妖刀
事件から数日、全身の火傷で入院していた龍二だったが、陰陽技官たちの術のおかげで回復は早かった。
だが、陰陽道に精通している医師ですら、その回復力の異常さに驚いたという。運ばれたときには、再起不能といっても過言ではない状態だったそうだ。
桃華は入院するほどではなく、酷い火傷ではあったものの毎日通院するぐらいで大丈夫だった。
その点は龍二も安心したが、病院に来るたびに「龍二さん、元気ですかーー!? お見舞いに来ましたよーっ!」と、暑苦しい調子で見舞いに来るものだから、他の患者や看護師の生暖かい視線にゲンナリした。ただ、いつもと変わらない様子がありがたい。
龍二は退院後、先日の事件の重要参考人として陰陽庁の支局へと連行され、取り調べを受けた。
なぜあの場にいたのか、ただの一般人がなぜ妖と戦おうとしたのか、どうやって牛鬼を倒したのかなど。
桃華にも同じことを聞いたのだろうが、聞かれたことは包み隠さずすべて話した。
だがそれだけでは、許してくれなかった。
龍二の力のことだ。
複数の陰陽技官に目撃されているのだから、言い訳のしようがない。
あの刀はいったいなんなのか、どんな力を持つ半妖なのか、高圧的に問い質されたが、それは龍二自身にも分からず答えられなかった。
それに、突然空から刀が降って来たなんて言っても、信じてもらえるわけがない。
龍二の答えが要領を得ず担当の技官が苛立ち始めた頃、現れたのは桃華の父、嵐堂銀次だった。
「――龍二くんは、私のほうで引き取ることになりました。彼には人へ害を成す意思はありませんし、これ以上の取り調べは不要です」
彼はそう告げた。
そんな簡単に済むことではないだろうと思う龍二だったが、なぜだか技官たちは銀次が言うならばと、簡単に龍二の身を解放した。
陰陽庁のOBというのは、そこまでの権力を保持しているものなのだろうかと、首を傾げるがようやく解放されたので良しとする。
「――回復は順調のようだね」
その後、銀次から「大事な話がある」ということで、龍二は嵐堂家の居間で銀次と向かい合っていた。
木目調のテーブルを挟んで畳の上に正座し、龍二の横には桃華が緊張の面持ちで背筋をピンと伸ばしている。縁側の格子状の引き戸は開けられており、中庭から舞い込む陽光はポカポカとして心地良い。
ゆったりとした様子で背筋を伸ばして座っている銀次の横には、梅柄の刺繍がされた紺色の刀袋が置かれている。
「……なんでお前がそわそわしてるんだ?」
龍二は頭に疑問符を浮かべ、隣で落ち着きなく視線をキョロキョロさせている桃華へ問う。
「だ、だって、これから龍二さんの秘密が明かされるんですよ? なんかドキドキしちゃうじゃないですかー」
「そうか?」
「まったく、これだから龍二さんは」
龍二の冷淡な反応に、桃華はやれやれ仕方がないなとため息を吐く。
なんだかイラッときた龍二だったが、目の前で銀次が咳払いすると、まっすぐに前を向いた。
彼は横に置いていた刀を掴むと告げた。
「まずはこれを返そう」
「っ! どうして銀次さんがそれを!?」
刀袋から取り出されたのは、龍二の力を封印していた刀だった。
黒い鞘に納められた刀は、もう封印の呪符が貼られていないためか、禍々しく強大な妖気を溢れさせている。
しかしこれは、陰陽庁に没収され支局で保管されていたはず。
この男はそれすらも取り返したというのか。
「この刀の名は、『妖刀・黒災牙』」
「黒災牙?」
「君の父の牙を元に作られた刀だ」
「え?」
思わぬ言葉に龍二は目を丸くする。
父は龍二が物心ついたときからおらず、母も詳しくは話そうとしなかったため、どんな人物だったのか知らない。
それに牙を元に作られたという言葉に違和感を感じる。
龍二は自分の中で渦巻いていた疑問の答えが、すぐ目の前にあるのだと悟った。
覚悟を決め強い眼差しで銀次の目を見ると、彼も分かったというように頷く。
「君も想像していることだと思うが、君の父『鬼屋敷皇鬼』は人間ではない」
龍二の横で桃華が「えぇっ!?」とひっくり返りそうなほどオーバーなリアクションをとるが、龍二は特に驚かない。
牛鬼と戦ったときに彼が扱っていた力は、疑いようもなく妖力。つまり妖が扱う力だ。
しかし母は間違いなく人間。
そうなると、考えられる可能性はかなり限られてくるのだ。
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