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かしかり  作者: 湯城木肌
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少女-19.これから

 良かった。

 仮だけれど告白は成功した。これを成功したと言わずに何と言うだろう。

 嬉しい。本当に嬉しい。

 仮でも、恋人なんだ。


「ちょっとぉあんたたちぃ、映画観るの観ないの?」

 しがわれた声が聞こえた。声のしたほうに視線をやると、チケットカウンターから四十代後半のおばさんが顔を出している。

 そこでようやくここが街中だということを思い出して恥ずかしくなった。だが幸いなことに周りを見回しても通行人や野次馬は見当たらなかった。田舎で良かった。見られたのはこのおばさんだけのはずだ。


「あ、はい観ます観ます」

 相沢くんが返事をして、チケットカウンターへ向かう。わたしも着いていく。

 彼が恋愛映画のチケットを二枚購入の旨を伝える。わたしは張ってあるタイムスケジュールに視線をやると次の上映まで時間があと少しだった。

「でさぁ」お金を払う前におばさんはニヤニヤとした顔でわたし達を交互に眺めた。「カップル割引があるんだけど、使う?」

「え?」

「へやっ」

 カップル。そうか、もうそう呼ばれるんだ。

「そんな割引あるんですか?」

 彼はカウンターに張ってある表示にざっと目を通した。彼の隣でわたしもそれに倣う。レディース割引や学生割引はあるけれど、確かにカップル割引なんて文字は見当たらない。

「そうよぉ。今あたしが作ったんだから」

「それってどういう」

「いいもの聞かせてもらったからねぇ。で、どうなのあんたたちは付き合ってるの? カップル割引は千円割引よ?」

 彼女はニヤニヤ顔を戻さない。


「あ、ただ付き合ってるって口で言うだけじゃ駄目よ? なにか証明しなきゃあねぇ? 例えばキスとか」

 キャーとまるで青春時代を謳歌しているかのような声を出す。声が高くないからかキャピキャピという印象からは程遠い。

 キ、キスって魚のことじゃなく、口でするキスのことか。どうするのかな、と彼の顔をちらりと見る。

「普通の学生料金で払いますよ。はい」

 躊躇うことなく、彼は料金を置いた。そうだよね。キスとか早いよね。

「あら?」

「すみませんね。カップルだけど、そういうのはまだこれからなんで」

 彼の言葉に、力強く頷いた。


 そうだ。わたし達の関係はこれから築いていくんだ。

 一緒に笑って泣いて喧嘩して。


 仮がとれるのは一体いつになるだろう。

いかがでしたでしょうか。


描写が拙さや毎度変わる視点等気になるところがあったとは思いますが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

よろしければ改善点を教えてくださるとうれしいです。


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