歴代の話~九代目のこと~
続けて歴代の話です。
もう一話続きます。
九代目は白の洋猫のオスでアラジンといった。シャーロックと同じように成猫になって放浪していたのが、家に迷いこんで来て住み着いた。裏口から侵入してパトラの餌を食べていたのが初見らしい。
真っ白の大きな身体に水色の瞳。優しい、若干臆病とも言える性格をしていて先にご飯を食べていてもパトラが来れば場を譲る、など遠慮がちな子で、先輩の彼女に対してよく気を配っていた。受入れたのには女王様が嫌がらなかった、というのも大きかったようだ。名前の由来は魔法のランプのアラジンらしいけど、理由の方はわからない。
野良の経験があった為か、この子はよくわざと体を汚して来た。真っ白な体が目立つのが気になるようだ。あまりに汚いので洗ったら次の日には炭やら砂やらで真っ黒にしてくるなんて事が何度もあったのである。その辺の焼けた灰だの砂場だのの中でゴロンゴロンと盛大に転げ回ってきたに違いない。
折角綺麗な白なのにもったいない、と人間は嘆いたけれどもそれが本人ならぬ本猫の望みなんだから仕方ない。ほどほどの汚れは目をつぶるという協定が母との間で結ばれたようだった。
臆病な性格だからか、喧嘩もしないようでほとんど怪我をしてくる事はなかった。他の猫に会うといつも穏やかに挨拶を交わしていて争う様子を一切見せなかった。領域の主は完全にパトラに任せて、間借りしてるだけという姿勢を崩さなかったようだ。何かあるとすぐに飛び上がってダッシュでどこかの影に逃げ込んでいた。性格からすると、雷を怖がったのは彼だったかもしれない。
そんな一方でもぐら捕り名人で、男の人の手の平程大きなのからどうやったのか赤ちゃんもぐらまで何匹も捕って来て、我が家の庭からはもぐらが駆逐された。そんな所も気に入ったのか、パトラも結構アラジンには寛大で、時々頭や身体を舐めてやっていた。綺麗好きなパトラには彼の汚れ方が気になったのかもしれない。
「もう、この子ったらこんなに汚しちゃって」といったところだろうか。
◇
我が家に来て二年を数えた頃の夏、突然アラジンの身体中あちこちに発疹が出来て、強いかゆみと発熱やら何やらで体力を消耗し、1週間もせずに死んでしまった。白い大きな身体中にノミが飛んでいたけれど、誰も気にも止めなかった。
この時も病院には連れて行ったのだが、エサが代わったせいじゃないか(代えていない)とか、外で皮膚病を拾って来たんじゃないか、とか色々極めてあやふやな理由を述べ、栄養剤を注射して終わりだった。
六代目の兄猫アレクを、先代シャーロックを診たのと同じ、犬猫診ますと看板に掲げた獣医である。しかしながら、なげやりささえ感じる程あまりにも適当な診断には不信感しか残らなかったのである。




