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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚

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骨は軋み肉片が身体の内側を蠢きその形を徐々に変えていく。

皮膚の表面には目の前の敵に近づく為の強固な殻である鱗を生やし手は礼儀に倣い爪を生やす。

ローブがめくれて服を裂き膨張した筋肉が膨らみそして縮み外へ外へと逃れようとする力を凝縮した。


「グルルァァァァッ…本当に貴女は愚かで強者だ」


目の前の獣がそう呟くとその姿は白に染め上げられると瞬きをした後姿は消えた。

直線上に走って次見た時には目の前で爪を振り上げている。

その爪程度では鱗は引き裂けない…が高温に晒されては鱗が溶け落ちる事だろう。


メタモルフォーゼで生まれ変わった両腕の性質は『アースワイバーン』の力を持つ。

この国に来て苦戦を強いられた魔物から貰った性質だ。

アースワイバーンはその名の通りの自然を表す土の属性…水ほど強くは出れないがそれでも火には対抗できる。


振り下ろされてそれを防いだ鱗がゆっくりと下へと沈む。

鱗があってなお溶け落ちようとしている…それだけ高温ならば生身で受けたらヤバいとしか言いようがない。

急に変化したまだ慣れない身体に喝を入れ爪を押し除けバックステップで後ろへと下がる。


「ハハッ…もうその攻撃も防げるぜ?」


口ではこう言ったものの未だ私の身体は変化途中で未完成。

急遽防げるように腕はアースワイバーンへと目はその速度に追いつけるようドラゴンフライの複眼へと変えた。


…ちなみにドラゴンフライというのはトンボだ虫の方のやつ。

この世界ではスナック感覚で子供の個体が食べられているらしい。

私は食堂でドラゴンが喰えると思って注文したら出てきた…度肝を抜いた。


虫の複眼ってのは意外に人間が見ている世界とは違うように見えているらしい。

そんな嘘物語を前にインターネットで見たがまさかここまで違って見えるとは…見える全てが遅くなる。

まだ私が人間だからかそれとも単純にメタモルフォーゼの熟練度不足なのかは分からないが目を凝らさないとその能力は発揮できない。


「シィィィッ!ハァッ!」


「グルルッ…そんな継ぎ剥ぎのような身体で動けるとは」


大きく肥大化したその筋肉の塊を振り回して攻撃する。

目の前の敵と同じように大きく振りかぶり振り落とし攻撃しようとするとトゥランベル嬢はその隙を見逃さず腹へその高温の爪で攻撃しようとしてくる。

だがその攻撃をもう片方の腕で掴むと同時にあちらも私が振り落としそうとする腕を掴んだ。


掴んだ箇所からは高温に晒されて白い煙を出しながら溶解していく鱗が見える。

このまま掴み合っていたら間違いなく殺されるのは自分だ。


「このまま喰らい付いてやるッ!」


そうしてどうするべきか悩んでいるとトゥランベル嬢はその顔の頬を上へと上げ口を開くと噛みつこうとしてくる。

逃れようとするが強く掴まれ逃れられない…口が近づき頭に迫る。

だからこそ自らの腕を引きちぎり上へと飛び上がる。


今回メタモルフォーゼで生やしたのはグラスウルフという草原に潜む狼の脚部分。

その脚力は草原を駆け抜け集団行動をし一気に敵を追い詰め主に兎を狩る…一見すると兎如きのスピードかと思われるがこの世界の兎は普通じゃない。

魔物から逃げ切る為その脚は強化され脚力のみで人の頭蓋骨を粉々にするとも言われている。


そんな兎の脚力とこのグラスウルフという魔物が同等なのだ。

並行思考で今の状況を考える…今私は隙を晒した後腕を引きちぎり上へと飛び上がった事で更に隙を晒した。

腕の再生をしても一瞬で生やすなんて芸当は出来ない。


「ならば…魔法陣展開『エアロスラッシュ』ッ!」


並行思考の隅で作り置きしていた魔術の一つを引きちぎれた腕の先から展開する。

両腕の先からは暴風が吹き荒れ薄緑の魔力が刃を作り出す。

風は火を煽り呑み込まれる為属性的には不利だが一瞬のみの一撃一退ならばこちらが有利だろう。


腕を振い避けた事で間抜け面を晒したその横顔へ片腕の風の刃で切りつけた。

傷口からは高温で白くなった炎が噴き出て風の刃を呑み込み一瞬私の腕全体に炎が包もうとするが後ろへと下がり火が無くなった所でもう一度突撃する。

二度目の攻撃は先ほどとは違い両腕での攻撃…脚で移動先が読まれないようステップを刻み詰め寄ると爪の形をした炎が顔の横を通り過ぎる。


「出し惜しみは無しで行くわ…神授奥義『烈風爪』ッ!」


高温の炎が風で煽られ火花が白色に染まった散る。

地面の廃材はあまりの高温に赤くなり白い斑点をつけて溶解してその大地を溶岩のように変えていく。

身体を縮め更に白く発光させその身体自体が爪であるような錯覚を与えた。


超加速と言えるスピードで突進すると同時に爪を振い私を制圧しようとしそれを目視で確認した後身体を動かして避ける。

一つは地へと叩きつけられもう一つは私の残った腕へと引っかかる…先程よりも多く煙を出して鱗は溶ける。


「ガァァァァッ!」


一度咆哮を上げれば地についた腕が4本に増え私のことを抑え込もうとする。

全くもって原理がわからないが…白く輝くナックルダスターの手甲につけられた指と指との間にある刃が炎によって変形したのか?

いやそんなことありえるわけがない…兎に角この腕は実態があり当たるわけには行かない。


振り払われる4本の腕にエアロスラッシュを当てるが斬れず逆に弾き返される。

質量を持つ炎という非現実的な魔法の法則による存在。

私はまだそれを解明することは出来ないが…今は質量があったことに感謝しよう。

質量が無ければ弾き返されることなく炎を顔面から被っていたかもしれんからな。


「グルルゥ…逃げるのが本当に上手ね?」


そう呟くと体勢を起こし8本の大爪を持つ腕を構える。

2本の本来の実態のある腕にそれと対となるように宙に浮かぶ6本の質量がある炎の腕が手を開いたり握りしめたりしながらこちらを威嚇する。

その6本の腕は炎だからこそ本人から離れたり出来る…遠距離攻撃も出来るってわけか。


トゥランベル嬢の神授奥義『烈風爪』によりあの6本の腕ができたってことは腕を作り出すには奥義が必要となるのだろう。

ならばあの白く染まる炎はその副産物…コレだけの威力があって副産物って相当チートだ。

口の内側で何それファンネルかよと呟き構えを取る。


「私は…貴女と同じ狩る側なんでね…そぉれ魔法陣展開『エアーカッター』ッ!」


私は今の時間稼ぎで描き切ったエアーカッターを腕に付けたエアロスラッシュと共に射出する。

当然その風による攻撃は8本の腕により止められる。


だがその隙に『回生』と『メタモルフォーゼ』を行い急速に腕を元に戻していく。

流石にこうなれば腕無し魔力垂れ流しで戦えるはずが無い…魔力ももう少ししか無いがやるしか無い。


「再生完了…じゃあもう一度再開しよう?」


「フンッ…何度やっても同じ事よ」

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