「もう、5年前から結婚してるじゃない」
「なるほどねええええええ!!私が5年間も勘違いしていたっていう、そういう感じね!!!!」
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。と、エリザベスは頭を抱えた。
「ま、まぁ、ベティ…こうやって呪いも解けたことだし…」
「5年間、一切、王さまが夜伽に訪れないから、女としての魅力がないのかと思っていたけどそういうことじゃなかったのね!!いや、好きでもない、好みでもない、だいぶ年上の男性に夜、寝台に来られても困るんだけどね!!!」
エリザベスの耳には王太子の言葉なんて入ってはいない。
「ベティ!君はすごく魅力的だよ!!!!!」
エリザベスの混乱を遮るように、王太子は声を張る。王太子はぎゅっとエリザベスの手を握りしめた。
「あ、ありがとう…」
混乱していたエリザベスの動きがぴたっと止まる。
「毎日毎日、僕に向かって、世界で一番美しいのは誰って聞いてきていた君はとても愛らしかった!日々、苦労しつつも公務に取り組み、民の声を熱心に聞く君は美しかった!僕の旧エリザベスに裏切られた心を癒してくれたのは君だった!呪いが徐々に解けてきて、君とできるようになった雑談はとても楽しかった!もう、僕には君しか考えられないんだ、5年越しになるけど改めて言わせてくれ。僕と結婚してくれ!」
エリザベスの手をぎゅうぎゅうと握りしめながら、王太子は話す。エリザベスにとっては痛いくらいだったが、その痛みに王太子からの思いの強さを感じた。
エリザベスは、王太子の呪いの解き方を思い出す。「王子と結婚する相手が真実の愛を見つける」。つまりは、エリザベスも知らず知らずのうちに王太子のことを憎からず思っているということだ。そう考えると、一気にエリザベスの体温が急上昇する。自分の思いを自覚したエリザベスは、血が沸騰するのではないかとさえ思いつつも、なんだか5年間自分だけが騙されていたような悔しい感覚もあり、いたたまれない気持ちもまま口を開く。
「もう、5年前から結婚してるじゃない」
赤い顔を隠すためそっぽを向きながら答える。
「ふは、ベティ。君が恥ずかしいときにする癖がでてるよ」
王太子は、エリザベスをそっと抱きしめた。
それから、王城に帰ったエリザベスたちは、事の次第の報告を王さまにした。
5年ぶりの王太子の帰還と白雪姫の結婚に大いに国は沸き、1週間にわたる祭りが開催された。王族も貴族も平民も関係なくどんちゃん騒ぎだった。
その後、白雪姫は西の国に嫁いでいき、王は隠居し、王太子とエリザベスで末永く国を盛り上げていったのであった。
めでたし、めでたし。
お読みいただきありがとうございました!
作中には登場していませんが、仮死状態の薬に関しては、ロミオとジュリエットのオマージュとなっております!