「予期せぬもの」
お待たせしました。
学校の始業式を早くも三日後に控えた雨子様と祐二、当面は特に何の予定も無かったので問題無く宇気田神社へ訪れることが出来た。
やはり神域だけあって、雨子様が鳥居を潜るとそのことが知れるのだろう。
人混みの中を縫うようにしながら、直ぐにもこの社に勤める職員がやって来る。
先に無尽で訪れた時のこと、神域の境を通過する際に僅かな衝撃を感じたのだが、そのことから分かるように、和香様達には恐らく何らかの形で、訪社の通知が届くようになっているのだろう。
さてその職員、年若い女性なのだが、時折バイトとして募集されるような者とは少し異なり、この神社に普段から勤める専属の巫女なのだった。
その彼女、以前開かれた慰労会での歌披露に参じた経験があり、雨子様達神様方の歌を聞く機会を得ていた。お陰でしっかりと雨子様のことは覚えていて、にこりと笑みを浮かべると言うのだった。
「お久しぶりで御座います雨子様」
尤もこの様付け、上役達がそう呼ぶに習って付けているだけで、実際雨子様が他社の神様で在ることなどは全く知らないのだった。
ただ和香様が御祭神と言うか、当社における最も偉い方という認識はあるので、その知り合いで有ると言う雨子様のこともそれなりに上に見ている。
だがそうは言いつつも雨子様の見掛けは、確かにどきりとするくらいに綺麗では有るものの、着ている物はごく普通の女子高生よろしくで有るし、気さくな笑みは近寄りがたさを全く感じさせない。
加えて一緒に居る祐二と来たら、本当にどこにでも居そうな男子学生。言葉に注意を払いながらも自然に話しかけてしまう様な、そんな親しみを感じているのだった。
「あ、あの…、以前拝聴した雨子様の歌唱、本当に素晴らしかったです…」
その言葉を聞いた雨子様は、嘗て和香様達と夏越の大祓の慰労会にて、歌が人の精にどのような影響を与えるのか調べたのだが、彼女がその時の参加者だと分かったのだった。
雨子様としてはすっかり過去のものと成っていた件で、この様に褒められたのが何とも嬉しいやら恥ずかしいやらで、頬を染めながら礼を言うのだった。
「そのような形で褒められるとは思うておらなんだ。感謝じゃ」
するとその年若い巫女職員、雨子様以上に顔を赤くしながら嬉しそうに頬を緩めるのだった。
さてそうやって案内を受けた雨子様と祐二、本殿の裏側までやって来ると、そこから先はお二人で行ってくれと言われる。
何でも此処までは一般職員でも案内出来るのだが、この先奥の院となると進めるのは、一部上位の者か特別に許可された者だけとのことで、残念ながら彼女にはこれより先に進む権限が無いと言うのだった。
申し訳なさそうにその旨を説明し、ぺこりと頭を下げる巫女。
思わず雨子様と祐二は顔を見合わせるが、致し方の無いことなのだった。
寂しそうに小さく手を振り見送る巫女と別れた二人は、防犯には一切寄与することのなさそうな、申し訳程度の華奢な潜り戸を抜け、深い緑に覆われた小道をゆっくりと歩いて行く。
二人とも幾度かこの道は歩いたことがあるのだが、信じられないほどの静寂さに、未だに此処が街中に在るとは思えないのだった。
そうこうする内に奥の院に辿り着く。するとそこでは小和香様が入り口の前に立ち、二人のことを出迎えていた。
「いらっしゃいませ雨子様、祐二さん」
「こんにちは小和香さん、お出迎え申し訳ありません」
祐二がそう挨拶をすると、逆に申し訳無さそうに頭を下げる小和香様。
「いえいえ、それはこちらのことでございます。本日お二人がいらっしゃるというのに、色々と準備が遅れてしまいまして、全て整ったのがつい先程のことなので御座います」
小和香様のその言葉を聞いて雨子様が、つと首を傾げる。
「確かに正月の忙しさはあったかも知れんが、その後其方ら二人が掛かってそれほど手間取る準備とは一体何なのじゃ?」
するとその言葉を聞いた小和香様は、会心の笑みを浮かべながら言うのだった。
「それはもう大変で御座いました。でもその成果はご覧になって頂ければ直ぐにでも分かるかと思います」
「ほう…」
そう答える雨子様は興味津々と言った顔つきになる。
このあたりはやはり元は智の神というところなのだろうか?その余りにわくわくとした顔を見ながら、祐二は何とも苦笑を禁じ得ないのだった。
「こちらでございます」
小和香様の案内の元、奥の院のとある部屋に連れて行かれた雨子様、扉を開かれるなりその中で見たものに大きく息を飲むのだった。
ちょこっと短いですが、これから先の話の転機となっていきます
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