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天露の神  作者: ライトさん
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「姉妹」


 一方、そんなリビングの騒ぎとは別に、静かな親交を始めている者達が居た。

そのうちの一組が葉子と令子の組。


 彼女たちは、別に裸の付き合いが最上などと考えた訳では無いのだが、何となく話しの流れで共に風呂場に向かっていた。


「まず何より令子さんにはお礼を言っておかなくっちゃね?本当にありがとう!」


 脱衣所に入るなり、そう言ってぺこりと頭を下げる葉子。

だが令子としては、ここに来てからは助けられてばかり居るので、自分が何でお礼を言われるのか、とんと理解出来ないで居た。


 此処はいっそ聞いた方が早いと思い苦笑しながら言う。


「えっと、私の方が皆さんに助けられてばかり居るかと思うのですけど?」


 そう言われた葉子は、成る程と納得しながら笑みを浮かべて言う。


「確かに令子さんからしてみたら、そう感じることが多いのかも知れないわね?でもね、母さんが交通事故に遭いそうになった時に助けて貰った、そのことは私達にとって何よりも大きいと思うの」


「でもあれは偶々(たまたま)で…」


 そう言う令子に葉子は、素早く衣類を脱ぎながら頭を横に振る。


「偶々であったにしても、とっさに誰かを救えるかというと、そんなこと無いわ。でも令子さんは救ってくれた。これはもう何物にも代え難いことなのよ」


 葉子のその言葉に自分も服を脱ぎながら、少し困ったような表情をする令子。

そんな令子のことを見つめながら葉子は言う。


「だからぶっちゃけて言うと、そのことだけでも令子さん、あなたを我が家に受け入れる理由に十分なると思うの。でもそれとは別に、私ね、子供の頃からずっと妹が欲しかったのよ」


 それだけ言い切るとさっさと風呂場に入っていく葉子。

慌てて自分も素裸になるとその後を追うのだが、そこから先は残念ながら?描写は避けることになる。


 ただ風呂場から出てきた時の令子は、つるぺかほっこり真っ赤になってただ一言。


「あ、洗われたぁ」


 次に出てきたのは葉子、なんだか凄く満足そうにしている。


「洗った、洗ったぁ~」


 葉子としては、妹と一緒にお風呂に入って、つるぺかに洗い上げるのが夢だっただけに、その夢が果たされて本当に満足そう。


 そんな葉子に身体を拭きながら令子が少し口を尖らせつつ言う。


「でも葉子さん、私なんか洗わなくっても、毎日美代ちゃんをお風呂に入れているのでしょう?」


 葉子もまた身体を拭きながら、令子のその問いに答える。


「ん~~~、でもやっぱり違うのよね、自分の子供と妹って。何でなのかしら?」


 そんなことを言いながらパジャマを着、首を傾げている。


「私に聞いても知りませんよ?」


「そりゃそうだ、こっち座って令子ちゃん」


 そう言うと葉子は、パジャマに着替え終わった令子を椅子に座らせ、ドライヤーをかけ始める。


「ところで葉子さん、いつの間にか呼び、ちゃん付けに変わっていません?」


 髪が割と長めな令子は、誰かに乾かして貰うというありがたみを心底堪能しつつ言う。


「え?ばれた?でもさ、うちの子になって貰う言ってことは、結局私の妹になる訳でしょう?ならいくら何でもさん付けは可笑しいじゃ無い?」


「あ~~、確かに、でも葉子さん、ほんとにほんとに良いのですか?」


「ほんとにほんとにって?」


「私なんかがこの家の者になるってことなんですが…」


「そう言う、なんかって言う言い方好きじゃ無いのだけれども」


「ごめんなさい…」


「あ、責めるつもりで言ったのじゃ無いのよ?私としての一般論?確かに最初の内は、一体どんな女の人が家にって、思わないでも無かったのよ?でもさ、母さんのこと助けてくれた上に、こんないい人なんだもの。逆に私の方からお願いしたいくらい」


 葉子の台詞にまた胸にじんと来てしまう令子。


「葉子さん…」


「妹よ、さあ姉の胸に!」


 ふざけて葉子がそんなことを言って手を大きく広げる。


 そんな乗りの良い葉子に令子がわざと厭そうに顔を顰めて言う。


「え~~?飛び込まないと駄目なんですかぁ?」


「それは当然よ、ある意味通過儀礼…そう、通過儀礼なのよ!」


 そんなむちゃくちゃを言う葉子に令子は吹き出しながら言う。


「通過儀礼ですか?なら仕方無いですね…」


 わざと、本当に嫌々に見せかけながらそう言う令子に、今一度葉子は芝居が掛かって言う。


「妹よ!」


「お姉様ぁ!」


 そんなことを言いながら葉子の腕の中に飛び込み、きゃあきゃあと笑う令子、そして同じように笑う葉子。


「あんもう、中身はそんなに歳の差無いのに、何でこんなに楽しいのかしら?」


 そう言う令子に葉子が言う。


「でしょでしょ?仲の良い姉妹って、こんな感じなのよ。私の友達のとこがそうで物凄く羨ましかったのよね」


「そうだったんだ。でも私ってこんなに甘えん坊だったのかしら?」


 ふと考え込む令子。


「私は、多分母さん似なんだと思うけれども、庇護欲満開なんだと思う」


 そんな風に言いながらにこにこしている葉子に、令子は居住まいを正してまじめな顔で言う。


「葉子お姉さん、これからも色々あるかも知れませんが、しっかり妹として勤めますので宜しくお願い致します」


「分かったわ。でもそんな風に他人行儀なのはもうお仕舞いよ?こちらこそよろしくね?令子ちゃん」


 そうやって互いに打ち解け合って、和気藹々に成りながらリビングに戻ってきた二人。

そんな彼女らを見た母節子は嬉しそうに言う。


「良かったわね、あなた達、すっかりと仲良くなったみたいで?」


 そんな風に言われたこと自体が嬉しくって、令子は葉子のことを見、葉子もまた令子のことを見た。


 自然に二人共が笑みを零してしまう。


 そこへ節子が言う。


「でもあなた達、いくら仲良くなったからと言って、二人揃ってパジャマのボタンを掛け違えなくて良いのよ?」


 はっとなって互いにパジャマの前を見ると、あろう事か同じところで掛け違えている。


 それを見た二人はなんだか無性に可笑しくって、二人一緒に楽しそうに笑い始めるのだった。




 遅くなりました。


考えてみたら雨子様だって、葉子にとっては妹分には違いないのですが、

でもあんなに偉そうな妹分て嫌ですよねえ?w



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