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「藁しべ長者?」

お待たせしました


こう言う作風ですので、本当にのんびりとしたPVの伸びで御座いましたが、

それでも石の上に間もなく三年、70000PVを無事達成することが出来ました。

ひとえに皆様の応援を頂いたお陰で御座います

これからもたゆまず努力していくつもりですので、どうかのんびり飽きずに

楽しんでやって下さいませ

 行き交う旅客機の速度に勝るとも劣らない無尽、祐二達の住まう街に帰り着いたのは、未だ昼少し前くらいの時間だった。


 本当であればそのまま吉村の家に帰り着きたいところなのであるが、大量の餅の山を目にしてはそうも行かないのだった。


「済まぬが無尽、先に和香の処へ寄っては貰えぬかの?」


 そう言いながら苦笑を禁じ得ない雨子様。しかし周りの者は全員頷いているのだった。

仮に吉村の家に持ち帰ったとして、一体どうやってこれだけの餅を、和香様の下へ運べば良いというのか?その手間を考えれば致し方の無いことなのだった。


 宇気田神社の上空に行き着く前に、予め携帯で和香様に連絡を入れる雨子様。

先に連絡して話を通しておかないと、神域に足を踏み入れることが出来ないのだった。


 通話に出たのは小和香様で、二つ返事で歓迎の意を表してくれる。

そこで雨子様は訪問の意図を伝え、無尽の着地場所をどこにするかと聞くのだが、奥の院脇に在る庭園へと言われるのだった。


 やがて宇気田神社近郊に行き着いた無尽、微かな衝撃を受けながらその上空に達する。


「今なんか、かくんってしたんだけれども、何あれ?」


 その小さな振動に気が付いた七瀬、尋ねるならばと雨子様に聞いてみる。

すると雨子様、あの地へ降りよと無尽に指図しながらその合間に答えてくれる。


「先程のあれは神社の結界を通過した時のものじゃ。ここから先は神域であると教えてくれるようになって居るようじゃな」


 そう言う雨子様の説明を受けながら、宇気田神社を上空から見下ろす祐二達。

政令指定都市であるこの市街地に、普通では有り得ないほど広大な神域を設け、その殆どが鎮守の森となっている。


 そこに道路側から順に拝殿、内殿、本殿の順に建物が並んでいるが、その更に深まったところに在るのが奥の殿なのだった。


 その傍らに小和香様の指定してきた庭園がある。そこを目がけて無尽は雲を巻きながらゆっくりと降りていくのだった。


 下から見上げたそれは、何やら霧のようなものがふわりと降りてくるようにしか見えない。だがその正体は既に知れていた。そしてそれを向かえるべく、にこにこ顔の小和香様が予めその地で控えているのだった。


 庭園という場所が場所なので、無尽は身体を浮かせたまま、頭だけを地に着け固定させる。


「其方器用じゃの…」

 

 雨子様が思わず感心して言葉を漏らすと、無尽の尻尾がくねくねと動く。

そんな雨子様を横目に、ひらりと地上に降り立った祐二は、真っ先に小和香様に挨拶をするのだった。


「お久しぶりです小和香さん、お忙しい時に尋ねてしまってすみません」


 だが小和香様は実に嬉しそうに微笑んだまま挨拶を返すのだった。


「とんでもありません祐二さん、祐二さん達ならいつでも大歓迎ですよ?」


 実のところここ暫く、それはもう忙しい日々が続いているのだが、その中に彼らの訪問はある意味、とても心地よい清涼剤のようなものなのだった。


 さてそんな小和香様の歓迎を受けながら、雨子様、七瀬、令子と順に降ろしていく祐二。

残ったのは沙喜の処と、咲花様の所で頂いてきた諸々の土産の山。


 どうしたものかとその山を見ながら、無尽の上で首を捻っていると、下から雨子様の声がする。


「とりあえず一旦全て降ろすのじゃ」


 しかしいくら祐二でもこれだけの荷物を一人では下ろせない。その手立てを考え、悩み掛けていたら、小和香様の号令の下、幾人かの神社関係者がやって来て手伝いを始めるのだった。


「すいません、よろしくお願い致します」


 そう恐縮しながら言う祐二に、皆笑顔で応えてくれる。

もっとも、小和香様と互いにさんづけて呼び合うような仲で有ることを考えると、彼らの動きもなんとなくでは有るが頷ける気がするのだった。


 複数人の手助けがあればさすがに仕事も早い。あっと言う間に無尽の頭上から全ての荷物が下に降ろされるのだった。


 その余りの量に目をまん丸にして驚く小和香様。


「一体何なのですこの量は?」


 そんな小和香様ににやにや笑いながら七瀬が言う。


「ね?そう思うでしょう?これが皆頂いたお土産なのよ。特にこのお餅の量、凄いと思わない?」


 そう言いながら風呂敷の端をめくり、木箱の蓋を上げてみせる七瀬なのだった。


「これ全部お餅なのですか?いくら何でもこれは確かに、個人宅での消費は無理でしょうね?」


 そう言う小和香様に苦笑しながら雨子様が言うのだった。


「確かに沙喜の処から貰うて来た餅は個人向けかもしれんが、咲花の処からのは間違いなく和香の処へとの配慮が入っておろう」


 それを聞いた祐二は頭を掻き掻き言う。


「なんだ雨子さん、それもしかして先に分かっていたことなの?」


 その言葉を聞いた雨子様、何を今更というような表情をしながら言うのだった。


「でなければ、あれほどの量の餅を受け取るわけが無かろう?」


「それならそうで言ってくれたら良いのに…」


 と口を尖らせるのは七瀬、いや全くその通りと頷く令子。


「とにかく大量の餅の行き先が決まったのは良いことだよ。こんなに美味しそうなお餅、無駄になんかしたらもったいないからね」


 とは祐二。目の中にほっとした様子が浮かんでいるところを見ると、彼もまた色々と案じていたらしい。


 そこへ賑やかな声が聞こえてくるのだった。


「すまんすまん、遅なってしもうてごめんしてや」


 誰在ろう当神社の御祭神である和香様その人…ならぬその神様だった。


「さすがに今年も後三日もあらへんやん?新年のこともそうなんやけど、今年の仕舞いのことも、あれやこれや色々有って大忙しやねん」


 そう言いながらその辺に居る女子大学生のような成りで、すたすたとやってきた和香様は、雨子様に向かうと目を細めて言うのだった。


「お帰り雨子ちゃん、お疲れさんやったね?」


「うむ、ただいまなのじゃ和香」


「色々有ったみたいやけど、何とか無事終わらせることが出来たみたいで良かったな。しかし…」


 そう言うと和香様、さすがに餅の山に目が行ったのだろう、笑いながら言うのだった。


「これはまたえらい量の餅やなあ?」


「一部は我らが行った先からのお土産で、残りは咲花の処からじゃ。吉村とあゆみの処の分だけ取り分け、残りは其方の処においていくが故、皆で食べてくれるかの?」


 それを聞いた和香様の顔が綻ぶ。


「それはまた、えらいありがたいことやな。社の人らに年迎えの供物として下げ渡すのに丁度良さそうや」


「うむ、まさしくの」


 雨子様もにこにこしながらその意見に賛成するのだった。


「気の利いとることに、この丸餅、咲花ちゃんのやんわりとした加護が掛かっとるさかいに、食べたもん皆福が訪れるで」


「え?そうなの?」とは七瀬。


「なんや雨子ちゃん、説明して上げてへんかったん?」


 そう言う和香様に、雨子様は頭を掻き掻き言うのだった。


「うっかり失念しておった。余りにも当たり前のこと過ぎた故に言い漏れておった」


 そう言うと雨子様は祐二達のことをじんわりと上から下まで眺める。


「しかし其方らは咲花から十分なくらいに加護を貰っておる故、もうそれ以上の加護は無用では無いのかや?」


 だがその言葉に令子が反論するのだった。


「それは確かに私達はそうだけれども、お父さんやお母さん、それに葉子お姉さん達のことはどうなのよ?それにあゆみさんのお母さんもよ?」


「む、それは確かにそうじゃな…。では和香、木箱の餅を二箱と風呂敷の餅を二包み、それに漬物の樽を一つ持ち帰ることにする…、そうそう忘れて居った米じゃ米。これも一つを除いて後は置いていくが故、笑納して貰えるかの?」


 その言葉にうんうんと頷く和香様。


「有り難く頂いとくは。そやけどちょっとだけごめんな?」


「…?」


 一体何事と目顔で問う雨子様。すると和香様の合図と共に、榊さんが三方を掲げて持ってくるのだった。


 目顔で静かに雨子様に挨拶を送る榊さん。皆の目は自然と三方の上に在るものに移るのだが、それが何かと理解した途端に皆の目が丸くなる。


「また餅かや?」


 そう言うと目をぐるぐると回してみせる雨子様。それを見た七瀬と令子が吹き出しながら口を押さえるのだった。


「そんなんゆうけどうちのとこかて、正月仕度くらいするやんか。餅にはうちと小和香の二柱で心を込めてあんじょう加護詰めとるさかい、遠慮せんと貰っといてんか?」


 ことここに至って祐二は、次から次へと餅を餅に替えていく、藁しべ長者のような雨子様の姿が脳裏に浮かび、腹を抱えて笑い始めるのだった。





もうお正月は時の彼方へと行ってしまいましたが、時々無性に美味しいお餅を食べたくなる

何なんだろうね?これは?

皆さんはどんな食べ方がお好きなのでしょうねえ?







いいね大歓迎!


この下にある☆による評価も一杯下さいませ

ブックマークもどうかよろしくお願いします

そしてそれらをきっかけに少しでも多くの方に物語りの存在を知って頂き

楽しんでもらえたらなと思っております


そう願っています^^

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