「和香様の策」
お待たせ致しました
部屋の中に居た者を見る成り、呆れてぱっくりと口を開いた雨子様、傍らでにやにやと笑っている和香様に向かって言う。
「和香、これは一体何の冗談なのじゃ?」
小和香様に促され、雨子様に続き部屋の中に入ってきた祐二もまた、ぎょっと目を丸くしたかと思うと、言葉が出てこない。
だが暫しの時を置いて、ようやっとのことで言葉を作るのだった。
「え?僕?雨子さん?」
雨子様が呆れ、祐二が嘗て無いほど驚くのも無理は無い。
和香様の隣に並び立つ二つの人影は、一人は雨子様であり、もう一人は祐二その人なのだった。
「和香、一体どう言うことで笹姫達をこの様な姿にしたのじゃ?」
そう問う雨子様の言葉を聞いた祐二が、海老のように仰け反りながら裏返った声で問いかける。
「ふぇっ?笹姫さんなの?…と言うことは僕は次郎太さん?」
そうやって驚き続ける祐二を見ていた和香様、実に嬉しそうに笑みを浮かべる。
「やあやあ、やっぱり祐二君はうちらの期待を裏切らへんなあ。それに引き替え雨子ちゃんと来たら…」
そう言いながら思いっきり膨れっ面をする和香様。
その様子を見て苦虫を噛みつぶしたような顔をしながら答える雨子様。
「和香は一体我のことを、何じゃと思うて居るのじゃ?」
「雨子ちゃん…」
「ぶふっ!」
祐二の後ろで突然誰かの吹き出す音がする。
驚いた祐二が振り返ると、ハンカチで顔を覆い隠した小和香様が、声を殺しながら笑っているのだった。
そんな祐二と神様方の反応を見ながら、偽雨子様と偽祐二は何とも所在なげな表情を浮かべていた。
そんな彼らのことを見ながら、雨子様が申し訳なさそうに言うのだった。
「済まぬの其方ら、和香の悪ふざけに付き合わせてしもうて…」
すると途端に和香様が気色ばむ。
「あ~~、酷い、何言うてるの雨子ちゃん。何も悪ふざけしているのとちゃうで?」
途端に好奇心の虫が疼いたのか、雨子様が身を乗り出して聞くのだった。
「ほう…、悪ふざけで無いと言うのなら何じゃと言うのかや?其方もしや…」
何かに気が付いたように見える雨子様に対して、和香様は、ぽんと膝を打つと嬉しそうに言うのだった。
「そのもしややで。雨子ちゃんが祐二君の出席日数とか、その辺のこと気にしとったやろ?」
「もしかしてこやつらを代理に出すつもりじゃったのかや?」
「おお当たりぃ~~~~!」
「大当たりでは無いわ!」
軽くでは有るが突如として、和香様のおつむをぽかりと小突いてしまう雨子様。
それを見て笹姫達がおろおろし出すのを見ていた小和香様、「いつものことです」とさらりと言ってのけるのだった。
「大体じゃな、付け焼き刃で我らのふりをさせた所で、ばれてしまうのは時間の問題じゃ。其方は一体どうやってこの者達と、我らの間の齟齬を無くそうというのじゃ?それこそ下手をすれば、学校に行けなくなってしまうでは無いか?」
半ば憤慨しながらそう言う雨子様、それも自分の為というより多分祐二の為なのだろう。
だが和香様、雨子様のその言葉を聞いて尚、余裕を見せるのだった。
「そこでこれやねん」
なんだかとても得意げにそう言うと、和香様は懐から三個の緑の腕輪を出してくるのだった。その内の二つは少し色が薄く、一つだけ沈んだ濃い色をしているのだった。
「それでそれは一体何なのじゃ?」
雨子様がそう問いかけると、和香様は実に嬉しそうに言うのだった。
「嬉しいやんか、笹姫ちゃんらのことは見抜けても、これは分からへんかったんやなあ」
「良いから早う言わぬか?」
何だかぷりぷりしながらそう言う雨子様。祐二が思うに見抜けないことが余程悔しいらしい。口元が微かに引き攣っているのを見ても良く分かるのだった。
そんな雨子様のことを嬉しそうに見つめながら、和香様が説明を始める。
「言うてみたらそれは遠距離版の念話増幅器みたいなもんやな。濃いのが雨子ちゃんの分で、薄いの二つがそれぞれ笹姫ちゃんと次郎太のや」
その説明を受けた雨子様が、腑に落ちないと言った顔をしながら問い返す。
「念話増幅器とな?携帯ではいかんのかや?」
そう言う雨子様に、和香様はおやおやと言った表情をしながら言うのだった。
「雨子ちゃんて、携帯で話せば十分なほど単純な存在やったっけ?それこそそんなもんでは伝えたいことも伝えられへんやろ?」
「むぐぐぐ…」
此処は和香様に一本とられた感じの雨子様、更に問いかけるのだった。
「ならば祐二はどうなって居るのじゃ?」
「そこなんやけどな、祐二君、陞神の修行は相変わらず続けて居るみたいやけど、現状は未だ気の扱いだけやんか?実際に神とあるためには、まだまだ演算部の開拓が出来てへん。そんな祐二君にそのままあれ渡したら、不必要な情報まで食ろうてパンクし兼ねへん。そやからや、雨子ちゃん」
パンクという不穏な言葉を聞いた雨子様、顔を顰めながら問い返す。
「なんじゃと言うのじゃ?」
「この二人の情報は一旦全て雨子ちゃんの方で管理して貰って、そこから必要な分だけ祐二君に移したってくれる?」
「我がかや?」
「そや、雨子ちゃんやったら一番祐二君のことよう知っとるし、加減も分かるやろ?」
「それはまあそうじゃの…」
少し不満げに見えた雨子様なのだが、唇の隅では微かに笑みを浮かべている。内心は色々思うところが有るらしい。
「後な、双方に余り負荷を掛けるのもあかん思うて、この子らに君らの振りして貰うんは学校に行っている間だけや」
「成る程、それでは家ではどうなるのじゃ?」
雨子様の問いに、少し自慢げな表情の和香様は言う。
「祐二君とこでは、変身解いて普段の人型そのままで暮らして貰う。因みにもう節子さんには了解もろうてるで?」
和香様のこの言葉に、雨子様は今日一番驚くのだった。
「はぁっ…?」
そう言うとぽかんと口を開け、大きく息を吸うと言うのだった。
「と言うことは、お母さんは既にこの企みを、事前に知って居ったと言うことなのじゃな?」
「そうやでぇ~」
「やられた、まさかお母さんが…」
そう言うと大きく打ち拉がれる雨子様。そんな雨子様の肩を優しくぽんぽんと叩き、慰めながら祐二が言う。
「何せあの母さんだからねぇ」
と、祐二が言うのにも訳がある。
先達てのこと、節子が彼に「このガム美味しかったわよ」とガムの包みを渡して寄越したのだった。
包装は開かれて居らず、新品を渡してくれたのかと思い、美味しいのならばと早速包みを開けてみた。しかし包装の中の包みには肝心のガムが入っていない。
そんな馬鹿なとは思いつつも、もしかすると機械のイレギュラ?等と思いつつ、次も開くが次も空。慌てて全て包みを開けたのだが全て空…。
「母さんこのガムおかしい…」
と言いかけたところで気が付いた。節子が声を殺しながら大笑いしているのだった。
そして苦しい息の下から言うので有る。
「ごめんね祐ちゃん、中味皆食べちゃった…」
あろうことか節子は、ガムの包装を破らずに丁寧に開き、中味のガムを全て食べた後、ばれないようにそっと元の形に戻していたのだった。
これが高校生の息子を持つ母親なのか?と大いに呆れた祐二だったのだが、まさしく一事が万事、普段から何事にも茶目っ気一杯な節子なのだった。
だから…、此度のことを聞いても、ああなるほどとしか思わないのだった。
祐二に優しく慰められていた雨子様も、祐二のその言葉にはっと思い起こすことが幾つもある。
彼女は大きな溜息をふぅっとつくと言うのだった。
「確かにお母さんじゃものなあ…」
相も変わらず賑やかな面々です
こんな連中が側にいたら、本当に楽しいだろうなあ
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