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天露の神  作者: ライトさん
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付喪神の出現


「ちょっと待って下さい爺様、今の話を聞いていると、大本になった武術というのは人間が発端になったように聞こえるのですが?」


 僕がそう聞くと爺様は僕のことを手招きした。そして手を出させるとその掌の上に飴を一粒載せる。はて?ご褒美でもくれたつもりなのだろうか?


 かつての爺様に比べて、ここに来て急激に人間臭くなりつつある爺様なのだが、もしかしてアーマニやティーマニを使って、かなり詳細に人間文化のことを調べ始めたことも関係しているのではないだろうか?そんなことを僕は考えていた。


 そんな爺様から答えとなる言葉が戻ってくる。


「うむ、ある意味祐二の言うことは正しくも有り、またそうで無いとも言える」


「なんだか余計に訳が分からなくなるわね」とは令子さん。


 そんな令子さんの言葉に苦笑しながら爺様が続ける。


「まあ令子がそう言うのも無理ないことじゃの。実際、儂自身も上手く区別出来て居る訳ではないのじゃから。要はその武そのものの定義がはっきりしないからこそなのであるがな。大体、骨や棒っ切れを振り回していた連中が、どこまでその技を進化させたら武と呼ぶのかの?」


 何となくではあるが、僕には爺様の言わんとしていることが分かるような気がした。


「だが一体何をもって武と呼ぶのか?と言う話を別とすると、そう言った得物を使って相手を攻撃すると言うことは人の間から起こった。勿論我ら神々も、遠い昔、未だ肉の身体を持って居った頃には、ちゃんとした武術のような物を持っていたことだろう。だがそれらは失われて久しい。故に我らは、新たに武をお前達人の祖先から学び直したと言うべきなのじゃろうな」


「成る程、そう言う物の見方でなら、武の発祥が人で有るとも言える訳なんだ」


「うむ、そう言うことじゃな。そして神々による遺伝子干渉の結果、人の精を生産する能力は徐々に高まり、それと共に次第に知性も向上していった。結果我らと人が積極的に交流し始めたのは、約一万五千年ほど前のことになるかの?勿論それより前でも神としてあがめられては居ったが、その関わり合いは遥かに薄いものじゃった」


 そう言う人と神も関わりのような、人類史宜しくの話をし出したところで、令子さんが自分の椅子を持って僕の隣へとやって来た。そして何故だか急にぺたっとひっついてくる。


 それを見た雨子様が束の間片眉を上げるのだが、ふっと小さな溜息を吐くと、自分はその反対側へ椅子を持ってきて、同様にひっつく。何これ?


「そしてこの頃からじゃな、人が得物をもって相手と戦う時に、その技術を色々と意識し始めたのは。それは直ぐに神々の元にも伝わり、当初はおもちゃを扱う如く、好奇心を満たす為に楽しむと言った向きが多かったの」


 まあ神様達からすれば、そんな棒きれを振り回して戦うなんて言うこと、面白そうって言うことぐらいでしか無かったのだろうな。


「だがそんな状況も五千年ほど前に、人たちの間で金属を用いた武器が用いられるようになってから、一気に変化していったのじゃ。そして時同じくして丁度その頃、人の精の生産能力が大幅に向上したのじゃ。すると現れたのじゃ…」


 その言葉に僕と令子さんは思わず顔を見合わせた。一体何が現れたというのだろう?僕達は二人ともその答えを持たないのだった。


「それで一体何が現れたというのでしょうか?」


 僕が二人を代表してそのことを聞いた。

対して爺様が徐に言う。


「その時に現れたのが付喪神なのじゃ」


「でも一体どうしてその時期になってから付喪神は現れたのです?」


「一つには人の生む精の量がある閾値を超えたこと。それから彼らが物に拘ることが増えたということかの?特にそれは、その頃作り始められた青銅器に対して非常に顕著になって居った。当時としてはまだまだ貴重な物で有ったから、それらの物に思い入れを注ぐことは無理からぬことじゃな」


 そこで爺様は大きく溜息をついた。


「中でも語るべきは金属で作られた武器の類い、これらは人の思いを特に多く受け取ることがある為、真っ先に付喪神となっていきおったよ」


「でもそんなのが付喪神と化したら…」


「うむ、祐二の危惧は正しい。武器として思い入れを込められれば込められるほど、その技術を昇華させればさせるほど、付喪神となりやすく、それが悪しきものになった場合、例えようもなく強力じゃった。それはもう人の力ではどうしようも無いくらいにの」


「うわ!武器として最強の物こそ付喪神になりやすいって、最悪だなあ」


「そこでなのじゃ、そう言った奴儕やつばらを討ち果たす為にも、神々は屡々顕現することを行い、神力を帯びた武器を振るうようになっていったのじゃ」


「成る程、そうやって神様方は、当初必要に駆られてその武の力を身につけて行かれたのですねえ」


「うむ、そして一旦それが有用で有ると分かると、様々な検討がなされ、長足の進歩を遂げた。更に神によっては人に武神と崇められるようになって行ったのじゃな」


 黙って話を聞き続けていた雨子様、そこで自身の体験談を以て話しを継いだ。


「だが実際、先の隗との戦いのことを考えると、神々の武が優れて居ると胡座をかいて居る訳にも行かぬことも分かってきた。あれは正直言って冷や汗ものじゃった。爺様に疑似宝珠の扱い方を学ばねば、恐らく負けて居ったと思われる。ある意味ああいった物を祓う為にも祐二、お前の精進が必要となるのじゃ、そして早うに神に成れ!」


 縋るような目をしながらそう言う雨子様に、なんだかとんでもない役を引き受けつつあるのだなと、改めて思ってしまうのだった。


 しかしそれとは別に、本来は雨子様の伴侶となることこそが、第一の目的で有ることは言うまでも無い。


「いずれにしても祐二、修練に心血を注がねばならぬぞ」


 そう言いながら爺様はがはがはと笑う。

一方先程傍らに来た令子さんは、僕のことを見上げながらしみじみ言う。


「祐二君も本当に大変な役回りにいるのねえ…」


 そんな皆のそれぞれの様子を見ながら僕は大きく溜息をつく。


「でもその前に、再来週からテストなんですよねえ…。雨子さん、またよろしくね?」


 多分そう話しかける時に、きっと僕が凄く情けなさそうな顔でもしていたのだろう。

一瞬きょとんとした後、ぷっと吹き出しながら頷いてくれる雨子様なのだった。

 お待たせしました

今日は少し短め・・・

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