



≪≪≪



「これでよしっ、と」


 イベント広場に辿り着き、露店ブースを組み立て、昨日の内に作っておいたPOPを張り付けてみた。これはギルドのメイド娘のフラムさんから得たヒントであり、スライム料理の情報が書いてある。

 これでお客様の欲しい情報が一目で分かるだろう。もう一組作っておいたので後で掲示板にも張らせてもらおうかな。


「おっ! やってるな! なかなか評判のようじゃないか!」


 声をかけてくれたのは村長のクレイドさんである。どうやら気にかけて見に来てくれたようである。


「うん? 前のやつとは違うのもあるな。早くも新製品か?」


「ええ、この桜の季節ならではのスライムが居る事をフラムさんから教えてもらえまして。それで作ってみたんですよ」


「フ、フラムさんに聞いたのか、そ、そうか。そ、それは良かったな!」


 なんだ? 急に挙動不審になったぞ? なんかまずい事でも言っただろうか? 


「そうそう、ルーミィさん、フラムさんの分を売り切れる前に別で取っておきましょう」


「うん、そうだね。昨日持って来て欲しいって言ってたしね」


 売り上げアップのヒントをくれたのだ、今日の新製品もサービスで入れておいてあげようではないか。


 今日は新製品もあるし、売り切れちゃいそうだもんな。こっちはギルド用っと……あの、さっきから熱い視線が突き刺さってるんですけど。


 なんでございましょうか、村長さん。まだ在庫はありますから売り切れの心配は大丈夫ですよ?


「そ、その。なんだ。よ、よかったら俺が持って行ってやるよ! ちょうどギルドに行く用事があってさ。あはは。それにほら、客も集まってきたしよ?」


 周りを見渡すと、いつの間にかクレイドさんと話している間に人が集まってきていた。大繁盛な予感と共に激務確定である。

 こうなってくると確かに持って行ってくれるなら助かるんですけども、村長さんをパシらせるっていうのもねえ……。


「あ、そうなんだ。ふふ、和也、クレイドさんに持って言ってもらお!」


 いや、女神様? クレイドさんはこの村で一番偉い人ですよ? もちろん、女神様の方が偉いんでしょうけど、今は再研修中ですからね?

 それに村長さんも忙しいでしょうに。


「お、おう! 任せとけ! ギルドにはマスターとママも居るから新製品と一緒に三個づつ貰えるか? お代は俺が出すからさ!」


 なんかグイグイ来るな……しかもお金は要らないんですけど。


「あ、いえ、これはプレゼントのつもりだったのでお代の方は――」


「いいから! 取っとけって! ほら皆が俺に気を使って待ってるぞ!?」


 店先を覗くと早くも少し離れて行列が出来かけてる……。確かにクレイドさん待ちだな。


「はい、クレイドさん。スライム水まんじゅうとスライム桜餅だよ。フラムに宜しく伝えておいてね!」


「お、おう! う、承ったぜ。そ、それじゃ俺は行くぜ? 商売の邪魔しちゃ悪いしな」


 商品を受け取るとそそくさと露店ブースを後にした……あ、そうだ! POP貼っていいか聞かなきゃいけないんだった!


「クレイドさぁん! 露店ブースの張り紙を掲示板に貼っても宜しいですかぁ!?」


 既にクレイドさんとの距離は結構離れてしまってるけど……届いて、俺の声ぇ!


「お、おう! 好きなだけ貼ってくれ! いくらでも貼ってくれ! じゃあな!」


 とりあえず返事が返ってきたので伝わったようだが……なんだ? 逃げるように去って行ったな。

 しかし好きなだけと言われともそんなにがむしゃらに貼る物でも無いしなぁ。そんな貼り方したらライブハウスみたいになるじゃないか。


 クレイドさんが去ったおかげで一気にお客様が動き出した。スライム水まんじゅうも好評だがやはり新製品にみんな食い付いて来てくれた。

 特にスライム桜餅の出来栄えには時折黄色い歓声が上がっていたぐらいだ。このスライム和菓子シリーズは女性への人気が高く、客層も女性寄りになっている。


 食べ物に関しては女性顧客を獲得する事により次の商戦が有利に進める事が出来る。

 まあ、おばちゃん一人で全てを賄ってしまいそうだけどね……、


 そんな訳で今日も材料があるだけ作ってきたが早々に完売となった。嬉しい悲鳴である。

 惜しくも買えなかった人達は販売時間も分ったので冗談だと思うが、徹夜する云々話していた。


 徹夜は近隣の方のご迷惑になるのでやめて頂きたい。




 今日も無事完売でホクホク顔で露店ブースの片付けをしている中、もうひとり何故か楽しいような期待に満ちているような、表現が難しい表情をしている人が居た。

 当然、ルーミィさんであるが。


「ふふ、フラムか……」


 ルーミィさんが何故かフラムさんの事を呟いていた……一体どうしたんだろうか。おっさんにはよく分からないが、機嫌が良さそうなので追及しなくてもいいだろう。


 見た目は絶世の美少女だけど、結構怒らせると怖いからなぁ……。


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