表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/21

第1話 転生前と卵時代の俺

 新宿の雑居ビルでしがないサラリーマンをやっていた29歳男性、独身。

 メガネがトレードマーク、趣味は週末のアニメ鑑賞と、たまに同僚と行く居酒屋で生ビール。

 地味だけど、まあ悪くない人生だった。少なくとも、そう思ってた。


 その日の朝も、いつものように目覚まし時計の電子音に叩き起こされた。

 カーテンの隙間から差し込む光が、コーヒーの染みがついた机を照らす。

 スマホを手に取ると、通知が山盛り。上司から「レポートの進捗どう?」、メールでクライアントから「至急ご確認お願いします」。

 はあ、なんで俺の人生、こんな書類地獄なんだよ。


「よし、今日も頑張るか……」


 鏡の前で呟きながら、寝癖のついた髪を整える。

 メガネをかけ、スーツに袖を通し、いつものルーティン。

 駅に向かう道すがら、コンビニで買った缶コーヒーをちびちび飲む。

 新宿の雑踏は、朝から喧騒に満ちてた。

 サラリーマン、学生、観光客がごちゃ混ぜになり、看板のネオンがまだ薄暗い空に映える。

 俺はイヤホンで適当なポッドキャストを流しながら、電車に揺られる準備をしてた。

 でも、人生ってのは予測不能なもんだ。

 コンビニを出て横断歩道を渡ろうとした瞬間、けたたましいクラクションが響いた。

 振り返ると、トラックのヘッドライトが目に焼きつく。あ、ヤバい。


「うわっ!?」


 次の瞬間、俺の意識は真っ暗に落ちた。

 痛みも何も感じなかった。

 ただ、頭の中で一瞬だけ思ったんだ。

 マジか、トラック転生テンプレじゃん……せめてカッコいい死に方したかったな。


  ◇


 ここから話はガラッと変わる。

 俺の視点も一旦お休みで、ちょっと三人称で進む。


 舞台は、雲を突き抜けるような高い山脈。

 そこに、巨竜ホワイトドラゴン・シルヴァリスが住んでいた。

 白銀の鱗が月光を浴びて輝き、翼を広げれば嵐を呼ぶような存在だ。

 彼女の巣は、岩肌に刻まれた巨大な洞窟。

 そこには、愛するパートナー、青鱗のドラゴン・サフィールと、二つの卵があった。

 シルヴァリスは、卵を温めながらサフィールに囁いた。


「この子たちは、きっと特別な子になるわ。感じるの、強い力が宿ってるって」


 サフィールは、低い唸り声で答えた。


「そうだな、シルヴァリス。俺たちの血を継ぐ子だ。世界を変えるかもしれない」


 二つの卵は、まるで星の光を閉じ込めたように輝いていた。

 一つはエメラルドのように緑がかった光、もう一つは深い藍色の光。

 そう、緑の卵の中にいたのが、俺の魂だった。

 いや、なんで俺がドラゴンの卵に転生してんだよって話なんだけど、その辺は後で考えるとして。


 平和な時間は、しかし、長くは続かなかった。

 ある夜、漆黒の鱗を持つブラックドラゴン・ヴォルガノスが、雷鳴のような咆哮を上げて襲来した。

 山が揺れ、岩が砕け、洞窟の入り口が炎に包まれた。


「シルヴァリス! 卵を守れ!」


 サフィールが叫び、翼を広げてヴォルガノスに立ち向かった。

 シルヴァリスは卵を抱え、洞窟の奥へと退避した。

 だが、その隙をついて、赤い肌のレッドゴブリンの一団が忍び寄っていた。

 リーダーのゴブリンは、鋭い目で卵を見つめ、ニヤリと笑った。

 ゴブリンたちは、シルヴァリスがヴォルガノスと戦う轟音に紛れ、卵を一つ盗み出した。

 俺の卵だ。もう一つの卵は、シルヴァリスが死守したが、俺のはゴブリンの手に渡ってしまった。

 いや、ちょっと待て、俺の人生(卵生?)こんな序盤で盗品扱いかよ!


 ゴブリンたちは、卵を布に包んで山を下った。

 だが、運の悪いことに、谷間の吊り橋を渡る時、リーダーのゴブリンが足を滑らせた。


「おわっ!?」


 卵はゴブリンの手からポロリと落ち、谷底の川へ。

 どんぶらこ、どんぶらこと、俺の卵は激流に流された。

 ゴブリンたちは呆然と見送るしかなかった。


「ゴブゴブ!」

「ゴブ、ゴブゴブ!」


 ゴブリンたちの言い争いが遠ざかる中、俺の卵は川を下り、森の奥深くへと運ばれていった。

 川の流れは次第に穏やかになり、卵は岸辺の柔らかい苔の上に打ち上げられた。

 そこで、俺はしばらくの間、静かな眠りについた。

 いや、眠りってか、卵だから意識ないんだけどさ。

 転生設定、めっちゃ雑じゃね?


  ◇


 さて、時間が少し進む。

 季節は初夏、森は緑に溢れ、小鳥のさえずりが響く。

 川辺に打ち上げられた卵のそばに、金髪のツインテールがピョンピョン揺れる女の子がやってきた。

 彼女の名前はエルちゃん。

 見た目は8歳くらい、大きな瞳がキラキラ輝き、手にはキノコを入れる籠を持ってる。

 エルちゃんは、苔の上でキラキラ光る卵を見つけて、目を丸くした。


「わあ! 何これ、キレイな石!? でも、なんか温かい……卵?」


 彼女は恐る恐る卵に触れ、そっと持ち上げた。

 卵は、まるで応えるように、かすかに揺れた。

 エルちゃんの顔がパッと明るくなる。


「生きてる! すごい、すごい! ねえ、どんな子が生まれるのかな?」


 エルちゃんは卵を籠に入れ、スキップしながら村へ帰った。

 村は、森に囲まれた小さな集落。

 木造の家々が並び、朝はパンの焼ける匂いが漂い、夕方は子供たちの笑い声が響く。

 エルちゃんの家は、村外れの小さな小屋。

 屋根にはツタが絡まり、窓辺にはハーブの鉢植えが並ぶ。

 彼女は卵を毛布に包み、暖炉のそばに置いた。

 毎日、卵を撫でながら話しかけた。


「早く生まれておいでね! どんな子かな? 鳥さん? トカゲさん? うふふ、楽しみ!」


 そんな日々が数週間続いたある朝、卵にヒビが入った。

 エルちゃんが目を輝かせて見守る中、俺、いや、ミニドラゴンが、この世界に生まれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ