303.事情聴取
俺は、一人で家に帰ってきた。
「あー、疲れた~」
「セイジ様、お帰りなさい。
どうでした?」
エレナが出迎えてくれる。
「アヤたちは、警察で事情聴取を受けてる。
まあ、終電までには帰ってくるだろう」
「それじゃあ、事件は解決したんですね」
「ああ、もう誰も襲われたりはしないはずだ」
「よかったです!」
まあ、問題が完全に解決したわけじゃないけどね。
そう、黒幕の『ゴールド』のやつが、まだ野放しなのだ。
『ゴールド』に付けておいた【追跡用ビーコン】の映像を見てみると、
まだ連絡待ちでウロウロしているばかりだった。
テロが失敗したことの連絡を受けていないのかな?
そのまま『ゴールド』の様子を見ていると、
『火山あい』が、『ゴールド』がいる部屋に、大急ぎで入ってきた。
『どうした、あい、何かあったのか?』
『た、大変です。
ニュースをご覧になって下さい』
『ん? ニュース?』
『ゴールド』は、その部屋にあったテレビのスイッチを入れた。
「大変なことになりました。
引き続き、番組内容を変更して、
東京同時多発テロ事件の速報をお届けします」
『テロ事件…だと!?』
『それだけじゃないんです、
このテロで、ジュエリー・ナンシーの関係者が、
巻き込まれたみたいなんです』
『なんだと!?』
あれ? ゴールドのやつ、本気で驚いている。
奴が依頼したはずなのに、なぜ驚く?
マフィアたちの行動は、ゴールドが依頼した内容と違っていたのか?
うーむ、良く分からん。
「セイジ様、お茶をお淹れしました」
「ありがとう」
俺は、エレナが入れてくれたお茶を飲みながら、
他のみんなの様子を、エレナと一緒に見てみることにした。
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『だから!
私とママとエレナの3人で、礼拝に行ったの!』
『その、エレナという人は、
どちらにいらっしゃるんですか?』
『……き、消えちゃった』
『そうですか……』
どうやら、ナンシーは警察で事情を聞かれているようだ。
『あの場にいらっしゃった他の方も、
魔法で傷を治してくれた天使がいた
と証言なさっていますが……
そのエレナという方が、
その天使なのですか?』
『そ、そう……』
『なるほど……』
『信じてないでしょ!?
本当にいたのよ!!』
警察官は、困った顔をしていた。
『いいですか、ナンシーさん、
今日、あなたは、とても怖い目にあいました。
過度なストレスが正しい判断を狂わせる。
そんなことは、良くある話です』
『で、でも……』
『常識的に考えてみましょう。
この地球上に、傷を治してしまうような魔法が、
存在すると思いますか?』
『いいえ……』
『では、人が急に消えてしまったりすることは、
あると思いますか?』
『……いいえ……』
どうやら、エレナのことを信じてもらえなくて困惑しているみたいだな。
ごめんな、ナンシー。
『それでも! エレナは、いたのよ!!!』
『……そうですか、
ナンシーさんは、だいぶお疲れのようですね。
お話を聞かせていただくのは、
また後日にしましょう』
『はい……』
ナンシーは、うなだれて部屋を出て行った。
「セイジ様、ナンシーさんがちょっと可愛そうです」
「まあ、仕方ないよ」
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ママさんは、別の部屋で話を聞かれていた。
『では、
襲われることに心当たりは無いのですか?』
『あるわけ無いでしょ!』
『しかしですね、
あなたとお嬢さんのナンシーさんだけではなく、
専属モデルのめぐみさんの通う高校、
専属デザイナーのりんごさんまでも
同時にテロにあったのですよ?
これはもう、あなた方が狙われたとしか
考えられないわけで…』
『めぐみとりんごも狙われたですって!!
二人は無事なの!?』
『ええ、二人ともご無事です。
めぐみさんは、襲われた高校にはおらず
りんごさんは、お友達に助けられたそうです』
『よかった……』
どうやら警察も、ジュエリーナンシーが狙われていることに気がついたみたいだな。
さて、どうしたものか。
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「そこで、私の正拳突きが炸裂して!」
「す、すいません…
戦いの内容の話は、
ひとまず置いておいてもらってですね……
襲われた経緯とか……」
「そんなの、知らないよ」
「で、ですよね……」
アヤも事情を聞かれているみたいだが、
話を聞いている婦警さんも、アヤの無軌道さにタジタジになっている。
アヤ、警察にご迷惑をかけるんじゃないよ!
「相手は銃を持っていたのですよね?
怖くなかったんですか?」
「それなら、にいちゃ…」
「にいちゃ?」
「ちがった、
なんか、銃が暴発して壊れたみたいで、
途中で銃を捨てちゃったんです」
「そうだったんですか、
でも、相手は刃物ももっていたのですよね?」
「刃物なんて私にかかれば、お茶の子ざーさいよ!」
それをいうなら『さいさい』だ!
『ザーサイ』をお茶請けにでもするつもりかよ!
「えーと、そちらの方は……
19歳!? 嘘でしょ?」
「まあ、驚かれるのは慣れてるから別にいけどね」
「あ、失礼しました」
こんどは、横にいた舞衣さんに話を聞くみたいだ。
「えーと、空手がお得意だとか」
「ああ、そうだよ。
これでも全国大会で優勝したりしているからね」
「す、すごいんですね……」
「今回のことは、
正当防衛ってことでいいんだよね?」
「もちろんです、
相手は武器を持ったテロリストですし、
逆に表彰されるかもしれません」
「表彰!?
もしかして、
『警視総監賞』とかもらえちゃったりするの!?」
アヤが、横から割り込んできた。
「ええ、そうなる可能性はありますよ」
「やったー!!
部長、『警視総監賞』だって」
まあ、とりあえず、
アヤたちも変なことにはなってないみたいだし、
問題なさそうだな。
百合恵さんとりんごは、病院で検査を受けていた。
どこも怪我などしていないはずだが、
一応ということだろう。
ヒルダとめぐみちゃんは、楽しそうに夕飯を食べていた。
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ふう、これで一件落着だな。
これでもう、何も怖くない……。
あれ? 俺、なにか変なことを言ったかな?
その時!
またもや、警戒魔法が『危険』をしらせてきた。
え? どういこと?
もうみんな、助けたはず……。
危険に陥っているのは、
いったい誰だ!?
ご感想お待ちしております。




